ら・すとらあだ
中野坂上の交差点から、青梅街道沿いに環七方向に徒歩5分ほど歩いた住宅地の中。地図を頼りに細道を歩いていくと、看板も表札も無い2階建ての民家に行き着く。ここは、蕎麦好きの間で密かに人気を集めている蕎麦屋「ら・すとらあだ」。「ストラーダ」はイタリア語で「道」を意味する言葉だが、店主である日比谷吉弘氏が開店以前から続けてきたブログが、その名の由来となっている。
もともとは警備関連の仕事を10年余りやっていたという日比谷氏。20代だった当時は“自分が本当にやりたいこと”がまだ見えておらず、「30歳ぐらいまでには何とか、本当にやりたい道を見つけたいと思っていた」ということだ。
そんな彼の一番の趣味は旅行。貯めた資金で時折海外旅行に出ていたそうで、ある時ヨーロッパに旅に出た際、出会った現地の人々やツーリストが、それぞれの国に強い愛着を持ち、自国の文化を堂々と語っていたことに、大変驚いたのだという。「なのに、自分は日本のことを何も知らない」という衝撃が、蕎麦屋への転身の契機になった。
帰国後、日比谷氏はいろいろな日本の伝統文化に関する物事に積極的に触れ、日本人としてのアイデンティティを磨いていった。その中で特に琴線に触れたのが蕎麦打ち。「自分の身体ひとつで、かなりの部分までできるわけじゃないですか。それが面白いし、自分の肌に合うなって思ったんです」。
こうして、蕎麦屋への道を見出し、全国を回って名店を食べ歩く日々を送った日比谷さん。その中で出会った幾つかの店には、実際に修行に入り、蕎麦屋としてのイロハを学ばせてもらった。そして2012(平成24)年に「ら・すとらあだ」を開店。「どうしても戸建ての物件が良かった」ということで、この住宅地内に店を構えることになった。