葛飾八幡宮 宮司 持田篤史さんインタビュー

緑豊かな、心安らぐ場所を守っていきたい/葛飾八幡宮 宮司 持田篤史さん

本八幡の街並みができるよりもはるか以前、平安時代から現在地に鎮座している「葛飾八幡宮」は、本八幡を代表する名所であり、地域の人々の心のよりどころとして、広く親しまれ続けている神社である。誉田別命(ほむだわけのみこと=応神天皇)、息長帯姫命(おきながたらしひめのみこと=神功皇后)、玉依姫命(たまよりひめのみこと)の三柱をご祭神としている古式ゆかしい八幡さまで、天然記念物の「千本公孫樹(せんぼんいちょう)」や、参道の入り口にある「藪知らず」は全国的にも知られており、遠方から訪れる参拝客も数多い。今回はこの神社で宮司の跡継ぎとして権禰宜(※取材当時)を務めながら研鑽を続けられている、持田篤史さんにお話をお聞きした。

まず、葛飾八幡宮の歴史、由緒についてお聞かせください。

葛飾八幡宮 拝殿
葛飾八幡宮 拝殿

当宮は創建が平安の昔、寛平(かんぴょう)年間でして、西暦889(寛平元)年から898(寛平10)年の間に創建されましたと伝えられていますので、1100年以上の歴史がございます。京都に鎮座されている「石清水八幡宮」から御霊を勧請(かんじょう)いたしまして、この下総の国の総鎮守として、ご鎮座されましたのが始まりです。

参拝客の方からしばしば、「なぜ東京の葛飾の名前なのか?」と聞かれますが、これは非常に自然な流れでして、葛飾と言いますと、皆様は東京の葛飾区というイメージがあると思いますけれども、実は、古くは「葛飾郡」というたいへん大きな郡がありまして、東京、埼玉、茨城、千葉の4県にまたがっておりました。

葛飾八幡宮 神門
葛飾八幡宮 神門

その大きな葛飾郡の中心が、市川や船橋だったということで、昔は「西船橋」駅を「葛飾」駅と言っていたほどでして、この辺りにも、地名に葛飾という名前はよく残っております。東京都江戸川区の「葛西」という地名も、その名残のひとつですね。

その葛飾郡の中心にある八幡宮ということで、当宮は創建以来朝廷の崇敬も厚く、国司や郡司をはじめとした国民の信仰も広く集めまして、下総の国における葛飾文化や、八幡信仰の中心となってまいりました。

地域の中心ということですと、昔はさらに規模の大きな社叢に囲まれていたのでしょうか?

江戸時代の図会
江戸時代の図会

そうですね、江戸時代の図会を見ますと、当時はまだ神仏習合といって、神社とお寺が混ざっていた時代ですので、当宮の後ろ側に寺院があり、たいへん広い敷地だったようです。また、参道の両側の、今の市民会館や分庁舎の場所も境内地となっていましたし、現在は鳥居の前に踏切がありますが、昔は街道のギリギリの場所までが境内地だったようです。街道の反対側には「藪知らず」という有名な禁足地がございますが、昔はこの脇を小川が流れ、放生会(ほうじょうえ)という儀式が行われていたと言います。

古来より神様の場所というのは、地理的にも条件が良く、見晴らしの良い場所などを選んで置かれておりますので、背景に森を背負い、眼下に海を見下ろすこの場所は、神様の場所として最適だったのではないでしょうか。

ご神木の「千本公孫樹」がたいへん有名ですが、なぜこのような珍しい樹形になったのでしょうか

千本公孫樹(イチョウ)碑
千本公孫樹(イチョウ)碑

当宮のご神木は、国指定天然記念物にも選定されている「千本公孫樹」でして、樹齢が約1200年近くという、たいへんな古木になります。日本にイチョウの木が入ってきた時期が、ちょうどその頃ということも言われており、貴重な木ということになるかと思います。「千本」という名前の由来は、たくさんの樹幹が寄り添うように立っているというところからですが、これは昔、雷に打たれて半分のところで幹が折れてしまいまして、それを支えるように周りの樹幹が根を張り、固く結びつくような形で支え合い、現在の形になったと言われております。そういった形から、縁結びの信仰もあるご神木です。

樹齢はおよそ1200年。国指定天然記念物に指定されている
樹齢はおよそ1200年。国指定天然記念物に指定されている

また、イチョウの木は老木になると、枝の下のほうに乳房状のこぶができますので、その形から、これを煎じて飲むと乳の出が良くなるという信仰もございまして、昔から育児守護のご神木としても親しまれてきました。(※現在は煎じて飲むことはできません)
雷で裂けるような状態になりながら、長い間立ち続けているというだけでもたいへんな生命力ですが、ご覧のとおり、葉もたくさん生い茂り、このような樹勢を保っているというのは、御神気の賜物かと思います。

参拝に来られる方には、どのような方、どのような祈願が多いでしょうか?

日常的に多くの参拝客が訪れる
日常的に多くの参拝客が訪れる

参拝にはやはり市内の方々がいらっしゃることが多いですね。最近は神社ブームもありまして、年代を問わず、多くの方にご参拝いただいています。特に2013(平成25)年はお伊勢さんと出雲大社が同時に式年遷宮を迎えた年でしたが、滞り無く終わりましたので、それ以降、たいへん多くの方が神社に目を向けて、いらっしゃるような状況です。最近は特に、若い女性にも、御朱印巡りなどで来られる方が多くいらっしゃいますね。

駒どめの石
駒どめの石

皆様が求められるご利益としましては、やはり厄除け、開運が多いのですが、当宮は境内に源頼朝の「駒どめの石」がありますように、源氏が崇敬してきたこともありまして、武運長久、必勝祈願の方も多いです。「葛飾八幡宮」というくらいですから、「勝つしか」ということで、必勝の祈願をされるスポーツチームの方もいらっしゃいます。

そのほかですと、応神天皇様と神宮皇后様という当宮の二柱のご祭神が親子の神様になりますので、育児守護の信仰もございまして、その関連のご祈祷も多くございます。
式年遷宮が終わりまして、今は日本中の神様の神威がいよいよ発揚されている状態ですので、神社界は非常にいきいきとしております。ぜひこの機会に、ご参拝にいらしていただきたいと思います。

神事や行事についてお聞かせください。

八幡祭の様子
八幡祭の様子

当宮で行う神事としては、毎年9月に行われる「例大祭」と、3年に1度、10月行われる「八幡祭」が大きいものかと思います。特に「八幡祭」については、神輿の渡御もありまして、露店も多く並びまして、たいへんな盛り上がりとなります。今年(2014(平成26)年)がちょうど「八幡祭」の年になります。

9月15日には恒例の「例大祭」がありまして、そこから6日間のボロ市も行われます。このボロ市も、今では時代の変化もあり、店の数は減ってしまいましたが、かつては900以上の露店が並び、農具や包丁などの生活用品を売って、たいへんな賑わいであったそうです。

祭事の様子
祭事の様子

このほか、33年に一度の「三十三周年式年大祭」というお祭りもありまして、この時には、御開帳が行われ、稚児行列が出たりと、さらに盛大に行われます。次回は2017(平成29)年の4月1日からを予定しております。

地域の方が参加できる神事・行事にはどのようなものがありますか?

湯かけ祭の様子
湯かけ祭の様子

八幡宮ならではのものということですと、2月の立春後の初めての卯の日に行われる「初卯祭」がユニークかと思います。これはご祭神である八幡さまのご誕生の日に行われているものでして、湯釜にぐらぐらと湯を沸かしまして、熊笹の束でその湯をかき混ぜて、東西南北に向けて撒くという神事です。湯を浴びた人には、無病息災のご利益があると言われまして、例年、たいへん多くの方がいらっしゃる神事となっています。

同じ2月の行事ですが、節分の日にも豆まきを行っていまして、この時には地域の方がたいへん多く来られています。その他、夏越の大祓、年越しの大祓も自由参列ですから、ぜひお気軽にご参列ください。

豆まきには多くの人が参加する
豆まきには多くの人が参加する

行事以外の面ですと、当宮にはお囃子の保存会がございまして、この八幡の地に伝わっているお囃子や、十二座神楽の保存と復興のために、地域の皆様が頑張ってくださっています。そういった皆様の情熱によって、この神社が支えられているという部分も数多くありまして、有難い限りです。

昨今の本八幡の街の変遷について、どのような印象を持ちでしょうか?

近年はいろいろと再開発が進みまして、大きなマンション等も建ってきております。喜ばしいことは、この本八幡にたくさんの人が集まってきてくださって、新しい時代に向けた活力が街にみなぎっているということでしょうか。新しい住民の方が氏子に入りたいとおっしゃってくださることもありますし、子どもたちが増えて、どんどんお祭りに来てくれれば、神様もきっと喜ばれるかと思います。

拝殿正面より
拝殿正面より

そういった変化の多い街の中で、当宮は心の部分といいますか、こちらに来ていただければ、木々がありまして、緑陰の中でお休みいただいて、心身ともにリフレッシュしていただけるという部分を、担っていければと考えております。

ですので、敢えて神社としては、「普遍性」、変わらずここにあり続ける緑や、穏やかな御神気というものを、ずっと守っていきたいと考えておりますし、神職としましても、神様のお力をいただいて、皆様が健やかに、ご多幸であるようにということを、日々、ずっと祈り続けていけたらと思っております。

最後に、本八幡の魅力を教えてください。

施された装飾も美しい
施された装飾も美しい

本八幡はご存知の通り非常に交通の便が良いですし、東京にこれだけ近く、便利な場所でありながら、古くからの雰囲気を保っているということが、まずひとつの魅力かと思います。街の中心にこういった歴史のある神社があって、神様のお力に守っていただきつつ、癒しの場としても気軽に訪れられるということは、何とも素敵なことだと思います。

近くには江戸川もありますので、そういった川沿いに行くのも気持ちが良いですし、美味しいごはんのお店もたくさんあります。永井荷風さんなど文豪さんも多く住まわれていたということで、文化的な面でも素晴らしいですね。市川市の図書館は、蔵書量が非常に多いことで全国的にも有名ですし、学問や文学に浸るにも、非常にいい地域ではないかと思います。

 
 

葛飾八幡宮

宮司 持田篤史さん
住所:千葉県市川市八幡4-2-1
電話番号:047-332-4488
http://katsushikahachimangu.com/

※記事内容は2014(平成26)年7月時点の取材を元に制作しており、今後変更となる可能性がございます。

緑豊かな、心安らぐ場所を守っていきたい/葛飾八幡宮 宮司 持田篤史さん
所在地:千葉県市川市八幡4-2-1 
電話番号:047-332-4488
https://www.katsushikahachimangu.com/