2016年公示地価発表、8年ぶりに全国平均が上昇

2016(平成28)年1月1日時点の公示地価が国土交通省から発表されました。全国の全用途平均地価が8年ぶりに上昇に転じる動きをみせています。詳しくみていきましょう。

三大都市圏の地価上昇が続き、地方圏では明暗が分かれる

公示地価は毎年1月1日時点の地価を調べて発表しているもので、いくつかある地価指標の中でも代表的な数値としても知られています。3月に発表された2016(平成28)年の公示地価では、全国平均値が8年ぶりに上昇に転じるなど、都市圏を中心にした地価上昇の動きが明らかになってきました。

東京、名古屋、大阪の三大都市圏では商業地が2.9%、住宅地は0.5%上昇し、3年連続のプラスとなりました。地方圏では札幌、仙台、広島、福岡の主要4都市の商業地が5.7%、住宅地が2.3%と高い上昇率を示しています。一方、主要4都市を除いた地方圏全体では1.0%下落しており、秋田県と島根県では上昇地点が1か所もありませんでした。地方圏の中でも明暗がはっきりと分かれる結果といえそうです。

この背景には、訪日観光客の増加などによって商業地を中心とした土地需要が高まったことや、日銀による金融緩和政策や円安を背景にした海外からの資金流入による不動産投資の増加もあると考えられます。「マイナス金利政策」が打ち出されたのは2016(平成28)年1月後半なので、今回の発表以降も資金流入が増加し、地域によっては地価上昇が続いている可能もあります。

都心商業地だけでなく、リゾートの別荘地も急騰

地価上昇が顕著な個別地点としては、来日観光客の増加を受けた東京・銀座や大阪・心斎橋などの商業地や、北陸新幹線が開業した金沢駅周辺、外国人によるリゾート需要が旺盛な北海道・倶知安町などが挙げられています。

■地価上昇が顕著なポイントとその要因事例  ※数値は地番ではない、( )内は上昇率

交通インフラの整備や再開発
・仙台市青葉区 仙台青葉5−5(15.0%)…仙台駅周辺の再開発事業
・東京都港区 港5−39(17.1%)…虎ノ門地区再開発と地下鉄日比谷線新駅計画
・石川県金沢市 金沢5−13(31.2%)…北陸新幹線開業にともなう金沢駅周辺整備
・名古屋市中村区 名古屋中村5−11(38.4%)…名古屋駅周辺の大規模再開発
・福岡市博多区 福岡博多5−3(24.5%)…博多駅周辺再開発と地下鉄延伸

高度商業地における店舗需要
・東京都中央区 中央5−2(22.9%)…銀座駅周辺
・大阪市中央区 大阪中央5−23(45.1%)…心斎橋駅周辺

観光・リゾート需要
・北海道倶知安町 倶知安−3(19.7%)…外国人による別荘地需要
・京都市東山区 東山5−7(21.2%)…祇園四条駅など京都中心部への新規出店需要
・大分県由布市 由布5−2(15.4%)…温泉地・湯布院への国内外からの観光需

ドーナツ状に広がる東京圏の地価上昇エリア

また、東京圏の市町村区別の商業地・地価変動率を示したのが下記の図です。東京都心部を中心にしてドーナツ状に地価上昇エリアが広がっていることがわかります。この傾向は住宅地でも同様です。人口減少が始まったなか、都市部の商業地やその周辺の利便性の高いエリアへの人気集中が進み、地方都市や郊外での住宅地へのニーズは減少していることが背景にあるのでしょう。

今後も、地域によって地価上昇と下落の二極化が進んでいくことになりそうです。地価上昇はマンション価格へも影響を与える要因ともなりますので、住宅購入を検討している人は、地価動向にも、十分注意を払っておきましょう。

市区町村別の状況(東京都・商業地)国土交通省「平成28年地価公示/東京圏-商業地」より抜粋して作成

       







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