パン工房 キャロット

食べることは生きることと直結しているからか、新規の飲食店というのは何かと気になる存在だ。そこからおいしそうな香りが漂っていたりしたら、まず素通りできない。足を止め、扉の向こう側から店のムードを何とか察知しようと頑張ってみる。そういうとき、見た目にも雰囲気的にも開放的なショップだと、ニューカスタマーになろうか迷っている者にとっては非常に助かる。

青梅街道に平成20年秋にオープンした「パン工房 キャロット」は、この時点で客側に大きな安心感を与えてくれる店だ。道路に面している部分はガラス張りなので、中の様子がよくわかる。白を基調とした外観・内装は、清潔で明るい雰囲気だ。

思い切ってドアを開けると、「いらっしゃいませ!」と、レジにいる、感じのよいスタッフの明るい声が迎えてくれた。

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オープンして3ヵ月あまりだが、キャロットには早くも多くの固定ファンがついている。訪れたのは今回が2度目で、種類がたくさんあるであろう正午を若干過ぎたあたりに尋ねたのだが、すでに売り切れとなったアイテムがいくつも出ていることが伺えた。

この秘密はどのようなところにあるのだろう? 改めて来訪したこの日、店内をグルリと見回してみる。

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まず目につくのは、バラエティーに富んだラインアップ。いかにも“まちのパン屋さん”という出で立ちにビッタリの定番商品も陳列されているが、天然酵母を使ったものや、全粒粉を入れたものなど、通好みのアイテムもきっちり押さえられている。

食パンだけでも何種類あるのだが、パン作りは若きオーナーが一人で行っているとのこと。フランスパンにしても、この小さな店の中でバゲットとバタールとを選べる。客側としては、とても嬉しいことなのだが、きっと毎日が大変なことだろう。

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それに、これまで作っていたアイテムの材料や形を変えて作ってみたりなどの試みも積極的に行っているので、忙しさもひとしおのはずだ。たとえば、「アルプスの少女ハイジ」の話に出てくる白パンを思わせる「ソフトフレンチ」。手書きの紹介文には「ソフトフレンチが天然酵母パンになって帰ってきました!」なる言葉が書かれていた。

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ソフトフレンチはそのまま食べてもよいし、中に好きな具を挟んでもよい。前回訪れたときにこのパンを購入し、中にハンバーグとレタス、チーズを入れて“即席ハンバーガー”にしてみたら、とてもおいしかった。

ちなみに、最も人気があるのは「田舎焼です」とのこと。「田舎焼」は、ライ麦粉の生地の中にクランベリーとカマンベールチーズを入れて焼き上げたもの。知人からもらったのがきっかけなのか、それとも口コミで聞きつけたのか、わざわざ清瀬市からこの田舎焼を目当てにやってくる常連客もいるという。

田舎焼の身上は、クランベリーの酸味とカマンベールチーズのまろやかさのコンビネーションだそうだ。なるほど、軽く焼くとチーズの風味が際立つだろうし、そのままスライスし、カシス香のあるようなフルーティーなワインと合わせても良さそうだ。さっそく購入し、自分なりのおいしい食べ方を探してみることにしよう。

下の写真は、持ち帰られ、期待を込めてスライスされる前の田舎焼。側面だけを見ても、クランベリーがぎっしり詰まっていることがよくわかる。

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“ぎっしり”といえば、田舎焼と同じ暗い人気があるという「クルミレーズン」。ローストされたクルミやレーズンが気前よく使われている。クッキー生地を使ったパンの中には、甘酸っぱいレーズンがいっぱい。あふれんばかりに上に乗っているクルミも迫力がある。

食べてみると、見た目と違わぬボリューム感に大いに満足。甘めのパンも、具も「食べた・食べた!」と実感できる、曲がったところのない、まっとうなパンだ。

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オーナーはパン作りのモットーとして、安心で安全な材料を使うことはもちろんのこと、「自分が食べたいと思ったものしか作りません」と語る。作っているうちにも次々にアイデアが出てくるらしく、かなり変わった、ユニークなパンが棚に点在している。

中でも目を引くのは「ねこパン」。猫の形の生地に目鼻が描かれている。「これなら、ほかの店でも見たことある」という人もいるかもしれない。しかし、キャロットのねこパンがほかと違うところ、それは窶披€鐀

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なんと、猫の口元に「ラング・ド・シャ」が貼り付けられているのだ。

卵白を使った、口溶けの良い薄いクッキー、ラング・ド・シャ。予想外のアイデアに盲点を突かれ、衝撃を受けている横で「単にこのラング・ド・シャを猫の舌に使いたかったから作ったんですよ」と、あっさり笑うオーナー。

ラング・ド・シャの名を聞いたことのない人には、ぜひこの言葉をインターネットの検索エンジンにかけてみてほしい。あまりにもシンプルな“遊び心”に、笑みがこぼれてしまうことだろう。

ねこパンの中にはたっぷりのカスタードクリームが、姉妹品のいぬパンにはチョコレートクリームが入っているが、キャロットではこのほかにもたくさんの菓子パンがある。

中には、沖縄の揚げドーナツ「サーターアンダギー」など、素朴なものもある。沖縄と何か関係があるのかしら、と首をひねっていると「自分がたまに食べたくなるので……。それに、このあたりでは売っていないですからね」とオーナー。あくまでもシンプルな着想は多くの共感者を得ているようで、サーターアンダギーはかなりの人気商品となっている。

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店名の「キャロット」は、子どもでも覚えてもらえるよう、親しみやすさを考えての命名とのこと。オーナーはちびっ子たちに喜んでもらえることを根底に持ち、商品づくりをしているようだ。「小さいときの記憶は長く刻まれているものなので」というオーナーの言葉に、小さいころに食べたチョココルネを思い出し、思わずうなずいてしまった。

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ちなみに先ほどのねこパンは、オーナーの幼少時に出合った親戚の家の猫がモチーフとなっているそうだ。名前を「ネルソン」くんというそうで、キャロットからのお知らせを掲載している黒ボードには、ネルソンくんのイラストがちょこんと添えられている。

このネルソンくんも、きっとキャロットの常連の子どもたちの記憶の中に刻まれていくのだろう。ベーカリーとしてスタートしたばかりのキャロットだが、このネルソンくんをシンボルマークに、きっとこの先も柳沢の地で長く愛されていくに違いない。

メニュー例:
チョココルネ…150円
天然酵母食パン…(6枚切り)320円
バケット…250円
ソフトフレンチ…100円
田舎焼…220円
クルミレーズン…200円
ねこパン…150円
サーターアンダギー…80円

パン工房 キャロット
所在地:東京都西東京市柳沢5-1-18 葵ビル1F 
電話番号:042-463-6521
営業時間:10:00~19:00
定休日:月曜日
http://nishitokyo.shop-info.com/carrot/



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