船橋市立小栗原小学校 辰馬令校長先生 インタビュー

地域住民の努力と協力によって開校した「船橋市立小栗原小学校」の取り組み/船橋市立小栗原小学校 校長 辰馬令先生


「中山法華経寺」の門前町として栄え、古き良き時代の街並みが未だ残る下総中山。「小栗原の子どもに教育の場を」という地域住民の思いから生まれたという「船橋市立小栗原小学校」は、地区唯一の学校としてその大きな役割を担っている。「地域とともに歩む学校づくり」を重点目標に掲げ、地域のコミュニティの真ん中にある小学校の取り組みやこの街の魅力について、校長の辰馬令先生にお話を伺った。

「動の気迫と静の気魄」を兼ね備えた精神力の強い子どもの育成を目指して

「小栗原小学校」の校舎
「小栗原小学校」の校舎

――学校の概要を教えてください

辰馬先生:本校は1952(昭和27)年に開校し、今年66年目を迎える学校です。現在の児童数は28学級、924名。1982(昭和57)年の1275名をピークに、少子化の流れを受け徐々に減少傾向にあります。通学路には地域の方々やPTAの方々がが「スクールガード」として立ってくださっていますので、地域や保護者に見守れながら、みんな毎日元気に通ってきています。

「小栗原小学校」の教育目標
「小栗原小学校」の教育目標

――教育目標に「気迫(気魄)」という文字が入っているのは珍しいですね

辰馬先生:「美しく、たくましく、かしこい、気迫(気魄)のある子ども」という教育目標には、やさしさや感謝、間違いを認める潔さといった心の美しい子ども。精神的・肉体的にたくましい子ども。学力だけでなく、判断力・決断力も伴ったかしこい子ども、という意味が込められています。ここまではよく見かける教育目標ではあるのですが、本校ではここに「気迫(気魄)のある子ども」という一文が加えられています。

歴史を調べてみると、「気迫」であったり「気魄」であったり、時にはひらがなで分かりやすく「きはく」になっていたりとその時々の校長先生が様々な字をあてていたようです。ひと言で「きはく」と言っても、「気迫」には物ごとに向かっていく精神力や迫力といった動の意味、「気魄」には魂のこもった気合いや内に秘めた闘志といった静の意味があります。私は静と動の両方バランスよく備わっていることが大切だと考え、あえて2つを併記しています。心の美しさとたくましさ、かしこさがあり、課題や困難に力強く立ち向かっていく精神力も兼ね備えた児童の育成を目標にしています。

「小栗原小学校」の教室の様子
「小栗原小学校」の教室の様子

「音楽・部活動・黙働」、子どもたちを育てる特徴ある教育活動

――特徴のある教育活動などはありますか?

辰馬先生:合奏や合唱などの音楽活動が伝統的に盛んな学校です。毎朝、全学年で必ず歌を歌ってから1日がはじまりますし、毎年11月に開催される校内音楽会の前には熱のこもった練習の歌声が各クラスから聞こえてきます。校長室にいても毎朝校舎全体から子どもたちの歌声が響いてくる様は、本当に清々しく気持ちがいいですよ。高学年になると照れて声を出さない子どもが多くなるという話も聞くなか、本校の子どもたちは男子も女子も一生懸命歌う児童が多いです。また学習や運動、人間関係構築の基本は「挨拶」ということで、日頃の先生たちによる声がけはもちろん、全校児童による挨拶運動にも取り組んでいます。児童会のメンバーだけでなく、全員が必ず声をかける側になることで、大きな挨拶ができるようになったと感じます。

部活動は盛んに行われている
部活動は盛んに行われている

――部活動が盛んだとお聞きしました

辰馬先生:船橋市は1975(昭和50)年頃から小学校でも部活動を導入しており、文化部や運動部など、勉強だけではない課外活動にも力を入れています。本校では合奏部、ミニバスケットボール部、サッカー部があり、3年生から参加でき、放課後はもちろん朝・休日にも練習に励んでいます。全国大会や関東大会での優勝経験もあり、顧問の先生や子どもたちも非常に前向きに頑張っている姿を見ます。

様々な賞を受賞している
様々な賞を受賞している

特に合奏部は管弦楽、つまりオーケストラなので、小学生には難しいのではないかと思われる方もいるかもしれませんが、顧問のほかOGやOBたちが放課後や土曜日に指導に来てくれて熱心に指導しますので、見る見る上達していきます。学校の楽器を使って、時には自前の楽器を持ち込んで演奏する姿は大人顔負けです。 私は1986(昭和61)年から1992(平成4)年までの7年間、本校に学級担任として赴任していました。当時の合奏部も3年連続で全国大会を制覇するなど非常に活躍していましたが、昨年度は日本学校合奏コンクールで銀賞を受賞し、本年度は、同コンクール全国大会グランドコンテストで文部科学大臣賞を受賞し、20数年ぶりの日本一となり、本校の音楽活動の活発さを表しています。

合奏部
合奏部

また、ミニバスケットボール部もかつて女子が全国大会制覇、男子が関東大会制覇の経験があり、本年度も、男子が関東大会県予選で優勝し、関東制覇・全国制覇を目指し頑張っているところです。

ミニバスケットボール部
ミニバスケットボール部

――「黙働」という取り組みもあるのですね

辰馬先生:これは清掃活動が十分に行われていないことを憂いたベテラン教師の提案で、数年前から取り組み始めたと聞いています。「黙働」とは文字通り黙々と手を動かし集中して動くことで、最初は黙働の意味さえも理解していなかった子どもたちに、まず先生が率先して黙って清掃に取り組む姿を見せることからはじめたそうです。今では子どもたちは静かに黙々と清掃活動に取り組み、その様子を見ているとこちらの背筋も伸びるような気持ちになります。お喋りをしながら掃除をしていた頃よりも格段に作業効率も上がり、校内も美しく整えられています。黙働清掃は全国の小中学校でも取り組まれていて、「心を磨く活動」としても認知されていますが、本校でもその成果が出ていると自負しています。

「おらが学校」という温かな地域の気持ちに支えられて

――中山や小栗原地域の特徴はどんなところでしょうか?

辰馬先生:もともとこの辺りは「中山法華経寺」の門前町として栄え、学校の周辺は稲作の盛んな水田地帯でした。その後旧国鉄(JR)や京成線が開通し、その水田が宅地化されて人口が増え、今のような街ができたそうです。そのなかで「小栗原地区の子どもたちに教育の場を」という父母や地域の方々の声を受け、彼らの並々ならぬ努力と多くの方々の協力を得て本校が開校したと聞いています。本校周辺の学校は本校のみであり、元々の住民の「おらが学校」という意識と、新たな住民の「地域の学校」という意識が合わさって、非常に学校に協力的で温かな地域性です。

「小栗原小学校」の校庭
「小栗原小学校」の校庭

――具体的に地域の方々はどのように学校に関わっていらっしゃいますか?

辰馬先生:この地域に学校は本校だけなので、災害避難場所になっていることはもちろん、地域のお祭りや盆踊り、地域運動会の会場にもなっています。地域のコミュニティがこの学校を中心にしているような雰囲気で、近隣の方々も学校を身近に感じてくださっているのがわかります。本校の重点目標として「地域とともに歩む学校づくり」を掲げていますが、肩肘張ったものではなく自然に地域の方々と学校が連携している理想の形だと思います。6年生で行う「職業体験」では、地域のスーパーやコンビニ、保育園などに実際子どもたちがお邪魔して、見学するだけでなく実際にそのお仕事を体験させていただいています。2年生ではこの職業体験先を中心に町探検にも訪問させてもらっており、これも地域の方々の理解と協力がなければできない活動のひとつです。

また「スクールガード」と呼ばれる地域の見守りの方々は、当初子どもたちの防犯のために結成された団体だったのですが、今では毎朝登校路に立ってくださり、交通量が多い場所などを特に注意して見てくださっています。「スクールガード」の方々には、毎年6年生が卒業前に6年間お世話になったお礼のお手紙を渡したり、年に一度給食にご招待をして一緒に昼食を食べたりと日頃の感謝を伝える機会を持つようにしています。児童たちの日々の活動を見ていただくことも大切だと考え、合奏部の定期演奏会にご招待したり、地域の福祉祭りに赴いて演奏をする活動も行なっています。このほか社会福祉協議会主催の異世代間交流や高齢者疑似体験など、地域の高齢者の方々との交流は積極的に行なっています。

校内の様子
校内の様子

――PTAの活動も活発なのでしょうか?

辰馬先生:共働きの世帯が増えて保護者のみなさんもお忙しいなか、一生懸命に取り組んでくださっています。毎年秋には「PTAフェスティバル」と呼ばれるPTA主催のイベントが行われていますが、校舎全体を使っての大規模なバザーのほかに食べ物の露店などがいろいろと並ぶ大変にぎやかなお祭りです。このほか家庭教育セミナーや廃品回収、ベルマーク、パトロール、広報誌発行、奉仕活動など積極的な活動内容となっています。

地域とのつながりも大切にしている
地域とのつながりも大切にしている

――校長先生から見たこの地域の魅力はどんなところでしょうか?

辰馬先生:船橋や市川といった賑やかな街の間に挟まれ、派手さはないけれども非常に静かで落ち着いた暮らしやすい地域というところでしょうか。「下総中山」駅北口には「中山法華経寺」があり、その山門へ続く商店街には古き良き時代の名残が数多く残っていて味わい深い街並みです。「中山法華経寺」の周辺には寺社仏閣もたくさんあり、緑深い木々に囲まれた素晴らしい場所です。また4年に一度開かれる稲荷神社のお祭りも有名で、街全体が活気に溢れてとても盛り上がります。もちろん本校の校庭も解放して、休憩所や待機所などに活用してもらう予定です。私が赴任してきたのが丁度前回のお祭りの翌年だったので、私自身はまだ未経験なのですが、神輿や山車なども出るようですので今から楽しみにしています。

辰馬校長先生
辰馬校長先生

船橋市立小栗原小学校

校長 辰馬令先生
所在地:千葉県船橋市本中山3-16-12
電話番号:047-334-4733
URL:http://www.city.funabashi.lg.jp/gakkou/0001/ogurihara-e/index.html
※この情報は2017(平成29)年10月時点のものです。

地域住民の努力と協力によって開校した「船橋市立小栗原小学校」の取り組み/船橋市立小栗原小学校 校長 辰馬令先生
所在地:千葉県船橋市本中山3-16-12 
電話番号:047-334-4733
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