基準地価が2年連続の上昇を示し、地方へも波及

先日国土交通省から発表された2019年の「基準地価」は、全国の全用途平均で2年連続の上昇を示しました。詳しくみていきましょう。

地方圏・商業地の地価が28年ぶりに上昇へと転じる

「基準地価」は7月1日時点の地価を調査したもので、1月1日時点の調査である「公示地価」と並び、公的な地価調査として注目される数値です。2019年の調査では、全国の全用途平均がプラス0.4%(前年0.1%)と2年連続の上昇を示しました。また同じく全国商業地では1.7%(前年1.1%)と地価上昇幅を拡げ、全国住宅地では▲0.1%(前年▲0.3%)と下落率が縮小しています。

商業地をエリア別にみると東京圏で4.9%、大阪圏で6.8%、名古屋圏で3.8%といずれも昨年よりも上昇率が拡大、さらに地方中核4都市では10.3%と高い上昇を示しています。また、その他の地方圏でも0.3%と28年ぶりに上昇へと転じるなど、商業地の地価上昇の波が全国に波及していることがうかがえる結果となりました。

商業地 住宅地 全用途
全国 1.7(1.1) ▲0.1(▲0.3) 0.4(0.1)
三大都市圏 5.2(4.2) 0.9(0.7) 2.1(1.7)
東京圏 4.9(4.0) 1.1(1.0) 2.2(1.8)
大阪圏 6.8(5.4) 0.3(0.1) 1.9(1.4)
名古屋圏 3.8(3.3) 1.0(0.8) 1.9(1.5)
地方圏 0.3(▲0.1) ▲0.5(▲0.8) ▲0.3(▲0.6)
地方圏中核4都市 10.3(9.2) 4.9(3.9) 6.8(5.8)

▲はマイナス、( )内は前年数値。中核4都市は札幌、仙台、広島、福岡

その原因としては、訪日観光客(インバウンド)により商業施設やホテル用地の需要が急増したことや、都市部で進む再開発、景気回復と金融緩和による余剰資金の受け皿ともなり、地方中核都市や地方圏での地価上昇が進んだようです。東京圏では投資先となる物件が品薄となり、海外からのマネーも含めた資金が地方へ向かったことも背景にあります。ただ、半数以上の都県では下落が続いており二極化の傾向も継続しています。

住宅地では福岡・沖縄県の上昇が顕著

住宅地では全国平均の下落幅が小さくなったものの、▲0.1%を示しています。

エリア別では東京圏で1.1%、大阪圏で0.3%、名古屋圏で1.0%の上昇となり、昨年よりも上昇幅が拡大しています。都道府県別でみると東京都が2.5%(前年2.4%)、千葉県が0.3%(同0.1%)、神奈川県が0.1%(同0.0%)、埼玉県が0.7%(同0.5%)の上昇となり、引き続き東京都の上昇率が高い傾向を示しています。

東京圏以外の住宅地で上昇しているのは宮城県0.9%(同0.9%)、福島県0.2%(同0.5%)、石川県0.4%(同▲0.4%)、愛知県0.9%(同0.6%)、大阪府0.4%(同0.2%)、京都府0.1%(同0.0%)、広島県0.1%(同0.0%)、福岡県1.7%(同1.1%)、熊本県0.1%(同0.0%)、大分県0.1%(同▲0.3%)、沖縄県6.3%(同4.0%)で、石川県と大分県が下落から上昇へと転じています。

上昇が著しいのは福岡県と沖縄県で、ともに上昇幅も拡大しています。その他の道府県でも全体的には下落幅が小さくなり、全国平均では▲0.1%(同▲0.3%)となりました。

地価上昇による住宅供給への影響は?

では、地価上昇が住宅価格へどんな影響を与えているのか?

首都圏の新築マンション価格は平均6137万円(2019年1〜6月、不動産経済研究所調べ)となり7年連続の上昇を示し、6000万円台の大台に乗りました。一方、供給戸数は13.3%減の1万3436戸となり減少傾向がみられています。特に都区部での価格上昇、供給減少の動きが顕著にみられており、地価上昇の影響を受けていると考えられます。

商業地が牽引する都心部での地価上昇は住宅供給にも大きな影響を与えているのは事実です。価格上昇によって、サラリーマン世帯の住宅購入が困難になる水準に届いているとの見方もあり、今後は供給の調整や郊外部へのシフトが進んでいく可能性があります。地価の動き、住宅市場の動きもしっかり把握しながら、マイホーム購入計画を進めてください。

       







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