伝統芸能を陰で支える老舗店。「大野屋總本店」/大野屋總本店 7代目当主 福島茂雄さん


大野屋總本店
7代目当主 福島茂雄さん

大野屋總本店 7代目当主 福島茂夫雄さん インタビュー
大野屋總本店 7代目当主 福島茂夫雄さん インタビュー

伝統芸能を陰で支える老舗店。
「大野屋總本店」

徳川10代将軍の時代に創業し、240年余りもの間暖簾を守り続けている「大野屋總本店」は、「足袋と言えば大野屋」と、芝居や伝統芸能の業界で広くその名を知られている存在。伝統芸能を陰で支えている、数ある職人集団のひとつである。

その本店と製造工場をかねているのは、新富橋交差点の角にある、木造の2階建て建築。1階の一部が売り場となっているほかは、ほとんどが足袋を製造するための場所に割かれており、今も日々、昔ながらの手法で足袋が作られている。 今回は大野屋聰本店7代目当主、福島茂雄さんにお話を聞くことができた。

創業は江戸の中期ということですが、どのような経緯で新富町に根付いてきたのでしょうか

大野屋總本店 7代目当主 福島茂夫さん インタビュー
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私どもの店は、創業が1770(明和7)年ごろ、安永年間の時代に創業したと言われておりまして、私は7代目になります。初代の福島美代吉がまず福島県から出てきまして、三田(現在の港区三田)に住み着いて、そこで装束の仕立て屋を始めたのが始まりということを聞いています。

大野屋總本店 7代目当主 福島茂夫さん インタビュー
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今は足袋が中心になっていますが、当時は腹掛けや股引などを中心にした仕立てから始まりまして、三田の頃には、戦争に行く人のために、リヤカーに晒(さらし※帯状で腹に巻いて使用する下着)を乗せて届けに行ったなどと書かれています。その後、新富町に移ってきたのは1849(嘉永2)年のことですね。

大野屋總本店 7代目当主 福島茂夫さん インタビュー
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ここに移った経緯として、ひとつは、当時この辺りに芝居小屋ができ始めたということがあったのだと思います。1660(万治3)年に木挽町にできた森田(守田)座についても、1872(明和5)年に新富町に移転して「新富座」になりましたし、1889(明治22)年には「歌舞伎座」もできました。大正時代には「新橋演舞場」もできまして、この界隈が日本で一番の芝居小屋が集まる地域になっていったんですね。

店の看板商品となっている足袋について、特徴をお聞かせください

大野屋總本店 7代目当主 福島茂夫さん インタビュー
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うちはこういった土地柄ですから、地下足袋ではなくて、お茶席や芸能などで使われるような、お座敷用の足袋を専門に扱っています。キャラコという足袋用の綿生地でできている、上履き用の滑らかな足袋ですね。

大野屋總本店 7代目当主 福島茂夫さん インタビュー
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現在のうちの足袋は、5代目が開発した「新富形」と言われている足袋でして、底を細く、上をふっくらと包み込むようにお作りしていますので、踊りを舞ったときに、足が細くすっきりと見えるんですね。そこが一番の特徴であり、芸能関係で使っていただいている理由かと思いますね。

大野屋總本店 7代目当主 福島茂夫さん インタビュー
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新富形足袋の基本の形としては、「細」「柳」「梅」「牡丹」という4種類がございます。靴で言うところの、EとかEEとかというものですね。幅、足首、指の長さなどを全体的にちょっとずつ変えて、違う形となっていまして、それぞれの形に、5ミリ刻みでサイズが揃っています。店頭に見本足袋がありますので、お履きいただいて、サイズが合えば、それが一番簡単ですね。

大野屋總本店 7代目当主 福島茂夫さん インタビュー
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それでも、どうしてもサイズの合わない方もいらっしゃいますので、そういう方には「お誂え(おあつらえ)」として、オーダーメイドで仕上げています。うちの足袋は裁断から全部、この建物の中で一貫製造していまして、キャラコの生地を裁断して、小鉤(こはぜ)をつけて、端縫い(はぬい)をして、甲前(こうまえ)を縫って、掛け糸を付ける、という形で仕上げていきます。ですから、型はもちろん、細かな部分まで、どんなオーダーにも対応させていただきます。

大野屋總本店 7代目当主 福島茂夫さん インタビュー
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今は歌舞伎についてはパンフレットに名前が載るような方々の足袋は、ほとんどうちでお作りさせていただいております。役者さんそれぞれの足型を取るわけですが、皆さんお忙しい方が多いですから、楽屋や、ご自宅に伺って取っております。

先ほど申し上げたとおり、「歌舞伎座」、「新橋演舞場」で使っていただいているほか、「国立劇場」や「明治座」、都内以外ですと「博多座」、「南座」、「松竹座」など、全国の劇場にお納めさせていただいております。

一般の方ですと、どのような方が利用されているのでしょうか?

大野屋總本店 7代目当主 福島茂夫さん インタビュー
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一般の方ですと、やはり、着物を着てご商売をされている方や、お能や狂言、お茶、お花、茶道、香道、長唄などをやっている方、もちろん、趣味で着物をお召しになる方もいらっしゃいます。結婚式でお召しになる方などもいらっしゃいますね。

足袋以外にはどのような製品を作っているのでしょうか?

大野屋總本店 7代目当主 福島茂夫さん インタビュー
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創業当時から肌着を作ってきましたので、今でも寝間着や肌着、ガーゼ製品などを、うちで企画しまして、提携している工場や職人さんに作ってもらっています。もちろんすべて国内製造でして、職人さんも代々お付き合いのある職人さんばかりです。

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ガーゼの商品は価格も安いですから、ちょっとしたお土産に人気がありますね。柔らかいですから、赤ちゃんやお年寄りにも使いやすいですし、おぼろ(表がタオル、裏がガーゼになっているもの)は肌触りが柔らかくて水の吸い取りがいいですから、タオルの代わりに、気軽に使っていただけると思います。

大野屋總本店 7代目当主 福島茂夫さん インタビュー
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割烹着などもオリジナルのデザインで作っているものでして、割烹着はポリエステルと綿の混紡ですから、洗濯機で洗えてシワになりにくく、普段使いしやすいものになっていると思います。店頭以外でも、ホームページでの通信販売もしておりますから、ぜひご利用ください。

最後に、地元の魅力についてお聞かせください。

大野屋總本店 7代目当主 福島茂夫さん インタビュー
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やはり都心に近い、というよりはここが都心ですから、「どこに行くにも便利」というのがまず一つですね。昭和通りを渡れば、すぐ向こう側が銀座ですから。

それから、最近はファミリーがけっこう増えましたして、それにともなってスーパーやコンビニ、ファミリーレストランなども増えてきました。生活するにも便利な環境になっていると思います。私は生まれてからここに住んでいますけれど、夜は本当に静かなんですよ。

大野屋總本店 7代目当主 福島茂雄さん インタビュー
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今回、話を聞いた人

大野屋總本店(おおのやそうほんてん)
7代目当主 福島茂雄さん

住所:東京都中央区新富2-2-1
電話:03-3551-0896
営業時間:9:00~17:00
定休日:土・日曜、祝日
http://www.oonoyasohonten.jp/

※記事内容は2014(平成26)年5月時点の情報です。

伝統芸能を陰で支える老舗店。「大野屋總本店」/大野屋總本店 7代目当主 福島茂雄さん
所在地:東京都中央区新富2-2-1 
電話番号:03-3551-0896
営業時間:9:00~17:00
定休日:土曜日、日曜・祝日
https://www.oonoyasohonten.jp/