世界を、そして日本を突然襲った新型コロナショック。緊急事態宣言は解除されたものの、新型コロナウイルスの感染防止対策は日常生活や経済活動に大きな影響を及ぼしています。マイホーム取得を計画している方にとっては、どんな影響があるのか? 2020(令和2)年の新築マンション市場の行方について、いくつかの観点から検証してみましょう。

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リーマンショックでマンション価格はどう動いたか?

まず、これまでの新築マンション市場の動きを振り返ってみましょう。参考となるのが2008(平成20)年9月に発生したリーマンショックです。アメリカの投資銀行の経営破綻に端を発した世界規模の金融危機は、日本経済だけでなく不動産取引や新築マンション市場にも大きな影響を与えました。特に都心部ではその影響も大きく、東京都区部では2009(平成21)年の新築マンション平均分譲価格が5190万円と、前年比で約15.2%下落、東京都や神奈川県でも価格は下落しました。また、供給戸数も首都圏全体で3万6376戸と前年比で7357戸、約16.8%の減少となりました。ただ、埼玉や千葉では価格はほぼ横ばい、首都圏全体も大きな下落とはなりませんでした。

この当時、新築マンション開発会社(デベロッパー)には企業規模がそれほど大きくない中堅企業も多数ありました。金融危機が、体力のない中小企業を直撃したことで、一部の新築マンションでは値下げ販売が行われ価格下落の一因となりました。ただ、好立地の物件や大手デベロッパーが供給する魅力的な物件には根強いニーズがあり、価格下落は生じませんでした。翌年には供給戸数が4万4000戸台にまで回復し、価格も横ばいで推移しましたが、2011(平成23)年には東日本大震災が発生。本格的な市況の回復は2013(平成25)年頃からとなります。

平均価格と平均供給戸数の推移
平均価格と平均供給戸数の推移

2013年以降、新築マンション価格は上昇傾向に

2013(平成25)年に発表された「アベノミクス」では金融緩和、財政出動、そして民間投資の喚起による成長戦略という3本の矢が掲げられ、日本経済は緩やかに回復基調が続きました。都市部を中心としたオフィスや商業施設ニーズ、一気に増加したインバウンド向けのホテル・宿泊施設ニーズ、そして2020年オリンピック開催決定による都市再開発の波が新築マンション市場にも波及し、価格上昇と供給戸数の減少傾向が続いていたのがこれまでの首都圏新築マンション市場です。

価格上昇と供給減少の原因としては地価の上昇と、建築費の上昇が大きな理由にあげられています。2014(平成26)年を境に3大都市圏では商業地と住宅地の地価は上昇に転じました。立地条件の良い土地はオフィスや商業施設需要も強く、都市部を中心にとした地価上昇が続き、2020(令和2)年公示地価では、3大都市圏の商業地地価は5%を超える上昇をみせています。条件のいいマンション用地は非常に貴重なものになっています。

根強い人気を誇る、みなとみらい・桜木町エリア
根強い人気を誇る、みなとみらい・桜木町エリア

一方、建築費の高騰はオリンピック開催にともなう需要増加だけが原因ではありません。需要増加の一端を担っているプロジェクトとして、2025(令和7)年の大阪万博や2027(令和9)年に開通予定のリニア中央新幹線などが挙げられます。大阪万博は、オリンピック後の一大イベントとして期待されていますが、それに付随したインフラ整備の注目度も高まっています。埋め立て工事や鉄道の延伸、工事道路の拡張など、半官半民で行われるプロジェクトは、1兆円を超える計画となっているのです。

また、2027(令和9)年に開通予定の「東京」駅〜「名古屋」駅間のリニア中央新幹線は、総投資額が約5.5兆円もの大型プロジェクトです。磁力で車輪を浮かせて走る「超電導リニア」方式を取り入れるにあたり、既存のインフラを刷新する必要があり、従来とは異なる車体・線路・駅を建設するため、このようなビッグプロジェクトとなっています。

建設業界全体の課題として、就業者数の減少と高齢化、若手人材の不足という問題を抱えていますが、社会インフラの更新需要は今後もますます増えることが想定され、建設業界への需要は高まることが想定されています。しかし、需要に十分に応えられない施工体制の制約があり、そのために人件費の上昇、建築費の上昇圧力が発生している状況です。

インフラ整備費用の分野別の推移(出典:国土交通省)
インフラ整備費用の分野別の推移(出典:国土交通省)

 

コロナショックによる影響が発生

そんな中で発生したのが、コロナショックです。不動産経済研究所の発表によると、緊急事態宣言が発せられていた2020(令和2)年4月の「首都圏新築マンション市場」は、新規発売戸数が前年比51.7%減の686戸、過去最少の数値となりました。一方で、平均価格は6216万円と前年比で5.4%アップとなり、戸数は減ったものの契約率は78.9%と前年比14.6%アップの高い水準となっています。外出自粛、テレワークが推奨される中なので、モデルルームでの接客販売を休止したり、販売スケジュール自体を延期したりと、様々な影響を受けた「イレギュラー期間」であったと捉えたほうがいいかもしれません。

月間販売戸数の推移(出典:不動産経済研究所)
月間販売戸数の推移(出典:不動産経済研究所)

では、2020(令和2)年の後半、そして2021(令和3)年にむけて今後の新築マンション価格はどうなるのでしょうか?

リーマンショック時との違いは?

新型コロナウイルスの第2波が発生するのか、それとも収束に向かっていくのかによっても大きく左右されるでしょう。ただ、現時点でもはっきりしている判断材料もいくつかあります。リーマンショック時との比較で考えると、

1)マンション開発会社(デベロッパー)の大手寡占が進んでいること
2)建築業界の人材不足問題が解決していないこと
3)テレワークなど働き方やライフスタイルに変化が生じていること
4)働き方改革により建設現場の工期が伸びること

建設投資、許可業者数及び就業者数の推移(出典:国土交通省)
建設投資、許可業者数及び就業者数の推移(出典:国土交通省)
 

大手企業のシェアが増えることは価格下落の可能性が低くなると考えられます。経営基盤が安定していることで、短期間で大幅な値引き販売を強いられることが少ないからです。完成したマンションを、じっくりと時間をかけて販売するケースも増えるでしょう。

建築業界だけに限らず、人材不足は日本経済の大きな課題として残っています。技術革新によるロボット化などが進まない限り、建築コスト削減の余地は少ないと考えられます。また、テレワークの一般化によって、マンション選択の立地条件も変化する可能性があります。都心への通勤を前提とした街選びの必要性が低下し、その街自体が持つ魅力がライフスタイルに合っているか、家族が暮らしやすいか、といった条件が重視されるケースが多くなりそうです。

海や山など自然環境に恵まれた郊外型を選ぶ人、逆に都市生活の利便性を存分に享受できる駅近マンションを選ぶ人など、それぞれの選択肢は広がるでしょう。「環境」「利便性」「駅近」など、明確な魅力を持つマンションについては価格低下の可能性は低いと言えそうです。

「駅近」は、普遍的な魅力
「駅近」は、普遍的な魅力

株価とマンション指数の連動にも注目

最後に、今後の新築マンション価格を占ううえで、株価との連動性にも注目しておきましょう。グラフは国土交通省が発表している不動産価格指数と、日経平均株価の推移を比較したもの。リーマンショックで大きく下落し、2013(平成25)年頃から右肩上がりに動く様子は、ほぼ同じトレンドを描いています。コロナショックにより3月に大幅下落を示した株価ですが、6月に入り2万3000円台まで回復を示しています。経済の先行指標ともいえる株価水準の動きに注目しておくことで、マンション価格の行方を予測することができそうです。

『株価下落はマンション価格に影響する? 半年後を注視』より転載
『株価下落はマンション価格に影響する? 半年後を注視』より転載