田中りゑバレエスタジオ

「桜上水」駅北口から徒歩すぐの場所にあるピンク色の一軒家、「田中りゑバレエスタジオ」は、その名のとおり、バレエダンサーとして現役活躍中の田中りゑ氏が主宰しているバレエ教室。その歴史の長さ、深さは折り紙付きであり、田中氏自身は「舞踊生活65周年」と謳っているほどの大ベテラン。かつては国内外の数々のステージで踊り、近年は舞台に立つことも続けつつ、後進の育成に尽力している。教室自体も1978年に開校し、すでに38年。ここを巣立ってプロになったダンサーも多いという、少数精鋭ながら名門のスクールだ。牧阿佐美バレエ団員の風間美玖さん、松田耕平さん。米国ニュージャージーバレエの千葉涼火さん。コンテンポラリーダンサーの鈴木竜さん、亀頭可奈恵さん。井上バレエ団の岩瀬一秋さん。ラテンジュニア部門日本1位の森田舞夢さんなどの一流ダンサーも、このスタジオで田中さんに鍛えられたそうだ。

今回、訪れたのは夕刻の、幼児のクラスからジュニアのクラスに替わる時間帯。田中氏は言ってみれば「バレエ界の重鎮」のような人だが、スクール生の裾野はとても幅広い。3歳の幼児から、小中高校生、それ以上の大人のオープンクラスまですべての年代を網羅しており、基礎の基礎から、しっかりと身につけることができる。

レッスンに入った瞬間から、スタジオの中はピリッと張り詰めた空気に変わる。響くのは先生の声と、軽やかなに響く音楽だけ。生徒は先生の声に合わせて身体を動かし、先生はピンと背筋を伸ばしながら生徒の間を回り、必要に応じて姿勢を正していく。その姿は凛としており、とても“舞踊生活65年”の方には見えない。

全ての年代の生徒を指導している
全ての年代の生徒を指導している

生徒の姿勢を正していく田中氏
生徒の姿勢を正していく田中氏

厳しいがここには本物がある
厳しいがここには本物がある

軟硬織り交ぜた指導
軟硬織り交ぜた指導

クラシックバレエはすべての舞踏の基本
クラシックバレエはすべての舞踏の基本

レッスン中、時には厳しい言葉が飛ぶこともあるが、それは田中氏の人柄ではなく、ポリシーがさせているものだ。時には厳しくしなければ、芽は大きく育たない。それを知っているからこそ、硬軟を上手に織り交ぜている。「先生が伝えたら、すぐに耳できちんと聞いて、目でしっかり見て、それから、頭を使って考える。そうしたら、身体を動かす。これをきちんとやっていけば、必ずできるようになるんです。それは学校のお勉強とか、人間の生き方も同じ。全部つながっていくんですよ」と、田中氏は話す。たしかに、先達を敬い、真似をして、そこから学び取るということが学びの本質的な部分だ。それを身体を動かしながら、楽しく実践できるのがバレエの醍醐味の一つだろう。

ここは学びの本質を実践できる場でもある
ここは学びの本質を実践できる場でもある

発表会に向けて真剣にレッスンを行う生徒
発表会に向けて真剣にレッスンを行う生徒

クラシックバレエで学べることは多岐に渡る
クラシックバレエで学べることは多岐に渡る

今でも現役の田中氏
今でも現役の田中氏

厳しさは真剣に相手と向き合うからこそ
厳しさは真剣に相手と向き合うからこそ

田中氏の教えに惹かれた多くの生徒が集まる
田中氏の教えに惹かれた多くの生徒が集まる

こうして厳しい練習を続けるからには、当然その「目標」もある。もちろんそれは、発表会である。発表会が行われるのは2年に一度で、次回の公演は2017年。その時には大きなホールを貸し切り、数々の小品集の後に、メインステージが公演される。過去には「眠れる森の美女」「ドン・キホーテ」「ジゼル」「コッペリア」「くるみ割り人形」などを演じたということだ。

また、小さなうちからバレエをすることによって、将来の可能性の幅もぐっと広がるという。「クラシックバレエの技法というのは、あらゆる舞踊の母体だから、これからジャズダンスをしたい、フィギュアスケートをしたい、サーカスやソシアルダンスをしたい、という人も、あらゆるものの基本は全部クラシックバレエにありますから、やっておくのが良いです」と断言していた田中氏。礼儀作法、姿勢、柔軟性、音楽性、体力、センス、音感。確かにバレエにはありとあらゆる要素が詰まっており、舞踊系ならずともその成果が生きてくる場面は多いだろう。

なお、教室への入門は随時受付しており、電話を入れてから訪問すれば、いつでも見学させてくれる。普段のレッスンの様子を見て、そのうえで入ることができるので、ミスマッチになることも無いはずだ。初めてレッスンを見学した人には、「なんだか厳しそう」という第一印象があるかもしれない。しかし考えてみてほしい。何から何まで甘くなり、親自身も子どもに強く出られなくなってしまっている時代だ。子どもが真剣に向き合える何かに対して、これだけの厳しさと愛情を持って接してくれる“先生”は、探してもなかなかいるものではない。

取材の最後、田中氏に「バレエの楽しさは何ですか?」と聞いたところ、こんな答えが返ってきた。「音楽と一緒に自分が動いていて、素晴らしい“贈り物”をもらえることです。精神と肉体が融合されて一つになった時、人間はすごく幸せに思うんです。人間は誰だって、踊ることが大好きなんですから。」

バレエに魅了され、65年間もの間それだけに没頭してきた田中りゑ氏。まだまだ現役バリバリの彼女だが、この教えを受けられる期間は永遠ではない。バレエを基礎から徹底的に勉強したい、多少厳しくても本物を知りたい、という人は、是非この教室の門を叩いてみてほしい。

田中りゑバレエスタジオ
所在地:東京都杉並区下高井戸1-29-2 
電話番号:03-3304-8867



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