牛込柳町の交差点から、若松河田方面に少し坂道を上がった場所にある「アンティカ オステリア　カルネヤ」。ここは週末ともなればつねに満席という人気を誇っている店で、昨今の“熟成肉ブーム”のパイオニアの店のひとつでもある。

創業店主の高山いさ己氏は焼き肉店の息子として生まれ、「週に6日は焼肉を食べて育った」という生粋の肉マニア。自身のイタリア料理キャリアと、ソウルフードである肉を組み合わせて「肉＋イタリアン」という業態を考案し、ここ「カルネヤ」を開いたという。その時に看板商品としたのが熟成肉を使った肉料理だった。2007年の開店当時、熟成肉を扱う店はまだほとんど無く、ましてやイタリアンと熟成肉の組み合わせは皆無だった。

その珍しい業態と熟成肉の抜群の美味しさから、「カルネヤ」は開店間もなくして大人気店に。その後現在に至るまで、オステリアを標榜しつつも圧倒的に肉料理が人気という、一風変わった店であり続けている。

現在、高山氏は支店のパスタ専門店に常駐しているが、代わって店を切り盛りしているのは、高山氏の右腕として開店当初から活躍している長沼剛司シェフ。肉の目利きは高山氏に鍛え上げられ、今では「カルネヤ」の肉の状態はすべて長沼氏が見極めているそうだ。

今回長沼シェフが推薦してくれたのは、常連から高いリピート率を誇る「塾成牛のパレルモ風カツレツ」。このカツレツに使っている肉は、1か月かけて十分に熟成させたサーロインということだが、いわゆる「A5」的なサシの入ったサーロインではなく、赤身が多いサーロインを用いている。この理由を聞くと、「サシが入っちゃうと、塾成に時間がかかるし、脂が邪魔をして旨味が入りにくくなるんです」という答えが返ってきた。“サシが入った肉イコール美味”ではないところが、熟成肉の奥深いところだ。

衣をまとわせてさっと表面を焼き、オーブンに入れて熱をなじませる。ひと口サイズにカットされて出されるカツレツは、レアな赤身の表面にしっとりと肉汁が輝き、いかにも食欲をそそる一品だ。実際に口に運んでみれば、熟成肉ならではの濃厚な旨味が鼻腔に抜け、チーズのような芳醇な香りが残る。その旨味と香りの余韻を、好みのワインとマリアージュさせて楽しむのが醍醐味だ。

なお、写真のカツレツは180グラム。一人でも食べられる量だが、シェアをして楽しむ人が圧倒的に多いそうだ。予約がなかなか取れない人気店だけに、「せっかくなら色々味わいたい」という人が多いのかもしれない。

「基本的にすべての料理がシェアできます。ステーキもカツレツも、2人で頼まれたら半分ずつ2点盛りにしてお出ししますし、焼き加減をお一人ずつ変えることもできます。ランチのハンバーガーだって、半分に切ってお出しできますよ」とシェフ。こういったフレンドリーでお客主体のスタイルも、人気の理由のひとつかもしれない。

カツレツ以外には、炭火で焼き上げたステーキをいろいろな部位で盛り合わせた「カルネヤオールスターズ」の人気が高い。こちらは600グラムが基本となっているが、好みに合わせて増減したり、肉の種類をアレンジしてくれるそうなので、スタッフに積極的に相談してみてほしい。

肉料理とバーガーがあまりにも人気のため、ほかのイタリア料理がメディアに露出することは少ないが、イタリアンベースの一品料理にも、根強いファンが付いているという。食材の旬ごとに更新される黒板メニューもけっこう多いので、肉料理以外にも是非、注目してみてほしい。

お酒はワインが主体で、イタリア産のワインだけで揃えている。「僕以外のスタッフはみんなワインにすごく詳しいので、スタッフに何でも聞いてください」と長沼シェフ。グラスワインも数多く置いているそうなので、頼りになるスタッフの方々に、チョイスを丸投げしてしまっても楽しそうだ。

肉料理のおいしさはもちろん、抜かりの無い本格派イタリア料理、気軽に使える雰囲気、フレンドリーな接客など、いろいろな方面をお客本位でハイレベルにまとめている「カルネヤ」。この店が創業して12年を経てもなお人気店であり続けているのは、美味しさにつながるすべての要素を、つねに磨き上げているからなのだろう。

CARNEYA（カルネヤ）
所在地：東京都新宿区南山伏町3-6 市ヶ谷NHビル1F
電話番号：03-5228-3611
営業時間：12:00～14:00（L.O.）、18:00～21:30（L.O.）
定休日：日曜日
http://www.carneya.net/