江戸肉割烹 さゝや

新富町交差点近くの路地裏に、ひっそりと佇む「江戸肉割烹 さゝや」。大正時代に建てられ、震災も戦災も免れた情緒あふれる木造民家を、雰囲気をそのままにモダンな和割烹に仕立てた“隠れ家”的日本料理店だ。店名のとおり肉料理を主役にしており、会席コースで四季折々の一品料理とともに、ゆったりと楽しむことができる。古さと新しさが絶妙な塩梅でミックスされた空間は、ほどよい“非日常感”があり、近在の人々には記念日のディナーに、ビジネスパーソンには接待の場として、よく利用されているそうだ。

街並みとともに古き良き時代の面影を残す
街並みとともに古き良き時代の面影を残す

地図を頼りに細路地を入っていく。すると突如、レトロな看板と大正浪漫風の引き戸が現れ、驚かされてしまう。この店を初めて訪れるお客さんの大半は、一度ここに来たことがある人に連れられて来るそうだが、「この驚きを今度はほかの誰かに味わってほしい」という連鎖が、「さゝや」を繁盛店たらしめているのだろう。

店に入ると、最初に迎え入れてくれるのは和装の女将。しっとりと濡れた玄関、綺麗に磨かれた床板などもあって、さながら高級料亭の雰囲気だ。店内は靴を脱いで上がるスタイルで、1階は囲炉裏と中庭があるテーブル席、2階は個性豊かな幾つかの個室となっている。席によって見える風景もだいぶ変わり、なんとも趣き深い。時期によっては中庭の上にあるテラス席も利用できるそうだ。

大正レトロな店内
大正レトロな店内

タイムスリップしたかのような感覚を楽しめる
タイムスリップしたかのような感覚を楽しめる

料理は基本的に3つの会席コースからどれかを選ぶ形となる。看板料理となっているのは「焼鉄」と呼んでいる鉄鍋料理で、鶏すきと牛鍋の2種類を提供しているが、特に文明開化の時代に一世を風靡した「牛鍋」の人気が高い。
現代風に言えば「すき焼き」に近いものだが、この店では割下ではなく甘味噌で煮込む。牛肉文化が普及した江戸時代末期には、味噌を使った肉料理が一般的なものであり、牛鍋も味噌仕立てが多かったという。「さゝや」では敢えてこの味噌仕立てだけの提供としているが、そこには、江戸から明治時代初期に流行った味を、当時の趣を感じさせる空間で楽しんでほしい、という思いが込められている。

味の要となる味噌は、江戸時代から幻の味噌と言われていた「江戸甘味噌」を活かし、お店でワインに合うように、ブレンドした物。大量の米麹が醸す甘味、芳醇でマイルドな味わいが楽しめる。これを自家製の割り下に溶き、北海道産の赤身が多い牛肉をからめるようにして食べる。

味噌仕立ての「牛鍋」
味噌仕立ての「牛鍋」

もちろん、メイン料理の前に提供される一品料理も見逃せない。品書きは素材の旬を追うように次々と書き換えらるが、江戸時代から作られている伝統野菜をできるだけ使い、調理はなるべくシンプルに、素材の色かたち、香りを生かした仕立てとしている。魚を一切使わない点も店のこだわりの一つで、造りは会津産の馬肉を使った馬刺しに、寿司は馬肉を使った肉寿司に置き換えて提供してくれる。この個性豊かな馬肉料理も、牛鍋と並ぶ店の看板料理だ。

馬肉料理も名物
馬肉料理も名物

お酒は日本酒、焼酎はもちろん、ワインやビールも種類豊富に揃えている。特に、こういった純和風の雰囲気の中で、本格的な肉料理とワインの組み合わせを楽しめるという点は希少と言える。酒類は比較的手頃な価格帯のものから高価なものまで幅広いラインナップとなっているので、どんなシーンにも合わせやすそうだ。

お酒は日本酒や焼酎をはじめビールやワインまで
お酒は日本酒や焼酎をはじめビールやワインまで

木造の素敵な空間でいただく料理は格別
木造の素敵な空間でいただく料理は格別

お店のスタッフの方々
お店のスタッフの方々

古風な木造建築と和食の組み合わせといえば、何となく店の感じや料理の内容も想像できてしまうものだが、「さゝや」はその想像をいい意味で、見事に裏切ってくれる。建物の外見からは想像しがたい華やかで重厚な店内の雰囲気と、非凡で斬新でエネルギッシュな料理。このギャップに人々は魅了され、何度となく訪れたい衝動に駆られるのだろう。誰かに教えたい、でも、あまり有名にならないでほしい。錯綜する思いに悩みつつも、本当に大切に思う誰かを誘って、再び訪れてみたい。「さゝや」とは、そんな店である。

江戸肉割烹 さゝや
所在地:東京都中央区築地2-2-5 
電話番号:050-2018-7430
営業時間:17:00~24:00(L.O.23:00)
定休日:日曜日、祝日
http://niku-kappo.com/



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