キッチンスズヤ

「武蔵中原」駅近くにある「キッチンスズヤ」は、地元っ子がひいきにする、夜だけ営業の洋食店。「朝どれ野菜を美味しいワインとともに」がキャッチフレーズで、そのフレーズの通り、野菜が特に美味しいと評判を集めている。

店の表には「ピザ」「パスタ」「Grazie」などのイタリアっぽい文言が並んでおり、ぱっと見た感じはイタリアンバルのようにも見えるが、その横には「本日の鮮魚」「新サンマ入荷しました」など、居酒屋のような言葉もちらほら見える。「うちはバルでも居酒屋でもないんです。あくまでも、“街の洋食屋さん”になりたいと思っていて」と語るのは、この店を含む「すずやグループ」5店舗を束ねる、代表の蟹江脩礼(のぶゆき)氏。イタリアンをベースに創作を織り交ぜた料理を主役に、美味しいお酒を脇役に。それがこの店の立ち位置であるという。

店には老若男女を問わず、あらゆる年代の人が訪れる。平日はサラリーマンが多く訪れ、仲間同士のちょっとした会食や、歓送迎会などにも愛用されているそうだが、週末になると家族連れが多くなり、小さな子ども連れから、70,80をすぎるような年配の方まで、顔ぶれは実に幅広い。それだけ、この街によく馴染んでいる店ということだろう。

愛される理由は、まず、肩肘を張らせないその雰囲気にある。男性でも女性でも入りやすい店構えで、店内に入った瞬間に、元気の良いスタッフが明るく迎え入れてくれる。席もカウンター席、テーブル席、半個室の席など色々あり、店の壁にはイラスト入りの品書きや店主の似顔絵などが書かれており、見ているだけでも楽しめる。清潔感のある店内、大きめなテーブル、箸で食べるという気軽なスタイルも嬉しいポイントだ。

だが、この店が本当に凄いのは、食材集めと料理にかける情熱である。とりわけ「野菜」「魚」のふたつに関しては高級店も真似できないような、強いこだわりを持っている。

まず、野菜は「地産地消」が基本。グループ5店舗に供給される野菜の大半は、川崎市内の契約農家から仕入れている。それも配送ではなく、社長自らが毎日農場へ行き、その日の朝に採れた野菜をクルマに積み、各店舗に配送している。もちろん端境期などは市販の野菜も使うそうだが、夏などは全部が市内産の野菜、という日も多いそうだ。

野菜が最もダイレクトに味わえるという点で、「バーニャカウダ」(880円)の人気が特に高いという。ご存知の通り、バーニャカウダはアンチョビガーリック風味のオイルを生野菜に付けて食べるイタリア料理の一つだが、よくあるのは「油っこくて食べづらい」「味が濃くて野菜の味がよく分からなくなる」というパターン。しかし「キッチンスズヤ」のバーニャカウダソースは、ほど良いとろみが付くよう工夫が凝らされており、野菜によく絡む。しかも適度に乳化しているので油っこさも無く、野菜の持ち味を隠さず引き立ててくれ、後味も優しい。この店を訪れたら是非オーダーしておきたい一品だ。

魚へのこだわりも、野菜に引けをとらない。蟹江氏は農家とともに二子新地の魚屋さんにも毎日出向き、自らの目利きで、全店舗分の魚を仕入れているという。その魚は元をたどれば、その日の朝に魚屋が築地で競り落としたもの。野菜と同じく、朝に仕入れた魚がその日の夜のメニューになるというわけだ。だからこの店のメニューには、手書きのものが多いのである。この日作ってもらったのは「4種のカルパッチョ」(1,500円)。おろしたばかりの魚をイタリア風の手作りドレッシングで和えた、こちらも看板メニューのひとつだ。

野菜を中心に「地産地消」に取り組む「すずや」グループでは、最近、新しくソーセージの地産地消にも取り組んでいるという。「かわさきハーブソーセージ」(580円/1本)がそのメニューということだが、もともとは、地元企業と川崎の共同プロジェクトで「川崎の新しい名産品を作る」という話が立ち上がり、そこに蟹江氏が賛同。同じく賛同したハーブ園で作るハーブを使い、「すずや」伝統の手作りソーセージレシピで、市内の加工業者が量産品として完成させたという。「さすがに豚肉までは無理でしたけど」と蟹江氏は悔しげに笑うが、デザインや販路も川崎市内の事業者が担うという、生粋の「かわさき名店品」である。現在、これを食べられるのは「すずや」グループの店舗のみであるという。

そのソーセージは、1本で100グラムもあるという大きさがまず印象的だ。長細い形は南北に長い川崎市の形をイメージし、粗挽き肉がギッシリと詰まったさまは、「京浜工業地域の力強さ、“肉々しさ”を表現した」というもの。薄皮から透けるハーブの点々は、「工場の夜景をイメージしたもの」だそうだ。とにかく美味しく、地元愛がたっぷり込められた一品には違いないので、ぜひこちらも賞味いただきたい。

もちろんこれら定番・看板メニュー以外にも、日々の仕入れで書き出されるメニューも多いので、いつ訪れても旬の食材で作った、創作色豊かな洋食メニューを楽しめることだろう。ドリンク類はワインを主体に、ビール、カクテル、ハイボール、サングリアなど、アルコール類は一通り揃っているし、居酒屋ではないので無理にお酒をオーダーする必要も無い。好きなものを好きなだけ頼む、というのがこの店のスタイルだ。また、宴会向けの飲み放題付きプランも用意されているので、歓送迎会等にも使いやすい。日常のいろいろなシーンで訪れてみたい店である。

気軽なスタイル、リーズナブルな価格帯の店でありながら、店主自らが目利きして仕入れる野菜・魚が味わえる「キッチンスズヤ」。この店が中原の人々に愛される理由は、一度訪れてみれば体感できることだろう。すぐ近くには和食居酒屋の「鈴や 武蔵中原店」もあるので、こちらも併せて使い分けてみたい。

キッチンスズヤ
所在地:神奈川県川崎市中原区下小田中1-5-9 第2井村ビル1F
電話番号:044-777-3380
営業時間 17:30~24:00(23:00LO) ※祝日17:00~
定休日 日曜日(日曜祝日の場合は営業、翌日休)
http://www.suzuya-group.com/



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