芸術の街、仙川で豊かな感性を育む 桐朋女子中学校・高等学校 前校長 河原勇人先生、校長 千葉裕子先生、教務 坂田典生先生

「仙川」駅から徒歩5分。創立75周年を迎える桐朋学園は男子部、女子部、音楽部の3部門に分かれ、幼稚園から大学までの総合的な教育を行っている。中でも「桐朋女子中学校・高等学校」では中高の6年間を3つの段階に分けるブロック制の教育を45年にわたり積み重ねている。桐朋教育や地域との関わり、この街の子育て環境の良さなどを、女子部門代表理事で2015(平成27)年度まで校長を務められた河原勇人先生、2016(平成28)年度から新たに校長に就く千葉裕子先生、教務の坂田典生先生に伺いました。

全人的な教育を目指して幼稚園から大学まで展開

「桐朋女子中学校・高等学校」校門

――桐朋学園全体の概要について教えてください。

千葉校長先生:桐朋学園はそもそも陸軍の子女を受け入れる学校「山水高等女学校」という名前で創立され、今年で75周年を迎えます。ご子息は男子校、ご息女は女子高という所から始まりました。男子部に関しては国立にあります。1955(昭和30)年には長く校長を務めた生江義男先生が、全人的な教育を目指し、初等部を設立しました。生江先生は全人教育の中に豊かな感性ということを非常に考えておられたので、同じキャンパスに音楽部門も設立されました。それで今は男子部門、女子部門、音楽部門と3部門で構成されています。

我々の中高は女子部門です。初等部から短大までを女子部門とし、幼稚園と小学校は共学で、中学になると女子は仙川で男子は国立に通うようになります。実は私は初等部の第1回入学式と同じ誕生日で、幼稚園から高校までここに通い、大学は別なのですが、またこちらに戻り、桐朋学園と共に歩んでまいりました。

千葉裕子校長先生

――中高の6年間を3つの段階に分けているそうですね。

千葉校長先生:1970(昭和45)年から6学年の発育、発達段階を意識したブロック制を取り入れて、中1と中2をAブロック、中3と高1をBブロック、高2と高3をCブロックと3つに分けています。

それぞれ狙いがあり、Aブロックは基本的な学校生活に慣れ、学校に行くのが楽しいという習慣づけです。Bブロックでは中学から高校へ自分の意思で進学するところですので、少しずつ自分の将来を見据えていきます。Aブロックでの経験を踏まえながら様々な行事に集団の力を活かして何事にも本気で取り組み、失敗も含めて自主的な心を芽生えさせていきます。Cブロックは社会への出口になります。高1くらいから社会との接点ということで、仕事を持った卒業生の話を聞いたり、在校生と卒業生との懇談会を企画しています。卒業後の進路としては、ほとんどの者が受験を経験しますが、それはあくまでも通過点でしかありません。生徒は、一人ひとりがどう生きていくのかと日頃から言われていますので、進路も生徒の希望を尊重し、非常に多岐にわたる分野に進んでいきます。

芸術の街で進める音楽教育

中庭の様子

――桐朋女子中学・高等学校と、桐朋女子高等学校音楽科について、学内での関わりあいなどはあるのでしょうか。

河原前校長先生:普通科と音楽科の生徒が一緒にオーケストラを聞く機会などがあります。秋に普通科のBブロックの生徒に向けた音楽科のオーケストラの公演があり、それは、音楽科の高校生も一緒に聴きます。この演奏は誰もができる訳ではありません。音楽科の中から選抜された生徒たちが演奏する訳ですから、自分達と一緒に日々学んでいる仲間の演奏を鑑賞する機会は、音楽科の生徒にとっても特別であるようです。

音楽科のオーケストラ公演

――音楽部門では、「子どものための音楽教室」が開講されていますが、こちらについて詳しく教えてください。

河原前校長先生:「子どものための音楽教室」は小さい頃から音楽の英才教育を施すということで、1948(昭和23)年、中学3年までの子ども達を対象に、市ヶ谷に開設されました。第1期生が中学卒業を迎えるにあたり、才能のある子ども達への指導がここでストップしてしまうのは残念、その先を学べる音楽高校を作りたいという話が桐朋女子高等学校に向いてきて、音楽科が誕生したのです。その第1期生が小澤征爾さんですね。

子どものための音楽教室の様子

現在は仙川教室を中心に全国に教室があります。そこに小さな頃から音楽を習いたいという想いを持ったお子さんたちが通い、力をつけてくる。そしてさらに音楽を学びたいというお子さん達が、「桐朋女子高校音楽科」を受験なさって全国から集まってくる、そんな流れになっています。

地域と共に成長する

「調布市 せんがわ劇場」

――学園で行われる、一般の方・地域の方向けのイベントについて教えてください。

河原前校長先生:地域との関わりが一番強いのは短期大学です。桐朋学園芸術短期大学は音楽と演劇の2つの専攻に分かれていますが、「おらほせんがわ夏まつり」や街のイベントに参加するという形で、主に演劇科の学生が活躍しています。

調布市は芸術を支援し、市民の皆様に還元する政策をとられています。「仙川」駅の南側には「調布市 せんがわ劇場」があり、そこで年間に何回も演劇の公演が行われています。短期大学や大学の教授がスタッフとして加わっているので、年間の企画を話し合い、劇場での発表につなげています。短期大学の修了公演なども行われるのですが、その日程の中に必ず調布市民のための公演が無料で組み込まれています。

この街に暮らし、感性を育む

「東京アートミュージアム」

――仙川は、貴校や、「東京アートミュージアム」、「安藤忠雄ストリート」などがあり、芸術に造詣が深い街であると思いますが、そんな街で子育てをすることは、どういったメリットがあると考えられますか。

河原前校長先生:仙川の街は大変環境の良い便利な街になりました。ここ数年ですっかり変わったなと思います。私は仕事で通勤していますが、土日に出勤すると平日とは雰囲気が違うんです。街を歩いている方々がオシャレですよね。オシャレな街に突然迷い込んだような、そんな思いを抱きます。

仙川エリアの様々な施設

商店街の真ん中の通りはハーモニータウンという音楽にちなんだ名前がついています。駅の向こうには「白百合学園」があり、教育環境としては大変落ち着いた、恵まれた環境だと思います。お住まいの皆さんが芸術のつながりをいくらでも持てる、そんな環境なのだろうと思います。それから、商店街がどんどん発展していくように思います。卒業生がよく母校を訪ねてきますが、通学路として使ってきた馴染みの商店街を卒業して改めて訪ねてみると、いろんな店があって本当に面白い、と言う者が多いです。

たくさんの人で賑わう「ハーモニータウンせんがわ」

また、以前、地域の心あたたまるエピソードがありました。「仙川」駅前に古くからの桜の木が何本もあったのですが、数年前に再開発で伐採することを調布市が決めました。当時中学1年生のあるクラスが「桜を切らないで」と市長に手紙を送り、それが朝日新聞に取り上げられて記事になりました。そのことがきっかけかわかりませんが、市民運動が展開されて桜は保存されることになりました。地域住民がひとつになって街づくりに関わった事例ですね。今ではそれを記念して毎年4月1日に「夜桜コンサート」が市民主催で行われるようになり、音楽科も演劇科も関わっています。

都会的な華やかさと自然の潤いを感じる街

――この街の魅力について、教えてください。

千葉校長先生:50年前は駅を降りると麦畑で学校の正門まで見渡せるくらい何もありませんでした。ただ、優しい空気は何も変わらないと思います。若者向けのお店は増えましたけど、私たちが通った頃からのお店も残っています。生徒が使う通りもお店が増えているのですが、駅から学校まで歩いていると、空気が優しいなぁと思うのです。南に行くと「実篤公園」があって、商店街の景色とは違って緑が一気に増えますし、白百合大学のある北側も緑が多くて、子どもにも良い環境ですね。住むのなら仙川がいいなと思います。

「仙川」駅前

河原前校長先生:武者小路実篤氏は晩年すぐそこに住んでおられて、そこが公園になっています。氏は求められるといくらでも色紙に絵と言葉をお描きになった方だそうで、この商店街にもその書が何店も掲げられています。代表的なのが「神代書店」さん、他にも、お茶とのりを扱う「青香園」さんにもいくつかの額が大切にされています。藤屋さんという和菓子屋さんにも飾られていますが、ここの「南瓜最中(かぼちゃもなか)」は有名で、武者小路さんの絵の包みなんです。商店街の方も好きだったし、武者小路さんもなじみだったようですね。

ここは崖線の高い方に位置し、商店街の賑わいも魅力的なエリアです。また、「実篤公園」など、緑豊かなスポットも身近にあり、都会的な雰囲気と自然の豊かさがギュッと詰まっている感じがします。

「実篤公園」

また、地域の方々が一緒になって街を元気にしようとする意識が高いと思います。30年以上の歴史がある「せんがわ21」という雑誌があるのですが、ボランティアを基本に仙川の街の情報を発信しています。企画編集を商店街の有志でやっておられて、その中には本校の教員も一人加わっています。前回の発行の際には桐朋生もアンケートに参加しました。

坂田先生:仙川は明るくてお洒落な街ですよね。呼び込みなんかはないので安心して買い物ができます。「クイーンズ伊勢丹 仙川店」があったり、「ホームズ 仙川店」ができたりとても便利です。区間急行が止まるようになったので、更にアクセスもよくなりました。また、自然が豊かで夏はカブトムシも採れますし、学校周辺でもよくタヌキやハクビシン等の野生動物も見かけます。この間はハクビシンが電線を伝って歩いてましたし、一度学校に入ってきたこともありますね。

――これから仙川エリアに住まわれる方にメッセージをお願い致します。

千葉校長先生 :仙川は複数の学校があるのがいいですね。成長期から大人へ向かう人達が行き交っているというのも街が明るい理由の一つかなと思います。

河原前校長先生 :仙川は食、文化、やさしさを兼ね備えています。地域の人達に支えられて成長していくのが学校です。私たちの学校も、地域の皆さんに支えて頂いていると強く思っています。

桐朋女子中学校・高等学校 インタビュー

桐朋女子中学校・高等学校

前校長 河原勇人先生
校長 千葉裕子先生
教務 坂田典生先生
所在地 :東京都調布市若葉町1-41-1
TEL :03-3300-2111
URL: http://www.toho.ac.jp/chuko/
※この情報は2016(平成28)年3月時点のものです。

芸術の街、仙川で豊かな感性を育む/桐朋女子中学校・高等学校 前校長 河原勇人先生、校長 千葉裕子先生、教務 坂田典生先生
所在地:東京都調布市若葉町1-41-1 
電話番号:03-3307-4101
http://www.tohomusic.ac.jp/