シンボルツリーとともに未来へ向かってすくすくと育む/千葉市立本町小学校 西村安正校長先生


千葉市の中心街に建つ「千葉市立本町小学校」は、1873(明治6)年開校の伝統校。シンボルツリーの“一本杉”をはじめ長い歴史を物語る遺産が今に引き継がれ、校内は市街地の学校とは思えない落ち着いた雰囲気が漂っている。数々の指定・表彰を受けてきた研究校としても全国トップレベルの実績を有する同校は地域や保護者が寄せる信頼も絶大だ。今年校長に赴任された西村先生に、同校ならではの教育活動や千葉エリアの魅力について伺った。

西村安正校長先生
西村安正校長先生

明治開校の歴史を持つ市内の伝統校

――貴校の歴史や概要について教えてください。

西村先生:学校制度が整った1873(明治6)年開校の千葉市内で最も古い学校のひとつで、今年でちょうど創立145周年を迎えました。現在の千葉神社にあたる妙見寺を仮校舎に「池田小学校」として開校し、その後何度か校名を変更して、1947(昭和22)年の新学制で「千葉市立本町小学校」となって今に至っています。1960(昭和40)年代には公立の小学校では珍しく、子どもたちは私服ではなく制服で通っていたそうです。歴史がある学校なので、親子3代で通っていらっしゃるご家庭も多く、様々な場面で「私の母校です」と伺うことがあります。

学校外観
学校外観

――特色ある施設はございますか?

西村先生:体育館は、飛行機の格納施設の骨組みを移築したという独特の建物で、本校では「講堂」と呼んでいます。ステージやギャラリーが広々としていて、以前は千葉市の式典などでも使用されていました。プールの脇には、古い校舎の土台を残して築山のようにした「体育山」があり、よく子どもたちが登って遊んでいます。そのそばには、池や畑のある「パーゴラ園」があり、植物や小動物の観察ができます。また、校内には片方を調べ学習で使える2つの図書室や、多目的スペースである「わくわくルーム」、郷土資料室などがあります。

講堂:飛行機の格納施設の骨組みを移築した独特の体育館
講堂:飛行機の格納施設の骨組みを移築した独特の体育館

――本町小の子どもたちについて、どのような印象をお持ちですか?

西村先生:非常に明るくて、元気いっぱいです。あいさつの指導に力を入れていることもあり、自分からあいさつできる子どもたちが多いですね。街中の学校ですが、とても素直でのびのびした子どもたちが多く、“子どもらしい子どもたち”という印象です。

郷土資料館の展示物
郷土資料館の展示物

――児童数の推移について教えてください。

西村先生:1955(昭和30)年代の前半が多く、一番多い時で2600人を超えていました。そのため、1958(昭和33)年には鶴沢小学校と分離独立しましたが、その後少し減少しつつも平成10年前後からだいたい200人台の後半を保っています。ただ、ここ数年は学区内に新しいマンションが増えてきたためか、若干増えてきているという印象です。今年度は、特別支援学級2クラスを含む14学級で、現在309人の児童が在籍しています。

自然観察園はさまざまな植物や生物の観察ができる
自然観察園はさまざまな植物や生物の観察ができる

地域・保護者が関わる「親子遊びの集い」

――学習の特色や教育目標について教えてください。

西村先生:「人間性豊かな 自主的 創造的 実践力のある子どもの育成」を掲げ、自主・自立・自学を目標としています。すべての目標に「自」という文字が入っている通り、自分で主体的に行動するということを大事にしてきました。ですから、子どもたちはボランティア清掃などにも積極的に参加しています。また、教育研究・実践に長年取り組んできた研究校であることも本校の特色であり、度々文科省や市の指定を受け、市内県内はもちろん広く研究発表を行ってきました。毎年、その年の研究成果をまとめた研究紀要も刊行しています。

長年取り組んできた実績がまとまった研究紀要
長年取り組んできた実績がまとまった研究紀要

――特色ある課外活動や学校行事についてご紹介ください。

西村先生:秋に行われる「親子遊びの集い」では、保護者の方と子どもたちが一緒に、昔遊びや紙玉鉄砲、トールペイント、竹細工など様々な活動をしています。元PTA役員など地域の方に指導をしていただいていますが、中には10年近く学校に関わってくださっている方もいらっしゃいます。また、夏休み前の安全指導を地域の方たちがしてくださるのも、あまり他校にない活動だと思います。 さらに地域の方とコーディネーターによる放課後子ども教室「一本杉キャンパス」では、希望する児童が保護者や地域の方が見守る中、遊びや体験活動などに参加しています。

特色ある学校行事
特色ある学校行事

――進学先について特色はございますか?

西村先生:ほとんどの子どもたちが学区内の葛城中学校へ進学しています。中には公立の中・高一貫校、都内の私立校へ進む子どももいます。交通の便がよく、恵まれた教育環境にあることも、その理由だと思います。

整った教室の様子
整った教室の様子

行政機関や文化施設に囲まれた立地を活用

――市の中心地にある立地は、教育活動にどのように生かされていますか?

西村先生:千葉駅から千葉大の附属病院までという学区の中に、市役所、県庁、消防署、警察署、美術館、図書館など、たいていの公共施設があるので、地図記号のほとんどが学区内で使われているといってもいいぐらい(笑)。すべての施設が徒歩圏内にあるという非常に恵まれた立地で、課外活動などもやりやすいですね。ものの5分とかからない所には、科学館や子ども交流館を併設した「Qiball(きぼーる)」があり、ここもよく利用しています。

子ども交流館や科学館が併設されている「Qiball(きぼーる)」
子ども交流館や科学館が併設されている「Qiball(きぼーる)」

――地域や保護者との関わりや連携について教えてください。

西村先生:PTAをはじめ保護者の方々は、本当に様々な場面で学校を支えてくださっています。歴代のPTA会長の写真を掲げた応接室があり、初めて来校された方からはよく、「校長室ですか?」と聞かれるほど。歴代のPTA会長の額がきちんと掲げられている学校は、少ないのではないでしょうか。中にはまだ、毎日のように学校の門の所に立って子どもたちを見守ってくださったり、セイフティウォッチャーや先ほどの「親子遊びの集い」、安全指導に協力してくださる方もいらっしゃいます。こうした活動のように、地域、保護者のご協力がないと成り立たない部分があり、それほど大事にされている学校なのだと感じています。

本町小学校の特色体育山
本町小学校の特色体育山

子どもたちの知的好奇心を育む抜群の教育環境

――シンボルツリーである“一本杉”の歴史、込められた想いなどを教えてください。

西村先生:1965(明治40)年に現在地に校舎を移転した際、記念樹として植えられた苗木が成長したのが“一本杉”です。100年以上も大空襲や風雪などの紆余曲折に耐え、毎年青々した若葉を芽吹かせています。その生命力にあふれた姿は、「苦難に耐え 真直ぐに伸びていこう 一本杉のように」の言葉のように、古くから卒業文集のタイトルとして本町小の子どもたちに引き継がれてきましたし、「一本杉の心」として道徳教育でも使われています。“一本杉”は、在校生にとって大事にしなければいけない樹であり、卒業生にとっては心の拠り所となっているのではないでしょうか。

本町小学校のシンボルである一本杉(中央の最も高い木:ラクウショウ)
本町小学校のシンボルである一本杉(中央の最も高い木:ラクウショウ)

――西村校長先生が思われる千葉エリアの魅力について教えてください。

西村先生:子育てに関してはやはり、子ども交流館や科学館が身近にあるということが非常に魅力的だと思います。大通りは道幅が広く歩道の幅も十分あります。生活面では、行政機関が揃い交通の便がいいので、生活や通勤に便利な地域です。ちょっと足を延ばせば、海や緑豊かな公園があり、家族で週末に出かける場所もたくさんあります。 個人的には千葉港近くの高いビルから見た夜景がきれいだと思います。特に秋の夕暮れ時、高いビルから千葉港を眺めると、ポートタワーと富士山が一緒に見られてとてもいい景色ですよ。

シンボルツリーとともに未来へ向かってすくすくと
シンボルツリーとともに未来へ向かってすくすくと

西村校長先生
西村校長先生

千葉市立本町小学校

校長:西村安正先生
所在地:千葉県千葉市中央区本町2-6-23
電話番号:043‐227‐4501
URL:http://www.cabinet-cbc.ed.jp/school/es/002/
※この情報は2017(平成29)年8月時点のものです。