モンテッソーリ教育を用いた「育ち」を大切にする教育/さくらがおかこども園 田中鉄太朗さん


ウィズチャイルドさくらがおかこども園
株式会社ウィズチャイルド 代表 田中鉄太郎さん

モンテッソーリ教育を用いた「育ち」を大切にする教育

多摩川の堤防近くの開けた土地に、2012(平成24)年、新設の東京都認証保育所として開業した「ウィズチャイルドさくらがおかこども園」。ここは聖蹟桜ヶ丘エリア内にこれまで2園を運営し、「モンテッソーリ教育」を用いた「育ち」を大切にする教育法で、高い評判を得てきた「ウィズチャイルド」グループの3園目の施設である。 今回は創業者の理念を引き継ぎながら、現在も精力的に現場に出て活躍している、2代目代表の田中鉄太郎さんにお話を聞いた。

まず、「さくらがおかこども園」の概要と特徴について教えてください。

東京都多摩市インタビュー 外観
東京都多摩市インタビュー 外観

この園を経営している「ウィズチャイルド」という会社は、私の母である、初代代表が運営を始めたものでして、私が事業を引き継ぐ形となったのは、30年以上の間、保育一本でやってきた母が、聖蹟桜ヶ丘の駅前にできた「モンテッソーリスクール」で働いていたことがきっかけでした。「モンテッソーリスクール」から認証保育所に変わったのは、2001(平成13)年のことですね。

ウィズチャイルドインタビュー
ウィズチャイルドインタビュー

それからは待機児童が増えて、保育園のニーズがどんどん高まってきましたので、多摩市の子育て支援部署の方から、「市の土地を使って保育所を新しくやらないか」ということで声をかけていただき、2005(平成17)年に2園目の「さくらがおかみなみ園」が開園しました。

それでもまだ待機児童は増えましたので、またその声に応じる形で、2012(平成24)年にこの「さくらがおかこども園」を開園しました。この時にも、地域の方から、「この土地を福祉事業に活用したい」というお声をかけていただきまして、本当に周りの人達に支えられて、いまようやく、3つの園ができたという状況ですね。

3つの園では、それぞれの独自の特徴や保育方針があるのでしょうか?

ウィズチャイルドインタビュー
ウィズチャイルドインタビュー

おおむね40名前後が定員でして、家庭的な保育を行なっています。方針はすべて共通していまして、基本的には「モンテッソーリ教育」の教育方針を軸にしています。加えてここ数年は、それぞれの園で積極的に独自性を生み出しています。

ウィズチャイルドインタビュー
ウィズチャイルドインタビュー

「モンテッソーリ教育」というのは、子どもが自分の力で自分を成長させていく事ができるように導いていく教育法です。大人は、その「育ち」の環境を作り、環境と子どもを結び付ける役割を担います。私達ウィズチャイルドの保育士は、子どもの力を信じ、子どもが自分で成長していく過程を辛抱強く待ちます。そしてその気持ちを保護者と共有することで、子どもの「育ち」を共に喜ぶ事がとても大事だと考えています。

対象になる年齢、就労状況などの条件について教えてください。

ウィズチャイルドインタビュー
ウィズチャイルドインタビュー

年齢については、生後2か月の0歳児から、小学校就学前までです。3つの園とも、入園から卒園まで継続してお預かりできる体制をとっています。さくらがおかこども園に関してはまだ3年目の園ですので、年中、年長さんはいません。ここは認証保育所ですので、ご利用いただくご家庭と直接契約をします。就労状況にかかわらず入っていただくことが可能です。ただ現実的には、ほぼ全員の方がフルタイムで共働きのご家庭になっています。

ウィズチャイルドインタビュー
ウィズチャイルドインタビュー

また、認証保育所でありながらも、ウィズチャイルドでは、ほとんどのご家庭が、卒園までそのまま在籍いただいている状況です。お住まいの地域としては、主に多摩市内の方が中心ですけれども、ほかの自治体からの方も3割ぐらい利用されています。

日々の教育内容について、より詳しく、具体的な例を交えて教えてください。

ウィズチャイルドインタビュー
ウィズチャイルドインタビュー

当園はそもそも、環境が「年齢ごとのクラスに分かれていない」という縦割り保育が特徴でして、そういった環境の中で、こども達がこども達同士で刺激を受け合いながら自分達の力で成長する、ということを大事にしています。

園の中は3つのお部屋に分かれていまして、まだ歩行が安定する前の赤ちゃんの部屋、歩行が安定した後の1~2歳児が中心のお部屋、それ以上の幼児さんのお部屋、という具合になっているのですが、それぞれの時期に興味を持ちやすいもの、身体の動きに合うものをそれぞれのお部屋に置いておいて、自分でそれを選んでいく、ということが日々の活動の基本になっています。

ウィズチャイルドインタビュー
ウィズチャイルドインタビュー

お部屋にはしっかりと手首や指先を使って個々に集中できる自己選択活動が用意されていますから、子どもたちはそれらを自ら選んで、自ら取り組んで、自らの力で最後までやりきります。天気が良ければその後、外に出て、大きく身体を動かします。生活の中で「微細運動」と「粗大運動」の両方を満たすことを大事にしています。微細運動の活動は、精神的にすごく集中しますから、これが子どもの情緒の安定にもつながるんですね。情緒を安定させるということは自律の精神を養うことにつながりますのですごく大事だと思うんです。午前中の一番脳が働いている時間を有効に使い、しっかりと集中し、また身体も動かしています。

 

ウィズチャイルドインタビュー
ウィズチャイルドインタビュー

具体的な内容としては、1歳児の段階では穴に物を落としたり、紐を通したりといった活動になります。2歳ぐらいになったら色鉛筆やハサミなどを使い始めたりと、より難しい作業も始めていきます。

だんだん細かい作業ができるようになってきて、指先がきちんと使えるようになると、それは「思うことが思うようにできる」ということですので、最終的には自律、つまり「自分をコントロールする力」につながるんですね。だから自分を好きになるし、自分が満たされる。そしてそれが、自信や他者への愛につながる。それがモンテッソーリ教育の最終的な目標のひとつでもあるのです。

見た目も一軒家風で、あまりほかには見ない園舎かと思いますが、ここにもこだわりがあるのでしょうか?

東京都多摩市インタビュー 階段
東京都多摩市インタビュー 階段

当園では「クラス」という表現をあえて使わず、「ひとつの家の中にいくつかのお部屋がある」という捉え方をしています。ですから、大人も子どもも、「許可がなければほかの部屋に行っちゃいけない」ことはなく、「行きたければ行っていい」という方針にしています。それに、なるべく時間割りを作らないようにしています。子どもの意思を尊重し、流れるような時間を過ごせることを意識しているので、その想いが形として現れた結果がこの建物ですね。

東京都多摩市インタビュー 庭園
東京都多摩市インタビュー 庭園

認証保育所で自前の建物で、庭付きというのは、多分あまりないのではないでしょうか。確かに「園庭が無いと保育ができない」というわけではないですけれど、「園庭があることで、初めてできることがある」ということも、この3つ目の園で初めて園庭を持って、すごく感じています。

年間を通して、どのような行事があるのでしょうか?

ウィズチャイルドインタビュー
ウィズチャイルドインタビュー

実は、ここ数年は行事を減らしていこうという方向で話をしているんですよ。特に、発表会形式のものを取り除いていくということに積極的に臨んでいます。

これは、「日常生活の子どもの育ちを大事にする」という、保育方針を追求する中で、行事が迫ってくると、どうしても大人が忙しくなってくるんですね。勝手に準備が忙しくなってくるし、打ち合わせも多くなってくる。そうすると、子どもの日常生活のサポートがおろそかになっていってしまいます。

ウィズチャイルドインタビュー
ウィズチャイルドインタビュー

子どもたちについても、発表するからには練習をしなければいけませんから、「日常」ではなくて、「練習のための日々」になっていってしまうんです。それに、「練習をさせる」、「練習をさせられる」という関係に、大人と子どもがなってしまう。これもどうしても防ぎたいなと思ったんです。

こういった理由で、「子どもが主体的に楽しく取組む」「保護者も一緒に参加」「日常の延長線上」この3本柱を常に頭に置いて行事づくりをしています。親子が一緒に歌ったり、一緒に身体を動かすということは、喜びも達成感も一緒に味わえるという事、これがものすごく大事です。

東京都多摩市インタビュー クリスマス
東京都多摩市インタビュー クリスマス

そんな少数の行事の中でも、だいたいの時期が決まっているのは、春と秋の親子遠足、クリスマス会といったものです。運動会は運動会とは呼ばずに、秋の遠足に運動を取り入れて、それを運動会と呼んでいるという状態ですね。ほかにも不定期ですが、いも掘り遠足や、とうもろこし収穫、もちつきなどもあります。子どものお誕生日の日には、一人ずつ、お祝いの会もやっています。

予定する行事のほかに、保護者の方が有志で集まったりするということもありまして、園がお休みの日にみんなでガーデニング作業をしたり、クリスマスの飾りを作ったり、BBQを開催したりして、親睦を深めています。

保護者が保育所の日常の様子を見られる機会はあるのでしょうか?

ウィズチャイルドインタビュー
ウィズチャイルドインタビュー

もちろんです。非日常の行事やイベントを多く行うよりは、日常の保育所へ「いつでもどうぞ」という雰囲気づくりを目指しています。その一例が「保育参加」です。その名の通り、一日に1~2名というペースで、平日に保護者がエプロンをつけて保育に参加します。この時には我が子を見るだけでなく、お友達や先生との関わりも、給食やお昼寝の時間も全て体感できますから、とてもよく園内の様子がわかる、と保護者からも喜ばれています。

全保護者の保育参加が終わるまでに2か月ぐらいかかるわけですが、年に2回、つまり4ヶ月の間はこの保育参加を行っていますので、保護者の皆様も保育所の「日常を大事にする」というところに共感していただくようになりますし、なにより保護者と職員の信頼関係も強まります。

ですから、最初は「認可に入れなかったから仕方なく」といった、消極的な理由で入園される方もいるのですが、ウィズチャイルドの保育を知って頂けると「ここにずっといたい」と言ってくださる方も多くいます。そう言っていただけることは、本当にありがたいことですね。

ここを選ばれた方は、どこに一番魅力を感じられているのでしょうか?

東京都多摩市インタビュー 笑顔
東京都多摩市インタビュー 笑顔

保護者の方にアンケートを取った結果から見てみますと、全体の6割から7割ぐらいの方は、「保育環境が良い」ということ第一に魅力に感じていただいているようです。特に個別に手厚く見てくれるという印象が強いようです。少人数であることはもちろん、モンテッソーリ教育方針を取り入れていることも関係していると思います。

ここは認証保育所ですから、保護者自らの意思で入園を決断します。ウィズチャイルドでは、初めて見学に来ていただいた際に、全ての方に1時間くらいかけて園のご案内をしています。そこで気に入っていただける、という方が多いように思いますね。だから全員に園の特徴をしっかりと理解していただいていますし、入園後のクレームもほとんどありません。

入園時期に関しては、1年中受付を行っていますので、いつでもご連絡をいただけたらと思います。

来年度から「コラボリビング」の新事業がスタートするそうですね。これは何でしょうか?

ウィズチャイルドインタビュー
ウィズチャイルドインタビュー

これはもう言葉通り、地域に根付く「リビング」すなわち居間を設けまして、地域のみんなが集い、幸せがたくさん生まれる場所を創ろうというものです。保育所利用者だけではなく、小学生や若者、高齢者など、多様な世代や業種の人達が一緒になって地域を元気づけていくという、そういうコンセプトで考えております。場所はこの保育所の隣。まだ工事は始まっていませんが、これから建物を作って、2015(平成26)年の春からのスタートを予定しています。

午前中人が集いやすくするためにカフェ機能を設けて、そこでいろいろなサークル活動やワークショップをしていただいいたりと、そういうことに開放していきたいですね。

午後は、放課後の小学生が過ごす学童保育が中心になると思います。そこには午後も地域の人に居ていただいてもいいし、そういう方がまた、地域の目になって、面倒を見てくれたり、多種多様な年齢の大人と小学生が関わる場にしたいと思います。そういうことが、(大人と子ども)両方の人たちにとって、とてもいい環境になると思うんです。

ウィズチャイルドインタビュー
ウィズチャイルドインタビュー

いまは保育園にしても学童施設にしても、フェンスで囲ってしまって、セキュリティがあって、キーが無ければ入れない状態ですよね。だから面白くないんです。3年生か4年生くらいになると、子どもたちが「つまらない」と言って、結局自分の家で留守番をするような状態になってしまう。でもそれは良くないと思うんです。

もちろんサポート体制もしっかりする予定です。いつの時間も保育士が常駐するのはもちろんですし、必要に応じて、栄養士や看護師、食育指導士、障害者のペアレントメンターといった、多種多様なスキルを持ったスタッフが関わっていければ良いな、と思っています。そういった人達が、(卒園後の)学童保育にもサポートを継続できたり、また一方では、保育園とは接点の無い、でも子育てで悩んでいる、地域の方々の相談にも乗ったりできますから、そこはとっても良い場所になるんじゃないかな、と思っています。

安心、安全につながる取り組みについて教えてください。

東京都多摩市インタビュー 看板
東京都多摩市インタビュー 看板

認証保育所と言っても、認可保育所と同じ基準にのっとって建物、防犯設備、室内環境といったものを整えていますし、東京都の監査も通していますので、安心して来ていただければと思います。

中でも「防火防災管理者」については、ほかの園ですと最低ひとり置けば良いですし、いても一部職員だけかと思うんですが、うちでは正職員全員が資格を持っています。防災訓練も持ち回りで毎月やっていま。災害は四六時中、いつ起きるかも知れないものですから、いろいろな状況を想定して訓練を行っています。

ウィズチャイルドインタビュー
ウィズチャイルドインタビュー

衛生面では、保健所で定めている次亜塩素酸ナトリウムの使用に加え、さらに安全性の高い、食品添加物にも指定されている衛生除菌水も使用しています。感染症が流行った時などの空間除菌などに大いに役立ちます。

普段使う水についても、元栓浄水で塩素など余分なものをカットした純水を使用していますから、お茶やミルク、離乳食に良い事はもちろん、乾燥肌やアレルギーを持った子にも安心して使っていただけます。

園内には沢山の写真が掲示されていますし、スタッフの方も全員カメラを持ち歩いているんですね。

東京都多摩市インタビュー カメラ
東京都多摩市インタビュー カメラ

これは日常を写真に切り撮って掲示しているもので、特にイベントの写真というわけではありません。ウィズチャイルドでは保育士はいつもカメラを持っていまして、子どもの成長がうかがえる感動の一場面を、写真に収めています。それは保育士の視点であり、「保育」の見える化であり、「保育」を記憶ではなく、目に見える記録として残すことと、そしてそれを周りの保育士や保護者にも見ていただき共有しながら、お互いの理解と信頼につなげていける意味でとても効果のある取り組みです。

東京都多摩市インタビュー 写真
東京都多摩市インタビュー 写真

この写真については、年に数回、データをまとめて親御さんに差し上げていますので、写真の販売といったものは、一切していません。特に保育園にあまり来ないお父さんなんかは、すごく様子がわかると評判がいいです。

子どもの「育ち」というのは、親御さんと保育所が協力して支えていくものですから、「保育所だけが知っている」という状態は、本来あってはいけないと思っています。だから写真も使いながら、園の全部を出すようにしています。

最後に、聖蹟桜ヶ丘エリアの魅力についてお聞かせください。

ウィズチャイルドインタビュー
ウィズチャイルドインタビュー

この辺りはとっても自然多い地域でして、多摩市の中でも特に聖蹟桜ヶ丘については、多摩川にも面していますし、丘もありますし、公園も沢山あって、子育てはとってもしやすい街だと思いますね。

ただ現状としては、まだまだ街と自然を結びつけたり、子育てと自然を結びつけたりという部分は足りないと私は思っていて、でも、これからそれをやっていこうという方々が沢山出てきているという現状ですので、5年後、10年後には、もっともっと暮らしやすい、自然豊かな街になっているだろうと思います。

ウィズチャイルドインタビュー
ウィズチャイルドインタビュー

子育て以外の面では、今は聖蹟桜ヶ丘も急激に高齢化していますから、そういう街づくりも加速してきていますし、民間の力の地域交流の場はあちらこちらで活発になってきているのを感じます。「高齢者と子どもをつなぐ街」が徐々にができ始めていると思います。そして、それは僕達の世代が作っていかないといけないな、とも思っています。

まだまだこれからですね。これから、新しい聖蹟桜ヶ丘、「子育て世代と高齢者世代を結ぶ街」を実現するために、頑張ります。

東京都多摩市インタビュー 田中鉄太郎さん
東京都多摩市インタビュー 田中鉄太郎さん

今回、話を聞いた人

ウィズチャイルドさくらがおかこども園

株式会社ウィズチャイルド 代表 田中鉄太郎さん

ウィズチャイルドさくらがおかこども園
所在地:東京都多摩市一ノ宮2-1-2
電話番号:042-400-7872
URL:http://www.with-jamp.com/

※記事内容は2014(平成26)年12月時点の情報です。

モンテッソーリ教育を用いた「育ち」を大切にする教育/さくらがおかこども園 田中鉄太朗さん
所在地:東京都多摩市一ノ宮2-1-2  
電話番号:042-400-7872
http://www.with-jamp.com/