鉄砲串「軍鶏」(しゃも)

観光客の多い小町通にあって、地元の客もよく立ち寄るという焼き鳥屋の名店がある。その名も鉄砲串「軍鶏」(しゃも)だ。

目印は、風情あふれる、まるでうす衣のような灯りが美しく透きとおるのれん。ここの二階に鉄砲串「軍鶏」はある。間口の狭い二階へと続く階段を上がると、こぢんまりと、こざっぱりとした店内が目に入ってきた。開店から小一時間たった頃であろうか、すでに香ばしい香りが漂っていてたまらない。カウンターからは白い煙がたちのぼり、その先に若き主人が、笑顔で常連客と思われる客と話しこんでいる。「こんばんは」というこちらの声に、まずは女性スタッフの笑顔と挨拶が、そして主人と威勢のいい焼き方二人が「いらっしゃいませ!」と、はりのある声で出迎えてくれた。

席につき、初めての来店だと告げると主人は「うちは阿武隈の豊かな自然の中で放し飼いにした川俣軍鶏をつかっています」と話してくれた。聞けば川俣軍鶏は、その昔は闘鶏用として珍重されていたが、近年はトリ料理で人気が高い食材だという。自由な環境で育った川俣軍鶏の肉質はよく締まり、ほどよい弾力があり、火を通せばギュと凝縮された旨味が口中にぱーっと広がるのだそう。今日は初めてということで、まずは「五本セットからいかがでしょうか?」と薦められ、お願いした。

ネギマにレバー、ボンボチ、アスパラ巻きとスープ仕立てのさびが運ばれてきた。焼鳥は気持ち小ぶりだ。でも言われた通り、ひと串、ひと串噛み締める程に素材の良さが実感できる。常連客の1人が「レバーはフォワグラをあっさりさせたみたいですよ」と焼き上がりを待っている間に教えてくれたが、なるほど、外はカリッと、中はしっとり。尻身のボンボチはアブラがしっかりのり、串をあげるとアブラがポトリと滴り落ちる程ジューシーだ。ネギマのネギは、旨味でいっぱいになった口の中をさっぱりさせ、アスパラ巻きのアスパラは実に瑞々しい。いずれも絶妙な火加減で焼き上げられ、いぶされた香りと、良質なアブラの旨味と甘みが広がり、上品な味わい。口の中に湯気がたつほどにホクホクとほおばり、美酒を流し込めば、次のひと串へ手を伸ばすという繰り返しだ。

看板で「“魂を揺さぶる”銘酒揃い踏み」と謳っているだけあり、日本酒のラインナップは圧巻だ。焼き鳥と合わせると旨味も倍増する銘酒たちは、八海山、久保田、十四代、越乃寒梅や枯山水、盾の川、天青といった高級有名どころから、身近なものまで多数取り揃えられている。

焼き鳥は軍鶏。酒は銘酒揃い。そこに若い主人の絶妙な火加減と、串さばきが加わったこの店は、いずれ鎌倉の看板となっていくことだろう。階下にある、マスコミでも幾度となく取り上げられている天ぷら屋「天晴」は、ここの主人の親父さんの店だという。ごま油をつかった関東風の天ぷらを目当てに、開店から閉店までお客が絶えることがないそうだ。「舌を喜ばせるワザ」は遺伝なのだろうか。若き主人のコダワリと親父さんの味を食べ比べてみて、その辺りを探ってみたい。

鉄砲串「軍鶏」(しゃも)
所在地:神奈川県鎌倉市小町2-9-3 
電話番号:0467-23-3221



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