子どものコミュニケーション力を育む
地域に愛され、地域に支えられる小学校/さいたま市立鈴谷小学校 福島博子校長
さいたま市立鈴谷小学校
校長 福島博子先生
子どものコミュニケーション力を育む
地域に愛され、地域に支えられる小学校
与野市と浦和市、大宮市が新設合併し、さいたま市が誕生したのは2001(平成13)年。現在の中央区にあたる旧与野地区は、鎌倉時代の書物にも名を残し、室町時代から市場として栄えてきた由緒ある街だ。旧与野市の中心市街地に位置するJR埼京線「南与野」駅は、駅前にスーパーマーケットや公園が整備され、少し歩けばのどかな田園風景が広がり、都内へ通勤や通学する人たちのベッドタウンとしてまさに発展中だ。そんな中央区にある「さいたま市立鈴谷小学校」の福島校長にお話を伺った。
学校の概要について教えてください。
本校は1971(昭和46)年4月に開校し、来年度(平成27年度)で開校45周年を迎えます。開校当時は校庭に樹木がなかったため、地域や保護者の方から「自分たちの学校を育てよう」という意識が高まり、自分たちの庭から自慢の木を持ち寄って校庭に植え、石などもみずからの手で運び置いてくださったという話を聞いています。それらの若木も今では立派に育ち、子どもたちの毎日を温かく見守ってくれています。
現在1年生から3年生は3クラス編成、4年生から6年生は2クラス、特別支援学級の2クラスも加えて、500名弱の児童が元気に通っています。教育目標として「かしこく たくましく 心豊かな児童の育成」を掲げ、「知・徳・体」を子どもにも親しみやすい言葉で表現した「瞳・笑顔・汗・会話 きらきら輝く鈴谷の子」を目指す児童像としています。
力を入れている教育活動について教えてください。
今年度(平成26年度)は、さいたま市教育委員会から「国語力向上」の研究指定を受け、子どもたちのコミュニケーション力をつけていきたいという思いから、新聞記事を活用した「きらきらタイム」を設けています。朝の10分間、子どもたちが興味を持ちそうな新聞記事を担任が読み聞かせ、意見を言い合ったり感想を書いたりする活動を週1回行っています。
私は“先生が読んで聞かせる”という部分が非常に大切と考えていて、ただ文章を読ませるだけでなく人の温かみを感じる音声で伝えることに重きを置いています。地道な活動ですが、「人の意見を聞き、自分の考えも話す」「相手の気持ちを推し量る」といった基本的なコミュニケーション能力を少しでもつけられればと思っています。また月1回、「きらりんタイム」という45分間のロングバージョンを設け、ゆっくりと議題について語り合う機会を持っています。
ほかにも「すらすらタイム」、「親子読書」などの活動もされていると聞きました。
「すらすらタイム」は、同じく朝の10分を使って、算数の計算力をつける問題を解きます。この「すらすらタイム」のロングバージョン「すらりんタイム」では、一つの答えだけでなく何通りかの答えを導き出すような問題や、違った考え方で解く方法など、普段の授業ではなかなか取り組めない思考力を鍛える問題にもトライするようにしています。
「親子読書」は、冬休みなどの長期休暇の時に親子で同じ本を読み、子どもから感想を送って、そこに父母の方の感想も書き加える「読書郵便」を実施しています。本の選定は図書ボランティアの方々が積極的に行っており、なるべく保護者の方々が知らない本で、子どもも大人も楽しめるものを選んでくれています。親子で同じ本を読むことで共通の話題も増え、異なる意見の交換もできるので、これもまたコミュニケーションの一環になると期待しています。
「チャレンジスクール」についても教えてください。
地域の方々を講師に迎え、放課後や土曜日の時間を使って「昔遊び」や「工作」などの活動を行うのが「チャレンジスクール」です。秋には校庭に落ちたどんぐりを使ってどんぐりゴマを作ったりして、季節に合った活動を通じ、子どもたちと地域の方々が交流する目的があります。土曜日は学習の時間も設けており、元・教員などの地域の方が来て、子どもたちの勉強を見てくださっています。対象は2年生からですが、1年生は夏休みに「サマーチャレンジ」という名前でプレ・チャレンジスクールを開き、翌年以降に備えています。
この地域には学校の「後援会」という独自の組織があり、自治会など学校を支えサポートしてくださる方々が集まっています。「チャレンジスクール」の講師を、「後援会」の方が学校に推薦してくださるなど、とても助かっています。
地域の方々との交流も盛んなのですね。
もともと本校創立の頃から、地域の方々が木を運んで下さったりと、学校へのサポート体制がある地域です。そんな気風が今なお残り「後援会」という団体があったり、PTAのメンバーと一緒に防犯ボランティアとして登下校時のパトロールをしてくださったり、とにかく労を惜しまず学校の教育活動を支援してくださっています。
学校創立時に地域の方が樹木を提供してくださったことを受け、毎年8月下旬には「後援会」をはじめとする地域の有志の方々と全職員・保護者・児童で、木々の剪定や除草作業、校内清掃を行います。毎年この作業の後、美しく整った環境で運動会を行うのが本校の恒例行事です。
学校のWebサイトで、「週刊 鈴谷小ニュース」を毎週更新されているんですね。
給食の献立など日々の学校の様子について、職員が持ち回りで毎日学校のWebサイトで紹介しています。また、子どもたちがどんな活動に取り組んでいるか・何に頑張っているかを、毎週金曜日に校長がまとめて「週刊 鈴谷小ニュース」として発信しています。忙しい日常業務の傍らで担当するので職員の負担がない訳ではないのですが、やはり子どもたちの頑張る姿を保護者や地域の方々に伝えたいという気持ちで続けています。保護者の方も自分の子どものクラスのことばかりでなくとも、「学校の様子がよく分かる」と言ってくださる方が多く好評です。
最後にこの地区の魅力を教えていただければと思います。
この辺りは急速に都市化が進んでいる地区ではありますが、学区には「与野の大カヤ」とよばれる樹齢1000年の天然記念物に指定されている巨木があり、「享保の改革」の干拓工事で生まれた300年の歴史を持つ「高沼用水」も流れています。そのように非常に歴史ある街ながら、便利で暮らしやすい住環境が整っている地域です。地域の方々の熱心で心温まるサポートもこの街ならでは。この温かくて地元愛に溢れた土地柄と、ほどよい都会感が大きな魅力ではないでしょうか。
今回、話を聞いた人
さいたま市立鈴谷小学校
校長 福島博子先生
所在地:さいたま市中央区鈴谷5-1-1
電話番号:048-852-5675
URL:http://suzuya-e.saitama-city.ed.jp/
※記事内容は2016(平成28)年3月時点の情報です。
子どものコミュニケーション力を育む
地域に愛され、地域に支えられる小学校/さいたま市立鈴谷小学校 福島博子校長
所在地:埼玉県さいたま市中央区鈴谷5-1-1
電話番号:048-852-5675
http://suzuya-e.saitama-city.ed.jp/