基準地価が3年ぶりに下落に転じる

先日発表された「令和2年度基準地価」によると、全国の全用途平均では3年ぶりの地価下落となりました。新型コロナウイルス感染拡大後初めての大規模地価調査となった、基準地価のポイントをご紹介しましょう。

3年ぶりの下落、住宅地では下落幅が拡大

「基準地価」は7月1日時点の地価を調査したもので、1月1日時点の調査である「公示地価」と並び、公的な地価調査として注目される数値です。令和2年(2020年)の調査では、全国の全用途平均が前年比マイナス0.6%と3年ぶりの下落に転じました。それまでの下落トレンドから2018年に0.1%の上昇に転じ、2019年は0.4%と上昇の幅を拡げていましたが、2020年に再び下落したかたちとなりました。

また同じく全国商業地でもマイナス0.3%(前年1.7%)と下落に転じたほか、全国住宅地では▲0.7%(前年▲0.1%)と下落幅を拡大しています。ここ4〜5年は金融緩和とインバウンド需要を背景とし、地価上昇のトレンドが全国的に広がっていました。しかし、新型コロナウイルスによって訪日客がストップし、インバウンド需要が消滅することで、一気に状況が変化したことが浮き彫りになっています。

商業地 住宅地 全用途
全国 ▲0.3(1.7) ▲0.7(▲0.1) ▲0.6(0.4)
三大都市圏 0.7(5.2) ▲0.3(0.9) 0.0(2.1)
東京圏 1.0(4.9) ▲0.2(1.1) 0.1(2.2)
大阪圏 1.2(6.8) ▲0.4(0.3) 0.0(1.9)
名古屋圏 ▲1.1(3.8) ▲0.7(1.0) ▲0.8(1.9)
地方圏 ▲0.6(0.3) ▲0.9(▲0.5) ▲0.8(▲0.3)
地方圏中核4都市 6.1(10.3) 3.6(4.9) 4.5(6.8)

▲はマイナス、( )内は前年数値。中核4都市は札幌、仙台、広島、福岡

 コロナ発生後、1月以降に状況が変化

土地取引の状況が、新型コロナウイルスの影響で今年1月以降に一気に変化した様子は、2020年1月1日時点の地価を照査した「公示地価」と重なる1605地点の調査ポイントを比較することで鮮明になります。
国土交通省から発表された資料によると、コロナの影響を大きく受けた商業地は、昨年7月の「基準地価」から今年1月の「公示地価」の間に2.5%上昇したものの、コロナの影響があった今年1から7月の期間では1.4%の下落へと変化したことが明らかになっています。
同じく国土交通の資料には、前半(公示地価)と後半(基準地価)で変動率が大きく変化した商業地がピックアップされています。札幌、京都、名古屋、大阪、福岡、那覇などインバウンド需要が蒸発した影響を強く受けた地域で、地価動向にも激震が走ったことがうかがえます。

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首都圏住宅地にも地価下落の波は広がる

地価下落の動きは首都圏の住宅地にも影響が及んでいます。マップは住宅地の地価変動率を色別に示した図ですが、一見して下落を表すブルーの面積が増えていることがわかります。前年(令和元年)のマップには東京23区に5%以上の地価上昇を示すピンクのエリアがあり、その周囲へドーナツ状に地価上昇エリアが広がっていました。しかし今年(令和2年)のマップではピンクのエリアがなくなるとともに、全体的にブルーのエリアが増えています。

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●首都圏(各地域の地価変動率は下記の通り。( )は前年
【東京都】住宅地 0.2%(2.5%) 商業地1.3%(6.8%)
【神奈川県】住宅地 ▲0.9%(0.1%) 商業地0.2%(2.5%)
【千葉県】住宅地 ▲0.2%(0.3%) 商業地1.4%(2.8%)
【埼玉県】住宅地 ▲0.3%(0.7%) 商業地0.0%(1.8%)

地価は下落基調に転じたことが明らかになりましたが、全体が同じ動きを見せているのではありません。都心商業地や観光地などでは下落幅が大きな場所もありますが、マイホーム需要に伴う人気住宅地では上昇が続いている場所もあります。

この先も、ウイズコロナ時代の新しい生活様式への移行が進めば、住宅地としての人気エリアや土地需要にも変化が起こる可能性があります。地価の動き、住宅市場の動きもしっかり把握しながら、マイホーム購入計画を進めてください。

       







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