保護者・地域・生徒に愛される「夢をはぐくむ学校」

保護者・地域・生徒に愛され、「夢をはぐくむ学校」へ/世田谷区立深沢中学校 池田富太郎校長


世田谷区立深沢中学校
校長 池田富太郎先生

保護者・地域・生徒に愛され、「夢をはぐくむ学校」へ

渋谷や二子玉川にも東急田園都市線1本で行ける桜新町エリアは、暮らしやすさが魅力の人気ベッドタウン。駅前には活気ある商店街が続き、呑川沿いに美しい桜並木が広がっている。そして世田谷区南部の高台、閑静な住宅街の中にあるのが、創立66年の伝統校である「世田谷区立深沢中学校」だ。池田富太郎校長先生に、地域の中で育まれている生徒たちの様子や周辺環境についてお話を伺った。

学校の概要や教育目標についてお聞かせください

池田校長先生
池田校長先生

1948(昭和23)年創立と歴史が長いので、地域に密着し、地域から大切にされている学校だなと感じています。これまで多くの卒業生を排出し、その中には各分野で活躍されている方も大勢いらっしゃいます。また、同窓会の組織がしっかりしていて常に学校を応援してくれますし、町会長の中にも卒業生が多く、親子三代で通われたという方たちもいらっしゃいます。

私は本校が「夢をはぐくむ学校」であってほしいと思っています。子どもたちはよく「〇〇になりたい」といいますが、例えば「サッカー選手になりたい」というなら、「サッカー選手になったら、どうするのか」が本当の夢。いいプレーをして人々に感動を与えたいとか、勇気づけたいとか、先まで考えてもらいたいなということなんです。
本校の教育目標である「意欲を持ち学ぶ生徒・自律心を身につける生徒・すすんで心身を鍛える生徒」というのは、この、夢の先まで考えられるような基礎的な力を身につけるための目標です。「学ぶ」というのは学力だけを上げるのではなく、学び続ける意欲を持つこと。また、自律心を身につければ、夢に向かってどんな時でもがんばれる。そして、人格形成の基礎である心身を鍛えていくということです。

教育において、どんな点に力を入れていらっしゃいますか?

世田谷区立深沢中学校 教室
世田谷区立深沢中学校 教室

いわゆる言語活動である「伝える力」・「聞く力」、つまりコミュニケーション能力を身につけてもらおうと、ペアワークやインタビュー活動、ディベートなどを各教科の授業に取り入れています。
2014(平成26)年度から世田谷区教育委員会より「道徳教育センター校」に指定されたこともあり、特に道徳の時間に力を入れていて、そこでも「自分で考えて物事の価値について伝えていく」ということが身につけられるように取り組んでいます。

世田谷区では2013(平成25)年度から全区立小・中学校で「世田谷9年教育」をスタートしましたが、深沢中ではどのように取り組んでいらっしゃいますか?

世田谷区立深沢中学校
世田谷区立深沢中学校

「世田谷9年教育」は中学校を中心に小・中学校がひとつの「学び舎」として連携していこうという取り組みで、本校は「世田谷区立深沢小学校」と「世田谷区立桜町小学校」の2校と連携しています。毎月実施している「ふれあい挨拶デ―」では本校の生徒が自分の出身小学校に行き、校門の前で児童にあいさつ活動をしています。小学生にとっては中学生があいさつしてくれて嬉しいし、中学生にしてみたら自分たちの成長を恩師に見せることができます。さらに、この活動には両小学校それぞれのPTAや町会が参加してくれて、地域ぐるみの活動になっています。

世田谷区立深沢中学校 展示
世田谷区立深沢中学校 展示

小学校だけではなく、高等学校とも連携しています。本校では「東京都立桜町高校」の先生に来ていただいて中学3年生の子どもたちに物理など、中学にはない教科の授業をしていただいたり高校生活の話をしていただりして、高校受験の前に高校での生活をイメージできる機会を設けています。

体育祭や学芸発表会など学校行事も盛んなようですが、生徒が主体的に取り組めるように工夫していることはありますか?

世田谷区立深沢中学校 校庭
世田谷区立深沢中学校 校庭

本校の行事の特徴は数が多く、しかもその一つひとつが高い質で行われていることです。ただ開催するのではなく、子どもたちが活躍できるように狙いを絞って工夫されています。それには、先生方の指導が行き届いていることと、生徒たちが非常に頑張っていることが大きな要因となっていると思います。
二大行事である6月の体育祭、秋の学芸発表会でいえば、実行委員組織や委員会組織を作って子どもたちが自主的に考えながら運営しています。教師がある程度、生徒を信頼して任せることで、それに応えようと生徒たちが成長していくと、私は思います。

世田谷区立深沢中学校 展示
世田谷区立深沢中学校 展示

2014(平成26)年の体育祭は雨で開催予定日の翌週、さらに翌日に順延したんですが、当日の朝準備のために教員と係の生徒らがグラウンドの整備をしていたら、登校してくる生徒たちが次々に「何かやることはありませんか」「一緒にやっていいですか」と手伝ってくれて、あっという間に開会の準備ができたんです。行事や競技を成功させることも大切ですが、それを通して子どもたちが育っていくことを大事にしたいですね。

部活動も盛んなようですが、特に実績のある部活や指導にあたり工夫していることを教えてください

世田谷区立深沢中学校 トロフィー
世田谷区立深沢中学校 トロフィー

部活動はどこも本当によくやっています。運動部ではソフトテニスが関東大会の常連校で、ペアは全国選抜まで行ったことがありますし、卓球も区大会での優勝経験があります。ただ、私は「部活動は人間教育の場である」と教えています。たとえ勝ったとしても、あいさつをはじめ、礼儀が大事だと。顧問たちにもそういう意識がありますので、朝練や部活の前後、ミーティングなど、きちんと指導してくれていますね。運動部は合同で合宿も行っているので、いろいろな場面で礼儀が身につきます。

文化部では、おそらく他校にはないと思うのが技術部です。ものづくりをしている部活でふだんは自分たちの作りたいものを作っていますが、1年生の教室の戸口にスロープを作って給食のワゴンが出入りしやすいようにしてくれるなど、学校の環境改善にも取り組んでくれています。また、茶道部は茶道の師範からご指導をいただいていまして、「桜新町商店街」の「さくらまつり」でお点前を振る舞ったりしています。

給食についても力を入れていらっしゃいますね

世田谷区立深沢中学校
世田谷区立深沢中学校

食材購入の大半から調理までを学校で行う自校方式なので、地元の「桜新町商店街」などから豆腐や野菜などを購入しています。目の届くところから買っているという安心感がありますし、生徒たちにも好評で毎日楽しみにしていますね。メニューも今の日本人の食生活で消えつつあるような食材をどうやって給食に取り入れるか、工夫しています。

 

例えば、あまり食卓にのぼらなくなった「ちりめんじゃこ」をパンに乗せてみるなど、栄養士さんに考えてもらっていろいろな食べ方にチャレンジしています。行事食では5月のこどもの日には竹の皮にもち米を入れて蒸した本格的なちまきを出してもらうなど、自校方式では自由なメニューを出せるのがいいですね。私は職員や生徒たちのアイデアは基本的に尊重して受け入れていく方針なので、いろいろな提案が出てくるところが面白い学校だなと思っています。

生徒さんが地域活動に参加する機会も多いのですか?

世田谷区立深沢中学校 コート
世田谷区立深沢中学校 コート

こちらから地域に行く機会はたくさん作っていただいていますね。まちづくりセンター、町会、商店と、それぞれの行事に参加したり、ボランティアへ行くことも多いです。「駅前クリーンキャンペーン」や本校を会場にしたリサイクル会では、地域の方と一緒に活動しています。反対に、地域の方々にも学校行事などで頻繁に来校していただいています。秋には掃いた落ち葉を集めて校庭で焼き芋大会を開くのが毎年の恒例なんですが、その時、地域の方に声をかけて一緒にお芋を焼いて食べています。

また、秋になると、プールでニジマスの稚魚を育ててマス釣り大会を開いていますが、近隣の小学生を招待して中学生が教えながら釣る日も設けています。「開かれた」というより、地域ぐるみで一緒になんでもやっていきましょうというスタンスですね。テニスコートを地域のソフトテニスのジュニアの練習に開放しているなど、スポーツを通しても地域とつながりがあります。

最後に、桜新町エリアの魅力についてお聞かせください

世田谷区立深沢中学校 校長先生インタビュー
世田谷区立深沢中学校 校長先生インタビュー

一言でいうと、あたたかい街ですね。「自分たちの街を自分たちで街づくりしよう」という人たちがとても多く、それだけ、自分たちの街を愛しているんだなと強く感じます。昔から住んでいる方だけでなく、新しい住民の方たちもここの環境が好きで越されてきた、地域に誇りを持っている方が多いですね。環境もすばらしく、本校に赴任してきた時、「空が広いな」と感じました。東京の中でも、これだけの環境で子どもたちが教育を受けられる地域はそうはないのではないでしょうか。

住宅街で駅前まで行かないとコンビニもありませんが、そうした環境を変えたら失うものが多いということをわかっている方たちが住んでいらっしゃる。それだけ、子どもと教育に対して理解が高いということなので、学校が苦情を受けることはほとんどありません。みなさんが学校をあたたかく見守ってくださることが、子育てのしやすさにもつながってくると思います。

池田校長先生
池田校長先生

今回、話を聞いた人

世田谷区立深沢中学校
校長 池田富太郎先生

世田谷区立深沢中学校
所在地:東京都世田谷区新町1-26-29
電話番号:03-3703-0158
URL:http://www.setagaya.ed.jp/tfuwa/

※記事内容は2014(平成26)年7月時点の情報です。

保護者・地域・生徒に愛され、「夢をはぐくむ学校」へ/世田谷区立深沢中学校 池田富太郎校長
所在地:東京都世田谷区新町1-26-29 
電話番号:03-3703-0158
http://school.setagaya.ed.jp/tfuwa/