「くにたち郷土文化館」荒井敏行館長 インタビュー

「くにたち郷土文化館」荒井敏行館長 インタビュー/くにたち郷土文化館 荒井敏行館長


JR南武線「矢川」駅から徒歩10分の距離に「くにたち郷土文化館」はある。国立市の歴史や自然、文化を学べる施設で、次代の人々に継承するという役割も担っている。今回、「くにたち郷土文化館」の荒井敏行館長へお話を伺った。

「くにたち郷土文化館」の存在意義

「くにたち郷土文化館」入口
「くにたち郷土文化館」入口

――「くにたち郷土文化館」の沿革・概要について聞かせてください。

荒井館長:当館は、1994(平成6)年に開館しました。施設の8割が地中にあり、その特殊性などから開館当初はたくさんの視察がありました。博物館には「登録博物館」、「博物館相当施設」、「博物館類似施設」の3つがあり、当館は「博物館類似施設」に含まれます。一般的な会話で使われる“博物館”の多くは「登録博物館」ですが、ただ、どちらが優れているかという話ではありません。法的な制約が少ない「博物館類似施設」であることで、当館は自主性を保つことができているのです。

国立市の歴史を学ぶことができる
国立市の歴史を学ぶことができる

当館は、愛好会やサークルに研修室、講堂、陶芸用電気窯などを有料で提供しています。厳密な規定はありませんが、“社会教育”であればその内容は問いませんし、さらに市内在住でなくても利用可能。“市内在住者に限る”という文言を入れなくていいのは、規制の少ない「博物館類似施設」であることと大きく関係しています。

荒井敏行館長
荒井敏行館長

――常設展示に関して、特に矢川・谷保エリアに関係したものを教えてください。

荒井館長:国立市のイメージを問われたら、北部のJR「国立」駅周辺や「一橋大学」を挙げる方は多いと思います。しかし、古くから人々の暮らしがあったのは南部、つまり矢川・谷保を中心とした地域です。国立市には3つの段丘があり、その段差になっている部分はハケと呼ばれ、湧水があったことから縄文時代の遺跡も見つかっています。国立市の歴史を語るときハケに触れないわけにはいきません。常設展示でも古くから人々の暮らしを支えてきたハケをテーマに、貝の化石などの資料とともに分かりやすく展示しています。

東京の名湧水にも選ばれている「ママ下湧水」
東京の名湧水にも選ばれている「ママ下湧水」

それ以外では、“国立市の自然”をテーマにした「自然ゾーン」、旧石器時代から近世・近代までを扱った「歴史ゾーン」、“人と人とのつながり”に主眼を置いた「暮らしゾーン」のほかに、“新しいまちづくり”に関する展示・解説をしている「都市ゾーン」と、「南養寺遺跡」から発掘された縄文時代中期末の住居跡を復元した「屋外展示」があります。

館内の歴史ゾーン
館内の歴史ゾーン

地域を知ることの魅力

――自然・歴史に親しめるイベントなどはありますか?

荒井館長:NPO国立市動物調査会「くにたち自然クラブ」が主体となり、子どもたちに街を知ってもらうための活動をしています。近くの用水路で魚を探したり、クワガタの幼虫を探しに出かけたこともあります。子どもだけでなく親御さんにも好評で、定員を超える応募をいただきました。ほかにも、地域の方々とさまざまなイベントを開催しています。子どもたちが楽しめるイベントも多くありますよ。

くにたちの歴史などが学べる「くにたちカルタ」で遊ぶ子どもたち
くにたちの歴史などが学べる「くにたちカルタ」で遊ぶ子どもたち

また、昭和50年代から地域の古老に話を聞いて、人々の暮らしについて記録してきた「くにたちの暮らしを記録する会」も、これまでの成果として次世代に伝える活動をしています。

「国立市古民家」
「国立市古民家」

――「国立市古民家」についても聞かせていただけますか?

荒井館長:もともと甲州街道沿いにあった農家で、1985(昭和60)年に所有者から国立市に寄贈されました。その6年後となる1991(平成3)年に「城山公園」の南側に移築・復元。ここでは当館の事業として、伝統文化や伝統行事を伝える授業もしています。

光が差しこみ明るい館内
光が差しこみ明るい館内

――これからの矢川・谷保エリアについて、期待していることはありますか?

荒井館長:それぞれ成り立ちが異なるため、JR南武線を堺に南と北とで大きく雰囲気が変わる国立市。そのことが街に奥行きをもたらし、面白さに繋がっているとも言えますが、双方が理解を深めていけば、さらに良い街になるのではないかなと。自分たちの住んでいる街を知り、それによって視野を広げることができれば、物事の見方も変わるだけでなく、住んでいる街への愛着も大きくなるではないかなと思います。

 

荒井敏行館長
荒井敏行館長

くにたち郷土文化館

荒井敏行館長さん
所在地 :東京都国立市谷保6231
TEL:042-576-0211
URL:http://www.kuzaidan.com/province/

※2016(平成28)年6月実施の取材にもとづいた内容です。 記載している情報については、今後変わる場合がございます。

「くにたち郷土文化館」荒井敏行館長 インタビュー/くにたち郷土文化館 荒井敏行館長
所在地:東京都国立市谷保6231 
電話番号:042-576-0211
開館時間:9:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日:第2・第4木曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始(12/29~1/3)、国立市教育委員会が定める日
https://kuzaidan.or.jp/province/