広く、多くの人に親しんでもらえるように。 松岡山東慶寺 井上大光副住職

松岡山東慶寺
井上大光副住職

広く、多くの人に親しんでもらえるように。
松岡山東慶寺

北鎌倉に数ある古刹のうちでも、特に観光客から人気の高い寺院のひとつ「松岡山東慶寺」。境内には四季の花が美しく咲き誇り、重要文化財などに指定されている貴重な仏像や宝物、写経やお茶などの体験教室もあるため、北鎌倉ならではの“和”が満喫できると評判の寺である。

今回はこの東慶寺を訪れ、井上大光副住職にお話を伺いながら、境内をめぐるお薦めコースを案内していただいた。

東慶寺はその昔、「駆込み寺」として有名だったということですが、歴史について教えていただけますか。

東慶寺

東慶寺は臨済宗円覚寺派に属している、禅宗の寺院です。向かいの円覚寺が本山にあたります。

円覚寺派の禅寺となったのは明治36年からで、開創の弘安8(1285)年から明治35年までは「尼寺」でした。開創の頃から明治4年まで「縁切りの寺法」を引き継いでおり、江戸時代には幕府公認の「駆込み寺」として、離縁を望む女性を救済するお寺となっていました。

東慶寺

近年は檀家の皆さんはもちろん、北鎌倉を訪れる観光客の方々にも広く寺の魅力を伝えられるよう、さまざまな企画をご用意しております。

それでは、早速境内の見どころを教えてください。

東慶寺

山門の先に続いている参道の両側にあるのは梅の木です。毎年2月から3月にかけて、梅の花が満開となる頃には多くの方でにぎわいます。

参道から見て右手、塀の向こう側に見えるのが書院です。こちらは主に檀家さんをお迎えする場所ですので、普段は公開しておりません。

参道を歩いた先の右手にあるのが本堂です。釈迦如来を本尊としてお祀りしています。坐禅会なども本堂で行っています。堂前にはしだれ桜もあり、春には美しい景色が見られますよ。

本堂の隣にあるのが水月堂、その隣にあるのが松岡宝蔵です。宝蔵では常設展示のほか、定期的に内容が変わる企画展示もしており、寺の文化財などを順次公開しています。仏像、蒔絵、絵画など企画展の内容はさまざまですが、例年春には仏像展を行っており、通常は特別拝観となっている水月観音像も、他の仏像と同時にご覧いただけます。宝蔵の前には国歌にも歌われている「さざれ石」があります。

宝蔵から先は切り立った崖の脇を進む小道となっており、より幽玄な雰囲気が増していきます。その先は墓苑になっているようです。

東慶寺

この崖には毎年6月になると紫色のイワタバコが一面に咲きます。その頃にはアジサイや花菖蒲も咲きますので、東慶寺が一年通していちばんきれいな時期だと思います。

墓苑といえば通常は墓石がずらっと並ぶ様子を想像されるかと思いますが、東慶寺の墓苑はゆったりとしていて起伏もありますので、散策にもお薦めの場所です。階段の上には、歴代の住職の墓苑があります。

墓苑を一巡したあとは、宝蔵向かい側の茶室へ。

東慶寺

こちらの茶室には「白蓮舎」という名前がついていまして、立礼(りゅうれい)という形式です。普段は公開していませんが、お茶事や写経会などはここを会場にしています。梅の季節と菖蒲の季節にはお茶店も開いていますので、お花を見ながら一服されるのもおすすめですね。隣にあるもうひとつの茶室「寒雲亭」は千宗旦の遺構の茶室で、茶の湯愛好者の方々の社交場として使われています。

最後に、山門から入ってすぐ左手に見える鐘楼は、寺の中でいちばん古い建物です。関東大震災の時に寺のほとんどの建物が倒壊してしまったのですが、この鐘楼だけは唯一無事でした。

ひととおり境内を案内していただいた後、お寺の特徴について、改めてうかがいました。

東慶寺

東慶寺は檀家さんが少ないんです。というのも、檀家制度の元になっているのは江戸時代の「寺請制度」というもので、これは今で言えば戸籍管理を寺がしているというイメージなのですが、東慶寺は幕府公認の「駆込み寺」だったので、寺請け制度から除外されていました。明治以降は檀家さんも出来たのですが、他のお寺さんと比べると少ないですから、東慶寺では観光に来るお客さんを積極的に受け入れるようにしています。せっかく自然も豊かで、お花もきれいですから、いろんな人に広く見ていただきたいですね。

なるほど、だからいろいろな講座があり、展示もあり、観光客に人気なんですね。

東慶寺
photo by B. JUMONJI

体験教室の種類も、ほかのお寺と比べると多いのかもしれないですね。坐禅会や写経をやっているお寺は多いと思いますけど、茶道や香道をやっているところは少ないのではないでしょうか。せっかく北鎌倉に来られたのだから、思う存分「和」を感じていただければいいですね。

坐禅会は月に3回、日曜日に行っていて、早朝の坐禅と午後の坐禅があります。初めての方でもご参加いただけますよ。宝蔵の企画展に関しては、2013年春は仏像展(4月14日まで)、天秀尼展(4月16日から7月7日まで)を行っていまして、どちらも詳しい情報がホームページにありますので、ぜひご覧になってお越しください。

将来的にどんなお寺にしていきたいですか?

東慶寺

お稽古や体験教室などは、まだまだ始まったばかりのものが多いですから、まずは今行っていることをしっかり定着させられるよう、続けていきたいと思います。その上で、時代の流れに合わせた新しいものも取り入れていきたいですね。

禅寺と言うと、「敷居が高い」と思う方も多いでしょうが、東慶寺では仏教的な難しさは抜きにして、広く、いろんな人に親しんでもらえるようなお寺にしていきたいです。境内に入って、「梅がきれいだね、いい景色だね」と楽しんでもらえれば、それが一番だと思います。

最後に、北鎌倉の魅力について教えてください。

東慶寺

私も生まれてからこの地に暮らしていますが、やはり自然が豊かで、静かなところでしょうね。時間の流れがゆっくりで落ち着いている場所だと思います。

  東慶寺

今回、話を聞いた人

松岡山東慶寺 井上大光副住職

東慶寺を実家にもつ寺の跡継ぎで、未来の住職。数年前まで向かいの円覚寺で修行をしていたそうで、キリッとしたお顔立ちと爽やかな語り口が印象的な人だった。坐禅の指導も行っており、観光で訪れる人々に禅寺ならではの魅力を伝えて続けている。

住所:神奈川県鎌倉市山ノ内1367
電話番号:0467-22-1663
営業時間:8:30~17:00(11月~2月8:30~16:00)
拝観料:大人200円、小・中学生100円
URL:http://www.tokeiji.com/

※記事内容は2013(平成25)年2月時点の情報です。

広く、多くの人に親しんでもらえるように。/松岡山東慶寺 井上大光副住職
所在地:神奈川県鎌倉市山ノ内1367 
電話番号:0467-22-1663
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