ラ プチ マルシュ(LA PETITE MARCHE)
東中野駅から中野駅側へ、線路沿いの道を歩くこと3分ほど。桜並木沿いに突然現れるモダンなコンクリート建築は、レストラン「ラ プチ マルシュ」。この界隈では比較的珍しい、本格派のフランス料理店である。
オーナーシェフは子どもの頃、転勤族だった父親の影響でいろいろな土地に住んだという。その中でも比較的長く住まい、思い入れの深い街がここ、東中野だったそうだ。シェフを目指した若き日のオーナーは、19歳で単身渡仏。ベルサイユの高級ホテルにある、星付きのグランメゾンに飛び込んで10年間働いた。そしていざ帰国し、自分の店を持とうと思った時、思い描いたのが東中野の地だった。中でも桜並木があるこの場所が特に気に入り、私財を投じて、フランスのレストランをイメージした、ファッショナブルな店を作ったのだという。帰国が29歳、開店が2011年。まだ30代半ばという、若きシェフが営む新進気鋭の店である。
モダンアートのような建物だが、中身も決して負けていない。1階、2階はそれぞれ美しい内装で整えられ、入ると襟を正される思いがする。もちろん、料理もサービスも、本国のグランメゾンで鍛えられたものをそのままに再現。もてなしの席にふさわしいグランメゾンの品格を備えている。ただひとつ違っているのは、「格段に値段が安い」ということだろう。
ランチのコースが2千円台から、ディナーのコースも5千円ほどから頂くことができる。都心の同じクラスのレストランであれば、倍以上の価格も当たり前だろう。一方で料理には一切の妥協が無く、ブランド食材や産地直送など手間やコストに直接影響する仕入れ方法は避けつつ、そこで生まれた時間やコストを、手間と品質向上に注いでいる。「日本人の価値観ではなく、フランス人の価値観で作っている」とは、同店のソムリエとマネージャーを兼務する荻原氏の言葉だが、全くその通り。すべては「来て良かった」という、お客の満足感のために考えられている。