大通り公園に沿った道沿いにひっそりと佇みながらも、昼時ともなれば連日の行列でひときわ目立つプチ・ビストロがある。その店の名は「ショーラパン」。わずか10席ほどの店内で、シェフの鈴木氏がたった独りでランチのセットメニューも、ディナーのフルコースも手がけ、接客や会計までもこなしているという、完全なワンマンビストロである。
とはいえ、行列の原因は独り営業による手際の悪さではなさそうだ。取材時にも鈴木氏は素早い身のこなしで的確に手順を進め、あっという間に撮影用のランチメニューを提供してくれた。
「ショーラパン」の売りは、この週替わりの、たった1種類だけのランチセットである。メニューが1種類だからこそ、いつどんなお客さんが入っても、ミスなく素早く美味しいメニューを提供することが出来る。無理も無駄も皆無の、完璧なオペレーションシステムだ。ということは、やはり行列の理由は「味」であろう。味が良いからこそ、お客さんは20分でも30分でも、行列を作って待ち続けてくれるのである。
鈴木シェフは、かつて東京・虎ノ門の有名ホテルでシェフを務め、フレンチ一筋で歩み続けてきた職人気質の人。「ありふれた素材に対して精魂込めた仕事を施して、とにかく美味しいものに仕上げる」ことをいつも念頭に、誇りを持って料理に向き合っている。だからこの店にはメニュー表も無ければ、素材に関する薀蓄(うんちく)書きなども一切無い。素材に依存するのではなく、自分の腕を信じる。「味」がすべての答えなのである。
鈴木氏が地元である横浜に「ショーラパン」を開業したのは2005(平成17)年のこと。細々と商売を続けるつもりだったようだが、その「魂の味」が口コミで評判を呼び、早くも行列の店となってしまった、という経緯である。
ビストロのイメージで店内に入ると、そこはカウンターのみのとても狭いスペースで、初めて訪れれば「ここがフレンチ?」と目を疑ってしまうだろう。
店の入口にはウェイティングスペースかと思われる細長いテーブルも置かれていたが、聞けば「ここも客席です」とのこと。よくぞこのスペースでこれだけの席を確保したものだと、思わず感心してしまう。落ち着いてランチを、優雅にディナーコースを、と考える人には不向きかもしれない。しかし、そんなことを気にしない人には、こんな空間がまた味わい深く、よきスパイスとなることだろう。





