横浜市立戸塚小学校インタビュー

伝統を守りつつ時代に合わせて発展/横浜市立戸塚小学校 校長 伊藤法彦先生


古くは東海道の宿場町として栄え、昨今は駅周辺の大開発で大型商業施設がオープンするなど、新旧で魅力的な顔を持つ戸塚エリア。「戸塚」駅西口から徒歩7分の「横浜市立戸塚小学校」は市街地にありながら、桜並木が美しい柏尾川がすぐそばを流れ、落ち着いた学習環境にも恵まれた1873(明治6)年創立の伝統校だ。生徒数の急増を受け、2015(平成27)年3月には大規模な増築・改修工事が完了し、伝統を守りつつ時代に合わせて発展する同校。今回はそんな「横浜市立戸塚小学校」の36代目校長である伊藤法彦先生に学校の概要や戸塚の街の魅力についてお話を伺った。

「戸塚スタンダード」に沿って生活規範を身につける

校門
校門

――1873(明治6)年創立の伝統校である戸塚小では、どのように子どもたちを指導していらっしゃいますか。

伊藤校長:明治時代創立の本校には明治天皇ゆかりの石碑、当時のお金や地図など貴重な品が数多く残されています。そうした歴史をふまえ、本校ではきちんとした挨拶など、日常生活の決まりごとを示した「戸塚スタンダード」に沿って指導を行い、全児童が生活規範を身につけることができるようにしていきます。本校の学校経営は各学級の担任が学年全体の担任でもあるという学年経営が基本です。

戸塚スタンダード
戸塚スタンダード

――「戸塚スタンダード」について、詳しく教えていただけますか。

伊藤校長:「戸塚スタンダード」というのは、学校生活を送るうえでの「最低限のルール」を文書にして配布しているもので、登校時間や下校時間、服装や持ち物などのルール、掃除や給食、朝読書などの時間ややり方、各学年ごとに使うノートの規格や、筆記用具の種類など、かなり細かい部分まで書かれています。これを「児童用」と「教職員用」の2種類作り、全員で共有しています。

以前からあったものだそうですが、私が着任してから、ここ数年でかなり細かい部分まで書き加えまして、今は児童用がA4用紙2枚、教職員用が3枚になっています。ルールをしっかり決めることで、どの先生も子どもに同じ受け答えができるようになります。それが落ち着いた学校生活にもつながり、学校への信頼にもつながるものだと思っています。

校内
校内

――大規模校ならではの魅力や特色はどんな点でしょうか。今後の児童数の見込みについてもお聞かせだください。

伊藤校長:2016(平成28)年度は普通学級が各学年4~5クラス、個別支援学級が横浜一大きくて5クラスあり、 学級数計32クラスで児童数950人になります。児童数が多いため、学年単位の活動も盛んですし、縦割り活動も活発です。上級生が下級生をリードする兄弟学年が決まっていて、例えば6年生と1年生が一緒に遠足にいったり、集会をしたりしています。少子化で兄弟がいないという子どもたちにとって、縦割りグループで動くことはとても貴重な経験になるのではないでしょうか。

「戸塚」駅周辺は百戸単位のマンションが毎年1、2棟建設されている状況なので、児童数については、ここ10年ぐらいでかなり増え、今後もさらに増加すると見込んでいます。

授業風景
授業風景

――授業ではどんなことを大切にされていらっしゃいますか?

伊藤校長:今はコミュニケーションが大事で、昔のように先生が一方的に話す授業という時代ではありません。例えば、6年生の歴史の授業ではある年にあったことをただ教えるのではなく、冠位十二階の冠を全部作って子どもたちに被らせてみたり、砂場の砂を運んで前方後円墳を作らせてみるなど、実感をとおして子どもたちの学習への関心を引きつけることを大事にしています。

常にこうした授業をするわけではありませんが、子どもたちの状況によっては注意を引きつけるような支援がすごく大事です。教員を育てるにあたっても、こうした授業をするための引き出しをどれだけ身につけてもらうかを大切にしています。

廊下
廊下

――教員の平均年齢が高いのが特色となっているそうですね。これにはどんなメリットがあるのでしょう?

伊藤校長:本校の職員の平均年齢は横浜でも指折りの高さです。35歳から45歳ぐらいの中堅層が多く、この年代の先生方がうちには十何人もいます。これは何が良いかと言えば、たとえば、本校では意図的に1年生の担任を30代後半以上の先生にしているんですが、じつは、お母さん方よりも若い層の先生にすると、不安感や不信感につながりやすい傾向があるんですね。それからやはり、ご相談などされる場合でも、自分よりも年齢が上の先生のほうが、スムーズですよね。私は1年生の最初の時期、特に5月までの期間というのは、非常に大事であると考えていまして、そこでしっかり、学校生活のルールを徹底的に教え込んでいくという方針をとっています。具体的には、その時期だけ、専科の先生方を副担任に充てる対応をしていまして、1クラスを2名の先生で見ています。

また、5年生と6年生の担任には、ベテランの先生方を当てるようにしています。5・6年生になると思春期にも入るので、ある程度の慣れと力量が必要なんですね。そういった先生の割り振りができるのは、教員の年齢層が高い本校ならではかと思います。

児童数増加に対応する新校舎完成

校庭
校庭

――2015(平成27)年4月から、増築された新校舎も使い始めたそうですね。

伊藤校長:新校舎については、今後も想定されている児童数増加に対応するために、教室数を増やすことを主な目的にしています。もともとプールがあった場所ですから、屋上にはプールを同じ規模で作っていまして、以前のものよりもプールサイドが幅広くなった分、広々と使えるようになっています。教室については、普通教室が5教室と、普通教室にも転用できる特別教室用の部屋が4教室ありまして、実質としては9教室増えました。

屋上プール
屋上プール

ほかにはパソコン室が新設されまして、こちらは床も上げてもらって、本格的なOAフロアになっています。あとは、第2音楽室としても使っている「音楽集会室」や、「ランチルーム」も新しく設置されましたし、図書室や保健室も旧校舎から移転して、広くきれいになりました。

新たにエレベーターもついたので、バリアフリー化も進んだと思いますし、給食の運搬時にも活用するなど、安全を確保するという面でも、いろいろなメリットは生まれてきていると思います。

――新校舎ができて、親御さんや子どもたちからの評判はどうでしょうか?

図書室
図書室

伊藤校長:まず、仮校舎として使っていた校庭のプレハブ校舎を解体できたので、校庭が本来の広いものになって、子どもたちは喜んでいますね。もちろん、新校舎についてはきれいで、明るくて、広いということで喜んでもらっていますし、新校舎の工事と一緒に、旧校舎のトイレについてもすべて洋式化をしましたので、「トイレに行きやすくなった」という声も多いですね。

地域で子どもたちを育てる風土が根づいた街

柏尾川プロムナード
柏尾川プロムナード

――周辺環境を活かした、あるいは地域と連携して行っている活動はありますか。

伊藤校長:学校の近くを流れる柏尾川の桜並木を手入れする桜セーバーという市民ボランティア団体がございまして、本校の敷地内に用具をしまう倉庫があり、活動の拠点になっています。3年生の地域学習の時にも、桜セーバーの方に来ていただいています。このほかにも、植木の剪定、PTAのガーデニングボランティア、竹や、わらを使って工作する「竹わら細工クラブ」など、いろいろな形で地域の方が学校に関わってくださっています。また、正門前の道路の歩道に花を植えた樽が並んでいますが、これは本校の3年生が必修授業の中で季節の花々を植え替えて水やりをして育てている「花の小道」の活動によるものです。

戸塚は歴史ある地域なので、多くの町内会が学校と関わってくださっていて、夏祭りの灯篭流しや町内運動会などでは本校が会場となります。また、戸塚区の賀詞交歓会は昔から本校の体育館で行うことが決まっています。体育館が賀詞交歓会の会場に使われているのは、おそらく横浜の学校でも本校だけだと思います。

――戸塚エリアの教育環境について、どのような印象をお持ちでしょうか。

掲示板
掲示板

伊藤校長:本校の周りは行政機関もそうですが、商店の数も非常に多いですから、いろいろな職業について身近に感じ、実体験できる機会が多いという意味では、とても魅力的な地域だと思っています。

地域の子どもに対する雰囲気にしても、学校と町内会との関係がとても密接ですし、地元の企業や商店、病院など、いろんな方に積極的に学校に関わっていただいていて、良い形で「共生」ができている地域だと思います。

――最後に、戸塚エリアの魅力について一言お願いします。

「トツカーナモール」
「トツカーナモール」

伊藤校長:駅に近く、便利なわりには自然が残っています。新しいマンションは増えていますが、それぞれ自治がしっかりしていてまとまりのある形で学校と関わってくださっている。住むにも子育てにも向いている地域だと思います。「トツカーナモール」や「戸塚区総合庁舎」など立派な施設ができ、新しい店がどんどん増えているので、昔の「戸塚」駅を知っている方は駅から本校に来るまでの道でとても驚かれます。その一方で、歴史や昔ながらのお店もしっかりと残っている。新しさと古さがうまく融合している街だなと感じています。

古さと新しさが融合した街でふれあいを大切にした教育を推進
古さと新しさが融合した街でふれあいを大切にした教育を推進

横浜市立戸塚小学校

校長 伊藤法彦先生
所在地 :横浜市戸塚区戸塚町132
TEL :045-881-0049
URL:http://www.edu.city.yokohama.jp/sch/es/totsuka/
※この情報は2016(平成28)年9月時点のものです。

伝統を守りつつ時代に合わせて発展/横浜市立戸塚小学校 校長 伊藤法彦先生
所在地:神奈川県横浜市戸塚区戸塚町132 
電話番号:045-881-0049
http://www.edu.city.yokohama.jp/sch/es/t..