お金では買えない舞台表現の喜びを子どもたちに 感性豊かなバレリーナを育てる/くわはらバレエアカデミー 桑原智美さん
くわはらバレエアカデミー
桑原智美さん
お金では買えない舞台表現の喜びを子どもたちに
感性豊かなバレリーナを育てる「くわはらバレエアカデミー」
「くわはらバレエアカデミー」は67年の歴史があるバレエ教室。クラシック・バレエの代表作「白鳥の湖」などを生み出した、ロシアバレエの伝統や技術を継承している。今回は、「くわはらバレエアカデミー」が運営している教室の1つ「菊名教室」について、創設者の娘さんであり、ロシアのバレエ団にも所属していたことのある講師・桑原智美さんにお話を伺った。
まず、くわはらバレエアカデミーの歴史について教えてください。
1948(昭和23)年に「石塚洋子バレエ研究所」として始まり、1969(昭和44)年に「石塚千香子バレエ研究所」、1973(昭和48)年に「石塚千香子・桑原君昴バレエ研究所」と発展してゆき、1978(昭和53)年の創立30周年を機に、現在の「くわはらバレエアカデミー」になりました。
私の両親でもある桑原君昴と石塚千香子が教室を始め、ここ6、7年は私が主体となってレッスンを行っています。教室はここ菊名と古淵、東京の駒込の3か所です。
講師は主に、私と母の石塚千香子、教え子である山口亜美の3人です。菊名教室で指導に当たっているのは、私と山口先生の2人です。
幼児から大人までを対象としたクラスがありますが、年齢層や通う目的は、どのような方が多いのでしょうか。
現在、幼稚園の年中さんから小・中・高・大学生、大人は50代の方までと幅広い年代の方が所属されています。それぞれのクラスは、5~10名で構成されています。
子どもは、たとえ将来バレリーナにならなくても、バレエ教室で表現力や感受性、感性を身に付けたいと思い、練習に励んでいます。大人の方は趣味で通われている方が多いですね。
菊名教室に通う子どもたちは、踊ることが好きで、舞台に出ることをとても楽しみにしていますし、学業とバランスをとって取り組もうと努力しています。”やると決めたら目標に対して、きちんとやる。”という志を強く感じますね。通っている生徒については、やはり菊名に住んでいる方が多いですね。妙蓮寺や大倉山、綱島から通われている方もいます。中には溝の口や、鶴見からバスで来ている方もいらっしゃいますね。
最近では、ローザンヌ国際バレエコンクールで日本人男性が優勝したりと、バレエが男女問わず親しまれているように思いますが、菊名教室ではいかがでしょうか。
桑原様のご家族のように、夫婦、親子、兄弟姉妹などで通われる方もいらっしゃいますか?
元々バレエの発祥は、男性であるフランスのルイ14世が幼少の頃からバレエを習い、自ら踊っていたことが始まりだと伝えられています。日本では女性のイメージがまだ強くて入りづらいかもしれませんが、「くわはらバレエアカデミー」は男女関係なく随時生徒を募集しておりますので、もちろん男性の方も通われておりますよ。
生徒の中には、ご家族で通われている方もいらっしゃいます。お母さんが独身時代から教室に通っていて、結婚、出産してからは、赤ちゃんがスタジオをハイハイする横でレッスンをしていました。当時赤ちゃんだった娘さんもバレエを始めて、今も母と娘で通ってきてくださっています。
くわはらバレエアカデミーで習うことができる「ワガノワメソッド・ボリショイスタイル」の特徴を教えていただけますでしょうか。
「メソッド」というのは教授法のことです。フランス系のメソッドや、イギリス系のメソッド、アメリカ系があったりと、さまざまな種類のメソッドがあります。その中の「ワガノワメソッド」というのは、「ボリショイ」という派手な動きで魅せることが特徴的な教授法のことです。同じ国内でもカラーが若干違いますが、まとめてロシアのメソッドと呼んでいます。メソッドが違うとレッスンの内容も違ってきます。
ロシアの振付家が作った作品は、男性が頻繁に跳んで、動いている作品が多いですが、ヨーロッパの振付家が作った作品は、足さばきを魅せることが中心で、足の裏を使う動きが多いです。おそらく、ロシアは大劇場で、大きなスタジオがあるので、動きの大きな作品が作られ、ヨーロッパは小さな劇場で、小さなスタジオのため、動きは小さいけれども細かい足さばきを魅せる作品が増えたのではないかなと思います。
各クラスの具体的なレッスンの内容について、教えてください。
レベルには個人差があるので、生徒に合わせて基礎もやりつつ、テクニックも身につけられるように指導しています。クラスは、小学生までのクラスと、中学生から入ることができる大人のクラスに分けています。小学生までのクラスは、幼稚園児と小学生で分けており、また大人のクラスは中級と趣味のためのクラスで分けているので、全部で4クラスご用意しています。
小学生までのクラスは、フロア(床運動)とバー(棒につかまり行う練習)とセンター(スタジオの真ん中で行う練習)とトゥシューズ。大人のクラスはフロアが無く、バーとセンタートゥシューズを中心に練習しています。
それぞれの課題については、どのように対策されているのでしょうか。
振り付けで特に難しい箇所があるときは、レッスンの中に重点的に練習を取り入れたりしています。ロシアの教本をお手本にしていて、難しい振り付けがあったりすると、できないところを何度も繰り返して、身に着けられるように分解してやったりします。
また、自分自身の課題を発見してもらうためのテストの日を設けています。レッスンを始めた年によっても、レベルに個人差がありますので、テストの内容は各自にあった内容を考えています。
他にも、腹筋、背筋などの筋トレで一番を競います。チョコなどの景品が付いたりすると、みんな必死です(笑)。こんな風に少し工夫した内容もレッスンに取り入れることで、子どもたちも楽しんで取り組んでいます。
プロのバレエダンサーを目指す生徒などもいるのでしょうか。そうした場合、特別なレッスンやバレエ団入団への道などは開かれているのでしょうか。
数年に一度はプロになる生徒がいます。バレエ団に入る子もいますし、ミュージカル劇団に進む子や、ダンサーとして有名なテーマパークで活躍する卒業生もいます。
特に情熱がある生徒は、菊名と古淵両方の教室に行き来して練習しています。他の習い事と被ってしまい、自分のクラスの練習を休むことになっても、別クラスに参加して練習をするなど、両立してやろうとする生徒は伸びますね。
プロになりたいという子どもがいたらサポートしていますし、日本で行われる海外留学のオーディションなども自ら進んで受験するよう進めています。ですが、同時にバレエだけで暮らしていくことは厳しいという現実も伝えなければなりません。親御さんの負担も大きいので、軽い気持ちではいけません。「それでも私は、プロになりたい!」という情熱のある生徒は背中を押しています。
主な公演(発表会)についても教えてください。
発表会は年に一度、川崎にある約1,000人収容できる会場で夏に行っています。
内容はクラスコンサート、幕もの、その時のメンバーでの3部構成にしています。クラスコンサートは各クラスごとに行い、幕ものは、みんなで大きな作品を創り上げます。数年前は「ドンキホーテ」の「夢の場」というシーンをやり、子どもは天使役として舞台に立ちました。
大きな作品では、1人が抜けたら主役も立たないし、小さい役だからといって手抜きはできません。一人でも欠けたら作品にならないというのを理解してもらうために、みんなが参加する作品を必ず入れるようにしています。また、その時のメンバーによって、小さい作品を子どもと大人に分けて構成することもあります。穏やかな曲を踊ったら、次は元気な作品にしたりとバリエーションもつけています。
バレエを教える上で、どのような点を大切にされていますか。
また、バレエを通じて生徒さんたちにどのように変化があると感じますか。
子どもたちは、みんなそれぞれ個性があるので、それぞれの性格に合わせて対応しています。大人はまずは体を温めないと怪我をしてしまうので、体を壊さないように健康に注意しています。
生徒たちの変化としては、やはりレッスンだけではなくて、舞台を踏んだ後が大きいですね。練習して練習して、舞台の上で照明と衣装と装置が入って、お客さんの前でリアルに表現した後は、表現したいとか練習したいという気持ちは強くなります。
今の子どもたちは、自分自身のスタイルを認め、ここは劣っているけれど得意なところを生かしてやろうとか、家で自習しようとか、踊りだけじゃない部分を学んでくれています。そういうカラーの教室を発展させていけたらいいなと思います。
桑原さんにとってバレエの魅力とは何でしょうか。
音楽と舞台装置と踊りと全部が一緒になったとき、劇場全体の空気感が変わるのがいいですね。実力のあるダンサーになると、曲が始まって、まだ舞台に出てこないで袖にいるのに、背中がゾッとする、というのをお客様に感じさせることができるんです。その場でしか味わうことのできない感覚が芸術にはありますよね。今の瞬間は二度と作れない、お金では買えない、舞台の立体的に融合された空気感はいいと思います。
最後に教室のある菊名エリアの魅力についても教えてください。
一言で言うと、“居心地がいい”ところです。横浜市の海にも近いですし、交通アクセスが便利で東京方面、横浜方面共に行きやすく、美味しい外食のお店もあるので、生活環境としてとても魅力的です。
菊名教室の入っている「青木ビル」は、オーナーさんの意向でバレエ教室と音楽教室と学習塾がビルの中に揃っていて、教育の場になっています。特に提携はしていないですが、ピアノとバレエを合わせて習っている方もいますし、そういう教育面でも充実している環境だと思います。
今回、話を聞いた人
くわはらバレエアカデミー
桑原智美さん
くわはらバレエアカデミー
所在地:神奈川県横浜市港北区菊名4-3-21 青木ビル 4F
電話番号:045-401-9671
URL:http://kuwahara-ballet.jimdo.com/
※この情報は2015(平成27)年2月時点のものです。
お金では買えない舞台表現の喜びを子どもたちに 感性豊かなバレリーナを育てる/くわはらバレエアカデミー 桑原智美さん
所在地:神奈川県横浜市港北区菊名4丁目3−21
http://kuwahara-ballet.jimdo.com/