イタリアンレストラン アランチーニ
「桜上水」駅から北へまっすぐ進み、甲州街道を反対側へ渡った辺りで右手を見ると、街道沿いのケヤキの枝の下にイタリア国旗が見える。この旗を掲げる店の名前は「アランチーニ」。昼は気軽な“パスタ屋さん”感覚で使われており、夜は少し高級なトラットリアスタイルの店となる。いずれにしても「腕利きのシェフの料理をリーズナブルに楽しめる」ということで、近所の人々を中心に評判を集める店だ。
店の誕生は2009(平成21)年ということだが、オーナーシェフの笠原洋倫さんはそれ以前、地方のリゾート地でレストラン兼ペンションを営んでいたそうだ。
笠原シェフの出す料理は、その時代から基本的な部分は変わっていない。「洗練」や「オシャレ」という言葉とは少し距離を置き、「美味しいものをたっぷり食べてほしい」ということに専念している。そのためには、良い素材を低価格で仕入れ、小さな店で自分だけの手で調理し、価格も抑えなければいけない。経営的には大変な部分もあるはずだが、シェフは「それでもお客さんが笑顔になれるなら」手間や努力を惜しまない。その姿勢が、多くの常連客を虜にしているのだろう。
料理は昼夜で完全に分かれており、昼は基本的にパスタのみ。税別800円のペペロンチーノから千円台前半の手の込んだパスタまで、十数種類のパスタメニューを提供している。プラス料金でドリンクやグラスワインもセットできるとあって、ゆったりと美味しいパスタを楽しみたいという層に人気が厚い。ディナー向けに仕込んでいる前菜の盛り合わせや、ケーキなども希望があれば格安提供してくれるそうだ。
シェフの本領が発揮されるのはやはり夜。トラットリアなのでコース、アラカルトいずれにも対応してくれ、コースは税抜3,800円と5,000円の二本立て。もちろん予算に応じて作ることもできるそうだが、「うちはボリューム満点だから、それ以上にしても食べきれないよ」とシェフは笑う。二つのコースの違いは、前者がパスタかピザをメインにしており、後者がパスタとメイン料理の両方が付き、前菜もグレードアップしているという点だ。
席数が少ない店なので予約を入れるのがベターだが、席が空いていれば当日でもコース料理を頼めるのが嬉しいポイント。かしこまった記念日の席でも、急に外食したくなった時でも、会社帰りにふらっと寄りたい時でも、あらゆるシーンに対応してくれる懐の深さがある店だ。こういう使い勝手の良さ、小回りの良さは、熟達した腕をもつシェフの店ならではのものと言える。
ワインはイタリア産ものだけを扱っているそうで、しっかりとテイスティングをして、自分の納得したボトルだけを厳選して入れている。グラスもリーデルの最高級グラスを使うなど、ひそかにこだわっている点も垣間見られるが、そこをひけらかさないところが笠原シェフの魅力だ。
美味しい料理をたっぷり食べて笑顔になり、会計の時に「え?こんなに安くていいの?」とまた笑顔になる。「アランチーニ」はそういうタイプの、知る人ぞ知るタイプの店である。そんな話だけを聞くと「隠れ家レストラン」なんて言葉が出てきそうだが、この店があるのは甲州街道沿いの、駅からも徒歩すぐの目立つ場所。「ずっと気になっていたけれど行けなかった」という人は、是非一度足を運んでみてほしい。
イタリアンレストラン アランチーニ
所在地:東京都杉並区下高井戸3-1-4 2F
電話番号:03-5357-8222
営業時間:11:30~14:30(14:00L.O)、18:00~22:00(21:30L.O)、土曜・日曜日、祝日のランチタイムのみ12:00~15:00(14:20L.O)
定休日:木曜日、不定休あり
http://www.arancini.biz/