子ども・指導者・保護者が一緒になって高め合うサッカーチーム/蕨北町サッカースポーツ少年団 団長 小泉亘さん
蕨北町サッカースポーツ少年団
団長・小泉亘さん
子どもたちが成長できる環境づくりを。
子ども・指導者・保護者が一緒になって高め合う
「蕨北町サッカースポーツ少年団」
「蕨市立北小学校」のグラウンドをホームに、週末のたびに元気な声を響かせている「蕨北町サッカー少年団」。走力に定評があるチームで、大会でもたびたび上位大会に進むなど戦績を残している。子ども・保護者・指導者を合わせて約80人の団員が力を合わせて活動しているのもチームの魅力だ。今回は、指導者として約25年もの間チームに携わり、ここ10年は団長(代表)を務められているという、小泉亘さんにお話を伺った。
まず、「蕨北町サッカースポーツ少年団」の概要について教えてください。
蕨市内には、現在全5団のサッカー少年団と、ほかに軟式野球チームなどもありまして、その中でも「蕨北町サッカースポーツ少年団」は一番最初できた“スポーツ少年団”です。もともとは1970(昭和45)年に、「蕨」駅の反対側の塚越地域で「塚越サッカー少年団」という名前でスタートし、その後本部をこちらに移して「蕨北町サッカースポーツ少年団」になりました。
その後、市内各地域で「南サッカー少年団」「錦サッカー少年団」「中央サッカー少年団」、新たにまた「塚越サッカー少年団」ができまして、現在に至ります。
現在、どのぐらいの人数で活動されているのでしょうか?
今は選手は50人弱ほどです。そのうち女の子が3名おります。メインは小学生が対象で、男の子、女の子を問わず、「蕨市立北小学校」以外に通う児童でも入団していただけます。現在はほとんどは蕨小学校の児童ですが、それ以外にも「蕨市立中央小学校」や「蕨市立東小学校」から来てくれる子もいますし、川口市の「川口市立芝富士小学校」からも来ています。このほか、「キッズ」というかたちで、小学校入学前の幼稚園児も受け入れています。とにかく「蕨市立北小学校」のグラウンドに練習に来ることが可能であればどなたでも大歓迎です。
「蕨北町サッカースポーツ少年団」では今までJリーグに2名(現在浦和レッズで活躍している室井市衛選手と、栃木SCのゴールキーパー榎本達也選手)などプロサッカー選手を輩出していることもあり、それを知って入ってくれる方もいます。興味をお持ちになったら、ぜひ一度見学にいらしてください。
どのようなチーム編成をしているのでしょうか?
以前100名以上選手がいた時期には各学年でチームを作っていましたが、今は各学年ではチームを作るのは難しいので、6年生のチームに5年生が入ったり、4年生のチームに3年生が入ったりという具合に、2つの学年を混ぜながら試合を行っています。
「蕨北町サッカースポーツ少年団」ならではの、独自の練習方法などはありますか?
練習内容については、私を含め指導者が定期的に「トレーニングセンター」という所に通いトレーニング方法の指導を受け、基本的にはそれに沿って行っています。「蕨北町サッカースポーツ少年団」の伝統としては、特に「走力」を重視しており、前述のJリーグに行った選手も言っておりましたけれども、やはり“走ることが基本”だと思っていますので、練習ではかなり走ることに重点を置いていると思いますね。
たとえば夏合宿で群馬県の片品村(かたしなむら)というところに行くのですが、ここに非常にいい坂があるので坂道ダッシュを午前、午後とそれぞれ50本ずつ練習に組み込んでいます。だから学校で持久走大会などをやれば、必ず「蕨北町サッカースポーツ少年団」の子が何人か上位に入っていますよ。
普段の練習についても最初に全学年で一緒に体操をし、それから2周ぐらいトラックを走り、また全学年で一緒にボール遊びをして、その後にも高学年は走力をつけるためにタイムトライアルというメニューをやります。これは、このチームで何十年と続いている伝統です。
指導をするうえで、最も大切にしていることはどんな点でしょうか?
単純に“サッカーがうまくなる”ということも確かにひとつの考え方ですが、まず子どもたちを精神的な面で成長させようと思いながら日々接しています。
「あいさつ・返事・片付け」という3つの決まりも「蕨北町サッカースポーツ少年団」の代々受け継がれている伝統です。そういったところは日頃の生活に対する姿勢などにも生かされてくるもので、保護者の方々や学校の先生方からも、「北町サッカーに入ってからあいさつができるようになった」とよく言っていただけます。やはりそういった言葉をいただけるのは嬉しいですね。
こういった共通認識については、2か月に1回の指導者会議、3か月に1回の役員会などを通して、指導者同士でお酒も飲み交わしながら(笑)ディスカッションをして、情報共有をしています。
もちろん、最終的に“ゲームに勝つ”ことは意識しますけれど、「マッチ・トレーニング・マッチ」という形式で、試合を行い、そこで悪かったところをトレーニングで改善し、それをまた試合に生かしていく、ということを意識しています。
以前はむやみに走らせたり、蹴らせたりというトレーニングをした時代もありましたが、現在はもう「今やっているのは何のトレーニングなのか」「どんな時に役に立つのか」ということを理解しないと、子どもたちはついて来ない時代ですから、子どもたちが理解できるように工夫して、それを試合の時に生かせるように、常に対話することも大事にしています。
指導者の方には、どんな経歴の方が多いのでしょうか?
また、保護者の方々はどのように団に参加していらっしゃいますか?
指導者は、基本的にはサッカー経験者のお父さんがコーチをしてくださっている方が多いですね。現役選手の子のお父さんもいますし、団の卒業生のお父さんもいます。他には団のOBの子が、大学生などになって来てくれる場合もあります。今日も大学生の卒業生が指導者として来てくれていますよ。
皆さん普段は仕事を持っていますので、今日は土曜日ということで少なめですが、日曜日になると15人くらいは指導に来てくれます。
このほか、うちの団は保護者のお母さん方がすごく練習を見に来てくれるんですよ。そこでお母さん同士のコミュニケーションも生まれてきますし、コミュニケーションを取りながら、みんなで楽しくやっています。練習試合をやる時にも、ほかのチームの方から、「北町さんはいつも父兄が沢山来てくれていいね」と言っていただけるくらいです。
普段の練習や大会出場以外にさまざまなイベントなども行っているようですね。「蕨北町サッカースポーツ少年団」ならではのユニークな催しがあれば教えてください。
12月にクリスマス会があり、その時はプレゼント交換をしたり軽食を食べたりしながら楽しみます。クリスマス会は5年生が主体になって計画して、そのお母さん方が手伝ってくださるのが伝統になっていて、司会もゲームも全部子どもたちが主導で進めていきます。年度末の「蹴り納め」という行事では、「指導者 vs 6年生」の試合後にお母さんたちの手作りカレーをみんなで一緒に食べるのが恒例です。
年明けの「蹴り始め」では、「親子サッカー」として子どもも大人も一緒になってサッカーを楽しみます。この試合後はお母さん方が豚汁を作ってくれます。梅雨明けぐらいにもまた「親子サッカー」があり、この時は再びカレーです。うちの団員はみんなカレーが大好きなんですよ(笑)。
夏合宿では「肝試し」などもありますから、練習は厳しいながらも、それ以外のイベントはみんなとても楽しんで過ごしていますよ。あとイベントというわけではないんですが、“かき氷器”を団費で購入したので、コンビニで氷を買ってきてかき氷を作るというのがブームになっています。夏はもちろんですけれど、冬にも大人気ですね。以前は合宿先でお世話になっているところで借りて作っていたのですが、子どもたちがすごくそれを気に入っていたので、合宿以外でもできるようにしたんです。
大人も子どもも、みんなが楽しく活動しているというのが、うちの団の一番良いところだと思いますね。だから「受験で活動を辞めなくてはいけない」という子はいても、「辛いから辞める」という子はまずいないですね。
出場している大会の戦績についても教えてください。
色々な大会がありますが、夏の「全日本小学校サッカー大会」と、秋の「サッカー少年団大会」というのが2つの大きな大会です。うちの団は北足立南部という地域に属しており、その中には全部で80チームがあります。ここでベスト4ぐらいに入らなければ、県大会には行けません。
そこでうちは、過去10年間で5回県大会に出場しています。これはトップチームと言って、6年生が主体のチームになりますが、非常に優秀な成績だと思います。5年前の「サッカー少年団大会」では準決勝で負けてしまったのですが、県のベスト3まで行きました。これが過去10年間では最も良い戦績ですね。
練習日程について教えてください。
基本的に、土・日曜日と祝日に練習を行っています。それぞれ午前か午後の、9~13時もしくは13~18時といった具合です。試合で頑張ってもらうように前向きな意識を持ってもらうことが大事だと考えていますので、無理して毎回練習に来て、合に出ても楽しめないというよりは、家族旅行に行きたければどんどん行っていただいて構いませんし、楽しみながら長くサッカーを続けてもらえればと思っています。
そうやって楽しみながら続けて“今度試合があるから頑張ろう”という意識を持てるようになれば、試合前には全員頑張って出てきてくれるものです。
平日にも、火・木曜日の夕方については18~20時の「高学年ナイター」をやっています。これは小学校高学年の子だけが対象ですが、自由参加でミニゲームをやったりしています。
女子児童も比較的多いようですが、「なでしこジャパン」やW杯の開催なども影響しているのでしょうか?
女の子は、今は3人だけなんですが、実はなでしこブームの前から沢山いたんです。女の子でクラブチームに行った子もいますし、女性の指導者もいます。20年ぐらい前には女子だけのチームもあったくらいです。今は3人だけなので男子との混合チームでやっていますが、女の子でもどんどん参加して欲しいと思います。
「蕨北町スポーツサッカー少年団」の自慢のポイントは、ずばり何でしょうか?
やはり、“子どもたちを指導者と父兄で一緒に育てていく”という雰囲気があるところだと思いますね。
試合になれば父兄が車を提供してくれますし、指導者は全員ボランティアですし、指導者会議なども全部自腹で飲食しています。子どもたちのために、みんな一緒に、本当に一生懸命に考えて活動してくれています。もうこれは自慢と言うよりは、“感謝”ですね。本当に父兄の方々、指導者の方々には心から感謝しています。
最後に、小泉様が考える蕨北町の魅力についてお聞かせください。
私は北町にもう30年以上住んで子どもも3人育ててきましたが、コンパクトな地域に、年配の方から小さな子どもまで、いろんな年代の方が住んでいて、明るい雰囲気があると思います。蕨市は日本で一番小さな市ですけれども、コンパクトな中にいろいろが詰まっている場所が北町なんでしょうね。
もちろんうちの「蕨北町サッカースポーツ少年団」があることも魅力のひとつです。私も子どもが3人、全員少年団に入っていましたし、上の子は大学までサッカーを続けてくれましたね。ここに今来ている子どもたちにもぜひサッカーの楽しさを感じてもらって、長く続けてもらいたいですね。
もちろん、大人が暮らす環境としても素晴らしいと思いますよ。駅からも近いですし、その割には静かな環境がありますし、家族で住むには最高だと思います。
★保護者の皆さんにも聞いてみました-チームの良さ、魅力について★
★ここは「クラブチーム」とは違って「少年団」なので、やっぱり、縦のつながりがあって、上の子が下の子の面倒をよく見てくれたり、そんなところが良かったと思います。(1年生と6年生のお母さん)
★うちもそうでした。2年生から入って、上の子からいろいろなことを教えてもらっていると、子どもは自分も「そういうことをしないといけないんだ」ってことを分かるようになるんです。子どもが上の子どもたちの背中を見て育っていく、という感じです。
それから、大人同士のつながりも深くて、集まれば学校のことも話しますし、いろいろな情報交換ができますよね。こうやってグラウンドに見に来れば、家に帰ってからも子どもと話ができますし。そういう面で、子どもとのコミュニケーションも取りやすいところが魅力です。(6年生のお母さん)
今回、話を聞いた人
蕨北町サッカースポーツ少年団
団長・小泉亘(こいずみ わたる)さん
蕨北町サッカースポーツ少年団
活動場所:蕨市立北小学校 埼玉県蕨市北町2-11-6
URL:http://kitamachisoccer.web.fc2.com/
※記事内容は2014(平成26)年9月時点の情報です。
子ども・指導者・保護者が一緒になって高め合うサッカーチーム/蕨北町サッカースポーツ少年団 団長 小泉亘さん
所在地:埼玉県蕨市北町2-11-6
活動場所:蕨市立北小学校
http://kitamachisoccer.web.fc2.com/