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江戸前鮨や和食を通じて、店主と“無言の対話”が共有できる名店

鮨いち伍

鮨いち伍
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「鮨いち伍」は、京王線「千歳烏山」駅から徒歩約7分の場所にある江戸前寿司と和食、そしてお酒を楽しめる店である。鮨だけでなく、和食店での修業経験を持つ店主・樋口氏の「お任せコース」は、季節や仕入れに合わせ、その日最高のオススメ食材を使った、焼き物や煮物、寿司、椀物、デザートまでをフルコースで味わうことができる。

鮨いち伍
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店内はカウンター8席で、奥に4人掛けのテーブル席があるが、荷物置き場として利用しているようだ。荷物を足元に置かずにゆったりと座れるし、カウンター席で店主の職人技を眺めつつ、食事できるのも嬉しい。

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アルコール類のバリエーションも豊富で、その日の日本酒は「掌」「日高見・弥助」「〆張鶴」「瀬祭」「黒龍」というラインナップ。そのほか、焼酎、和リキュール、葡萄酒「GYOTAKU DRY白」「Sparkringロジャーグラート」も用意されていた。アルコールメニューの片隅に「店主おすすめのお酒あります」という文字を発見したので注文したところ、栃木の酒蔵で少量しか流通していない純米大吟醸「羽水」が供された。羽のように軽く、水のように透明で、上品な質感が特徴だという。とくに銘柄にこだわりがない場合は、「日高見・弥助」がオススメだそうだ。

鮨いち伍
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お通しの後、マコガレイと鮪、つぶ貝のお造りから「お任せコース」がスタートし、焼き物は「えぼ鯛の幽庵焼き」。えぼ鯛の皮の芳ばしさにお酒が進む。季節的な演出か、温かみのある陶器を中心とした器一つひとつと料理の調和も楽しむことができる。器も店主にとってこだわりの品で揃えられているそうだ。

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続いて、「ホウボウと筍の煮物」は染付の器に盛られ、春の訪れを味覚から体感させてくれる逸品。若竹煮のワカメもなめらかで、決して脇役に甘んじていない。

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酢の物は、「白魚とウドと菜の花の酢の物」。程よい酸味と、白魚の食感のコントラスト、春の野辺に咲き乱れる菜の花を連想させる黄色い器も印象的だ。とにかく、その演出がにくい。

鮨いち伍
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酢の物の後は、いよいよ旬のネタを職人技と丁寧な仕事で仕上げた寿司のステージとなる。カウンター席から眺めていると、店主のもてなしの心とこだわりが伝わってくるようだ。包丁で一つひとつのネタを引く様子や、小骨を毛抜きで抜いていく手さばきに見とれ、時間を忘れる。

その日の流れは、まずさっぱりとしたスミイカから始まり、これぞ江戸前と言いたくなるような赤身のヅケ、どちらかというと大トロに近い中トロ、そこに細かく包丁を入れ口当たりと食感をさらに際立たせたミル貝。

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さらに、酢でネタの旨味を引き出したしめ鯖、大ぶりの牡蠣、バフンウニ、アナゴと続く。並行して、鰹と昆布の出汁の椀物も供された。3時間煮込まれた昆布出汁は、鰹の強さに負けていない。また、牡蠣を味わった際、その食感と味わいを引き出している調理法がどうしても気になったので、寡黙な店主にうかがわずにはいられなかった。牡蠣が半生なくらいに軽く煮て、牡蠣だけを一旦鍋から出し、その煮汁を再度本体に戻すという、見えない部分で相当の手間暇をかけて、あの味と食感を実現しているそうだ。そんな店主の隠れた“もてなしの心”とこだわりが、料理から伝わってくるのだ。

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カステラのような卵焼きは、ハモと芝エビのすり身が入っている。形はないけれど、卵焼きの味わいに深みを与えている。同店の寿司や料理にはそんな“隠れた職人技”がふんだんに取り入れられており、カウンター越しに向き合って、店主との“無言の対話”も楽しめる空間となっている。

鮨いち伍
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(2018年3月取材)

鮨いち伍
所在地:東京都世田谷区粕谷4-18-7 
電話番号:03-3307-5591




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