市川市生涯学習センター(メディアパーク市川) インタビュー

誰もが利用しやすい本当の意味で“バリアフリー化”された地域の居場所を目指して/中央図書館 館長 大里宗行さん


葛飾八幡宮境内にあった市立図書館本館の老朽化に伴い、1994(平成6)年11月に移転・新設された「市川市生涯学習センター(メディアパーク市川)」。80万冊の蔵書を扱う「中央図書館」をはじめ、「文学ミュージアム」「教育センター」「中央こども館」が揃う複合施設で、子どもからお年寄りまでみんなが過ごせる地域の居場所として親しまれています。今回は、「中央図書館」館長の大里宗行さんに「市川市生涯学習センター(メディアパーク市川)」の概要と特色、地域の魅力についてもお話を伺いました。

お話を伺った大里宗行館長
お話を伺った大里宗行館長

「中央図書館」「文学ミュージアム」「教育センター」「中央こども館」が揃う複合施設

市川市生涯学習センター外観
市川市生涯学習センター外観

――まず、「市川市生涯学習センター」の施設の概要、特色について教えてください。

大里館長:「市川市生涯学習センター(以下、生涯学習センター)」は、「中央図書館」「文学ミュージアム」「教育センター」「中央こども館」の主に4つの施設からなる複合施設です。なかでもワンフロアで40万冊、書庫に40万冊の計80万冊を取り揃える「中央図書館」は、1994(平成6)年11月に開館した当時、全国的にも大規模かつ先進的な施設として注目を集めました。

80万冊を取り揃える「中央図書館
」
80万冊を取り揃える「中央図書館 」

大規模商業施設の「ニッケルコルトンプラザ」や産業と科学技術に関する展示を行う「千葉県立現代産業科学館」とも隣接し、20数年経った今も全市域から利用者が訪れる市川市を代表する施設のひとつです。「生涯学習センター」の特色としては、その名称からもわかる通り、子どもからお年寄りまでみんなで過ごせる場所としての役割を担っています。

子育てファミリーにも嬉しい無料で利用できる充実した施設

――それぞれの施設の特色について簡単に教えてください。

大里館長:まず、「中央こども館」は18歳未満の児童とその保護者を対象としたいわゆる“児童館”です。1階はからだを動かして遊べる「プレイルーム」と中高生専用のフリースペース「come come coco(カムカムココ)」があり、「プレイルーム」では卓球が盛んに行われているようです。
また2階には「造形スタジオ」があり、粘土遊びや簡単な工作も楽しめます。部屋の中央にはひろびろとした「乳・幼児コーナー」もあり、ブロックや絵本、おままごとセットなども揃っていてすべて無料でご利用いただけます。

広々とした「乳・幼児コーナー」では子どもがのびのびと遊べる 「中央こども館」
広々とした「乳・幼児コーナー」では子どもがのびのびと遊べる 「中央こども館」

「プレイルーム」には卓球台が備え付けられている 「中央こども館」
「プレイルーム」には卓球台が備え付けられている 「中央こども館」

1階から2階へとつながる「アスレチックフォーリー」や2階奥にある「光のトンネル」も人気で、向かいの「ニッケルコルトンプラザ」で買い物した後に立ち寄る子育てファミリーも多くいらっしゃいます。また小さなお子さんのいらっしゃるご家族には「中央図書館」が運営する「こどもとしょかん」も身近な施設で、紙芝居や絵本を含め児童書およそ3万冊を揃えています。「えほんの会」や「おはなし会」などのイベントも定期的に開催しているため、気軽にご参加いただければと思います。

児童書もおよそ3万冊と、豊富に揃う 「こどもとしょかん」
児童書もおよそ3万冊と、豊富に揃う 「こどもとしょかん」

一方、2階にある「文学ミュージアム」は、「文学」「映像」「地域活動」を柱とするあたらしいスタイルの文学館で、2013(平成25)年7月にオープンしました。市川市ゆかりの作家や作品を展示した見学無料の「通常展示フロア」をはじめ、「企画展示室」や「映像メディア編集室」、地下には「音楽スタジオ」も備えています。また最大260名まで収容可能な「グリーンスタジオ」は講演会や音楽会などで多目的に利用されるほか、46名まで利用できる「ベルホール」もあり、年代を問わずさまざまな用途でご利用いただいています。

あらゆる人が利用しやすい、みんなの“居場所”

――3階にある「教育センター」と「少年センター」とはどういった施設ですか?

大里館長:「生涯学習センター」には、「教育センター」と「少年センター」があるのも特色のひとつです。「教育センター」では、市内小・中・義務教育学校、特別支援学校の教職員の研修と、子どもや保護者さんからの教育相談を行っています。教育相談の内容は子育てに関することから不登校など学校生活に関することまで幅広く、教育に関する経験と見識を併せ持つ相談員や臨床心理士が常駐しています。

工作コーナー 「中央こども館」
工作コーナー 「中央こども館」

一般的に教育相談というと人目につかない場所にあって、そこに行く保護者さんも少なからず心理的な負担を感じざるを得ない状況に置かれているといったイメージですが、「中央図書館」や「こども館」のような一般の公共施設と一緒にあることで、気持ちの負担も少なくより気軽に相談に訪れていただける場所になっています。子どもに対しても「教育相談に行こう」と言うよりも、「生涯学習センターに行こう」と言ったほうが、気持ちも楽ですよね。
もう一つの「少年センター」では、市内の少年が非行に走らず明るく正しく育つように、街頭補導や少年相談を行っています。

図書館の床には点字ブロックが整備されている 「中央図書館」
図書館の床には点字ブロックが整備されている 「中央図書館」

また今後は、子どもたちが「中央図書館」に来てみずから勉強をしたり「こども館」でスポーツや活動に参加したり、ひとつの“居場所”として機能することにも期待が集まっています。「中央図書館」も本を貸し出すだけの従来の図書館ではなく、高齢者や障がい者など社会的弱者と呼ばれる人をも含めたあらゆる人が利用しやすい“セーフティーネット”としての役割を担うことが求められています。
それは図書館の“バリアフリー化”とも呼べるもので、段差の解消や点字、音声などによる案内などこれまでのバリアフリーをより広義に捉えたもので、あらゆる人にとって訪れやすい環境づくり、雰囲気づくりに取り組んでいます。

利用者のニーズに応えられる複合施設ならではの充実したサービス

――複合施設としてのメリットは? また今後どのような施設として運営されていくのかお聞かせください。

大里館長:「生涯学習センター」はもともと“よむ” “きく” “まなぶ” “あそぶ”をひとつの施設で可能にしたあたらしいタイプの生涯学習センターとして誕生し、それぞれの施設が独自性を発揮すると同時に、複合施設としてのメリットを最大限生かすところに特色があります。

こどもとしょかん
こどもとしょかん

たとえば、「文学ミュージアム」にある「企画展示室」の内容に応じて、「中央図書館」の特集展示コーナーに関連図書を並べたり、「こどもとしょかん」と関連づけることも可能です。また大型書店で無ければなかなか手に入らない専門的な書籍もあるため、「教育センター」で相談を受けた後にその場で調べることも可能です。
万が一「中央図書館」に蔵書が無い場合でも、5館1室ある市内の他の図書館のほか、県立図書館や国立国会図書館のデータベース検索もできるため、本を取り寄せたり、関連図書の情報を得られたりと利用する方のさまざまなニーズに応えられるのが複合施設ならではの魅力だと思います。

文学ミュージアム
文学ミュージアム

2015(平成27)年度に実施した利用者アンケートでは、図書館を利用しての「総合的な満足度」は96.1%にのぼる高い満足度が示され、今後も利用者の方のニーズに応えられる充実したサービスを提供していきたいと思います。

また今後の取り組みとしては、先ほども触れたあらゆる人が訪れやすい“バリアフリー化”を進めていくことと、中高生をはじめ若い層の人たちも利用しやすいイベントや企画を実施していきます。具体的な取り組みとしては、「中央図書館」の奥に「Young Adult Room」という部屋があり、中学生、高校生専用のスペースを設けています。個人もしくはグループでPOPを作ったり、手づくり絵本を制作したり、写真を撮って掲示したり、さまざまな取り組みを展開しています。

あらゆる人が訪れやすい環境づくりに取り組んでいる 「Young Adult Room」
あらゆる人が訪れやすい環境づくりに取り組んでいる 「Young Adult Room」

「Young Adult Room」の前には、十進分類法による図書分類ではない「Young Adult コーナー」や、別のコーナーには「暮らし」という分類で家庭の医学から手芸、料理など、利用者目線で配架を工夫することにも取り組んでいます。

公共施設と商業施設が一ヵ所に集まる地域ならではの楽しさ

――最後に、本八幡、下総中山エリアの地域の魅力についてお聞かせください。

大里館長:市川市は公立学校の数をはじめ、「千葉商科大学」や「和洋女子大学」、「東京医科歯科大学」など大学も多く、“文教都市”としての特徴を持っています。東京のベッドタウンとして発展した「本八幡」駅、「下総中山」駅周辺も都心部にアクセスの良い落ち着いた住宅地が広がっています。

下総中山駅
下総中山駅

また公共施設が一ヵ所に集まる「生涯学習センター」があるのもこの地域ならではのポイントで、「ニッケルコルトンプラザ」での買い物と合わせて立ち寄れる気軽さが何よりの魅力だと思います。
毎年10月には「生涯学習センター」と「千葉県立現代産業科学館」、「ニッケコルトンプラザ」の“さんしゃ”が力を合わせて開催する「さんしゃ祭」というイベントもあり、からだを動かしたり、見て触れて学べるアトラクションがあったりと、この地域ならではの特色あるイベントも行われます。

ニッケコルトンプラザ
ニッケコルトンプラザ

「中央図書館」では本を貸し出すだけの従来の図書館のあり方ではなく、実用的な本から専門的な本まで利用する方のニーズに応えた図書サービスを展開し、誰もが利用しやすいより開かれた図書館として地域に愛される居場所づくりを進めて参りますので、気軽にお立ち寄りください。

市川市生涯学習センター
市川市生涯学習センター

今回、お話を伺った人

市川市教育委員会 生涯学習部 中央図書館 館長 大里宗行さん
所在地 :千葉県市川市鬼高1−1−4
TEL :047-320-3333(自動応答) 、047-320-3346(直通)
URL:http://www.city.ichikawa.lg.jp/edu13/1111000021.html
※この情報は2016(平成28)年5月時点のものです。

誰もが利用しやすい本当の意味で“バリアフリー化”された地域の居場所を目指して/中央図書館 館長 大里宗行さん
所在地:千葉県市川市鬼高1-1-4 
電話番号:047-320-3333(中央図書館)、047-320-3337(中央こども館)、047-320-3334(文学ミュージアム)、047-320-3336(教育センター)
開館時間:10:00~19:30(土・日曜日、祝日10:00~18:00)
休館日:月曜日(祝日の場合は翌日)、館内整理日(毎月最終平日)、年末年始
※各施設により利用時間、休館日の設定あり
https://www.city.ichikawa.lg.jp/edu13/11..