“染色”をテーマにした街の活性化プロジェクト 染の小道 2015年代表 高市洋子さん

「染の小道」が始動したのは2009(平成21)年のことだ。当初は、地元からもあまり注目されなかったそうだが、イベントの回を重ねるごとに認知度を高め、現在は各方面との連携を深めながら活動を充実させている。街の歴史、特色を踏まえたプロジェクトだからこそ、地域社会に浸透しやすかったという一面もあるだろう。今回は、2015(平成27)年度に「染の小道」の代表を務めた高市洋子さんにお話を伺った。

「染の小道」の代表を務めた高市さん

街の歴史を掘り起こしたい

――どのような背景から「染の小道」の活動は始まったのでしょうか。

それを語る前に、この街の歴史から説明させてください。大正から昭和の初期に東京・日本橋から当地に移ってきた染物業、そのため神田川・妙正寺川流域は国内有数の“染色の街”でした。当時は、妙正寺川の流れで反物の糊を落としていましたが、環境への配慮から屋内でその作業をするようになり、人目につかなくなったことで染色の街というイメージが薄れてしまいました。そうした背景から染色工房の「二葉苑」が旗振り役となり、“染色”をキーワードに街の活性化を図ろうとしたのです。それが「染の小道」が動き出したきっかけとなります。

旗振り役となった「二葉苑」

――高市さんが「染の小道」に関わるようになった経緯は?

子育てに専念するため勤めていた会社を退職したのですが、社会とは関わっていたかったのでフリーペーパーを発行することにしました。それに関係した取材で「二葉苑」を訪ねたとき、社長から“プロジェクトを手伝ってくれないか”と言われました。でも私には、その期待に応えられる自信がなかったものですから、お断りすることにしたのです。それを伝えるため再び訪問したとき、店舗の軒先に染色作家が制作した暖簾(のれん)を掲げるという企画を聞かせてもらい、直感的に“きっと面白いことになる”と思い、「染の小道」の活動に携わるようになりました。

街を彩る暖簾

――着物姿でインタビューに応じてくださっていますが、もともと着物は好きだったのですか?

そうですね。母が仕立業に就いていたものですから、私にとって着物は身近でした。ただ、「染の小道」に携わるようになってから、着物を着る頻度は高くなりましたね。気持ちが引き締まるというか、洋装では得られない感覚が気に入っています。布団を干したりするときはさすがに不便を感じますが、この格好で自転車にも乗りますよ(笑)。ハレの日だけでなく、普段着に着物を選ぶ方が増えてくれたらなと思っています。

認知度とともに期待も高まる

――「染の小道」の柱となる活動内容について教えてください。

ひとつは、商店街を暖簾で飾る「道のギャラリー」です。それぞれ異なる作家さんたちの作品が、見慣れた風景を味わい深いものに変えてくれます。また「川のギャラリー」では、美しく染め上げられた反物が川の上方に掲げられます。これは、中井・落合にあった染物の水洗いをモチーフにしたものです。

反物が美しく揺れる「川のギャラリー」

それ以外に各種イベントも行いました。前回の例ですが、街の魅力を訪ね歩くツアーや、誰でも気軽に染物体験ができる「千人染め」なども行いました。

――来場者はどのような方が多いですか?

もともと着物が好きで、その延長で染物にも興味を持っている方。また、作家さん本人だけでなく、ファンの方もいらっしゃいます。人と人とが繋がりながら、それぞれの楽しみ方で「染の小道」を満喫してくださっているように感じます。

間近で職人技を見ることができる

――「染の小道」の運営についても聞かせてください。

作家さん、協力店舗、地域住民の3グループで運営に当たり、代表者の選定については持ち回りとなっています。東日本大震災後に、人と街との繋がりを大切にしようと考える方が多くなり、ボランティアスタッフとしてサポートしてくれる方が増えました。

地域との繋がりを感じられる体験イベント

――これからの展開、また、目指している方向性などあれば伺えますか?

現時点では、「染の小道」は3日間限定のイベントですが、いつ訪ねても“染色の街”を実感できるように定着化・通年化することが目標ですね。染色を専業にするというのは難しいことですが、この街が育んできた文化を活かしながら、染色を産業として確立させたいというのが願いです。

街と深く関わってこその「染の小道」

――他団体との連携・協力についてはいかがでしょうか。

「川のギャラリー」に関しては、河川占用の許可を取らなくてはいけませんでした。「染の小道」にとって行政機関の協賛は、不可欠なものと言えるでしょう。

行政、住民、学生が協力し合い実施されている

また、「目白大学」にも協力していただき、趣旨を理解してくれた先生方が、ボランティアスタッフとして学生さんを派遣してくれました。そのことがきっかけで、「目白大学」内に街づくりサークル「ちえの小道」が誕生するといった動きもあります。

――これまでの活動を通して、街の変化を感じることはありますか?

地域の理解が不可欠だったので、当初は“店先に暖簾を掲げてもらえないか”と一軒ずつ訪ねてまわりました。大きかったのは、マスコミに注目されるようになったことですね。自分たちの街が注目されているということで、「染の小道」に関心を持たれた地元の方も多いと思います。

――“暮らす”をテーマに落合・中井エリアを語っていただけますか?

本当に住みやすい街だと思います。都営大江戸線・西武新宿線「中井」駅、東京メトロ東西線「落合」駅を利用できるので主要駅へのアクセスもいいですし、文人に好まれた環境からも窺えるように凛とした落ち着きがあります。川面を渡ってくる風は瑞々しく、自然も豊かで、小鳥のさえずりで目が覚めるほどです。

魅力的な風土、伝統、そして人

地域コミュニティも充実しているほか、チェーン店だけでなく個人商店が頑張っているのも特徴ですね。子育てという観点からも、“ここで育てたい”と思える街です。

2015(平成27年)年代表 高市洋子さん

染の小道

2015(平成27)年度代表 高市洋子さん
URL:http://www.somenokomichi.com/
※この情報は2016(平成28)年5月時点のものです。

“染色”をテーマにした街の活性化プロジェクト/染の小道 2015年代表 高市洋子さん
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