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2017(平成29)年度から新局へ。「こども・若者未来局」インタビュー

2年連続で「待機児童ゼロ」も実現した、相模原市が取り組む子育て支援政策/相模原市こども・若者未来局インタビュー

神奈川県相模原市は東京都の八王子市、町田市に接するビッグタウン。2010(平成22)年度からは政令指定都市になり、独立性の高い行政のもとでさまざまな取り組みが行われている。保育関連事業や子育て支援事業についても精力的に新しい施策が打ち出されており、2015(平成27)年度から2年連続で「待機児童ゼロ(※)」を達成している。そこで今回は、子育て関連事業を担っている「相模原市役所 健康福祉局 こども育成部(取材当時の名称)」から参事(待機児童対策担当)の榎本哲也さん、「こども青少年課」課長の馬場博文さん、「南子ども家庭相談課」課長の佐久間貴子さんに、相模原市の子育て支援施策についてお話を伺った。

馬場博文さん(写真右)、佐久間貴子さん(写真中央)、榎本哲也さん(写真左)
馬場博文さん(写真右)、佐久間貴子さん(写真中央)、榎本哲也さん(写真左)
相模原市子ども・子育て支援事業計画
相模原市子ども・子育て支援事業計画

――「こども育成部」は2017(平成29)年4月1日から「こども・若者未来局」になるそうですね。新しい部署の事業内容についてお聞かせください。

馬場さん:従来の「こども育成部」の事業分野に、これまで保健所の管轄だった「母子保健」の分野と、行政的には「療育」と呼んでいる部門(障害をお持ちでまだ判定が出ていない、小さなお子さんに関する部分)が加わって新局に再編されます。既存の内容を、さらに拡充するというイメージです。今回の組織変更については、各組織の目的や役割をより明確にするということで取り組んでおります。今後は少子化対策も非常に重要なテーマになってくると考えておりますので、若い世代の方が、結婚や子育てに対して夢や希望が持てるような支援をしていきたいというメッセージを「こども・若者未来局」の名に込めています。

新たに加わる母子保健についてですが、妊娠、出産、子育て期に至るまでの相談や手続きを、ワンストップで、一つの窓口で対応していくということを重視しました。また、待機児童の対策や学童(放課後児童クラブ)、子どもの貧困、虐待といった課題に対しても、横断的に総合的に対応していく必要がありますから、経済面、教育面、生活面についても、幅広く対応できるように、この新しい部署が総合的な窓口となって、旗振りをしていければと考えています。

――では、具体的に各課でどのような取り組みをされているのかお聞かせください。

榎本さん:保育課では、保育所等の待機児童対策として、民間保育所等の設置促進や、現在の「こども家庭相談課」(平成29年度からは「子育て支援センター」に改編)での保育所等の利用相談、入所保留となった方への他の保育所等への案内業務への支援のほか、民間の保育所や幼稚園への運営支援、市立の保育所や幼稚園の管理運営などを所管しています。

保育所等の利用相談は、子育て中の市民の皆様にとっては、最も身近な問題かと思いますので、まずは「こども家庭相談課」(平成29年度からは「子育て支援センター」)にご相談いただければと思います。

――では続いて、「南こども家庭相談課」について教えてください。

佐久間さん:「こども家庭相談課」は市民の皆様のご相談を直接お受けする窓口で、各区に配置されており、「南こども家庭相談課」は南区を担当エリアとしています。主に保育所の利用相談、児童虐待対応、療育相談業務を行っておりますが、2017(平成29)年度からは、母子保健の分野も新たに加わり、妊娠・出産期から子育て期までワンストップで支援する「南子育て支援センター」となります。もし、子育てについてどの部署に、どんな風に相談すればよいのかわからないという時には、まず、当センターに頼っていただければ、お話を伺いながら、そのお悩みを紐解いていくようなことができるのかと思います。

相模原市役所の外観
相模原市役所の外観
地域の中で子育てを手伝う制度がある
地域の中で子育てを手伝う制度がある

――相模原市は「待機児童ゼロ(※)」を実現し話題となっているそうですが、その要因と、今後残された課題について教えてください。

榎本さん:2015(平成27)・2016(平成28)年度と、2年連続で「待機児童ゼロ(※)」を達成させていただきました。

まず実現できた要因ですが、もともと市内には需要の高い地区が偏在しています。南区で言うと「相模大野」駅周辺、「古淵」駅周辺などが保育需要の高い地域です。相模原市では子ども・子育て支援事業計画に基づき、入所希望が多い地域を中心に保育所等の整備を進め、受入枠の拡大を図ってまいりました。その成果が出たものと考えております。

また、各区のこども家庭相談課に配置している保育の専門相談員である「すくすく保育アテンダント」の活躍によるところも大きいと考えております。こちらは保育所等の利用相談や入所が保留になった方に対して他の保育所などをご案内する仕組みです。こうしたきめ細やかな相談体制を敷いていることも、功を奏したのかと思います。

課題としては、国が定義する「待機児童」にはカウントされない入所保留者をいかに減らしていくかということと、受入枠の拡大とともに保育士の確保など更なる保育の質の確保・向上を図っていくことが求められていると思っています。

――子育てにかかる実際に多い相談内容について教えてください。

佐久間さん:当課では「こども家庭相談員」がご相談に対応しております。「離乳食に何を食べさせたらいいのか」「子どもがいじめにあったらどうすればいいのか」など、本当にさまざまな相談が寄せられます。まずは相談員がお話を伺いますが、より専門的な回答が必要となった場合、専門職へつないでいます。相模原市の子育て事業は、「あなたの子育て 応援します」がスローガンになっています。悩み事があったら些細なことでも電話、窓口でお気軽にご相談いただければと思います。

馬場さん:それから、今は核家族化が進んでいますから、小さな問題でもより表面化しやすくなっています。子育てならぬ「孤育て」と言われることもあるように、地域の中で孤立し、子どもたちもその影響で親以外の大人と接する機会が減っていますし、親が親として子どもと一緒に成長していく環境も厳しいものとなっていると感じています。また小さな子だけではなく、中高生でもスマホやSNSが普及したことにより子ども本来の姿が見えづらくなっています。そういった社会背景があるからこそ支援センターの仕組みを強化し、若い世代の方、子育てに悩まれた方にはぜひ、市を頼っていただきたいと思っております。

市内の子どもセンター
市内の子どもセンター

――相模原市では「ふれあい親子サロン」という企画を定期的に実施しているそうですね。これはどのようなものでしょうか?

馬場さん:「ふれあい親子サロン」は市内24か所にある子どもセンターなどを活用して開催して、月に1回、専門のスタッフが来所し、育児相談や栄養相談を行います。また絵本の読み聞かせといった企画を、地域の民生委員の方と連携しながら行っています。2015(平成27)年度の実績で言いますと、27か所で合計297回開催し、のべ約25,000人弱の方にご参加いただきました。市内4箇所にある「地域子育て支援拠点」では平日の午前10時から午後3時まで常時開催していますので、気軽にいつでもお越しいただけるかと思います。

様々な子育て支援が充実している
様々な子育て支援が充実している
子どもの成長に合わせて情報提供をしている
子どもの成長に合わせて情報提供をしている

――相模原市では子育て支援に関連する情報提供を積極的に行われているそうですね。具体的な取り組みについてお聞かせください。

馬場さん:情報提供には力を入れておりまして、2016(平成28)年度から始めた「さがみはら子育てきずなメール」がございます。これは妊娠期から子どもが3歳になるまでのご家庭を対象に、子育てに関するアドバイスや情報提供を行うメールマガジンで、お子さんの年齢に合わせて課題になっていくことや、その適切な対応の仕方、栄養や保健に関するアドバイスといった内容のものが多いですね。また「相模原市子育てガイド」という冊子を作って、市内に転入される方や母子手帳を交付する際などにお渡ししています。

情報提供にも積極的に取り組んでいる
情報提供にも積極的に取り組んでいる

――市民の相互扶助の仕組みとして、「ファミリーサポート事業」というものを行っているそうですね。

馬場さん:「ファミリーサポート事業」は、2002(平成14)年度から市の社会福祉協議会と連携して取り組んでいて、市民の方々の相互の支援を、行政が仲介して行うものです。内容はお子さんの保育園への送迎、見守りといったことが多いですね。2017(平成29)年度からは年会費を無料にし、会員数を増やすとともに、さらに便利にご利用いただけるようにいたします。この事業は、市民が相互に支え合うという仕組みですから、「安心・安全」の担保を重視しています。事故のないように心がけておりますし、利用者同士の事前のマッチングもしっかり行うようにしています。

子どもセンターでの支援も充実している
子どもセンターでの支援も充実している

――「さがみはら子ども応援プラン」について、現在の進展状況について教えてください

馬場さん:これは「相模原市こども・子育て支援事業計画」という2019(平成31)年度までの5年計画の総称なのですが、保育所の待機児童などの解消なども含め、計画的に、適切に対応できるように定めているものです。おおむね順調に進んでおりまして、2017(平成29)年度は中間年になりますので、一度これまでの事業について検証をいたしまして、さらに見直しをしたうえで、充実させていく予定です。

――最後に、相模原市南区エリアの子育て環境の魅力について、それぞれのご意見をお聞かせいただければと思います。

佐久間さん:南区は東京方面でお仕事をされている親御さんが多い地域で、転入出についてもほかの地区に比べると多いと認識しています。転入して来られて何か困った時には、まずは、私どもの「子育て支援センター」にお越しいただければと思います。保育所の入所については、現在南区が一番の激戦区となっていますので、そのご家庭のニーズにあったご利用可能な保育所を、「すくすく保育アテンダント」を通してご案内をしていきたいと思っています。

南区の環境としては、公園や施設がたくさん整備されていますし、子育てをするにも、生活をするにも、快適な地域かと思います。その素晴らしい環境の中で、安心してお子さんを育てられるように支援を行うのが私どもの役目ですので、職員はいつでも、一丸となって、「子育てをする方を応援したい」という気持ちで頑張っています。そういった部分も、街の魅力につながっていければ良いな、と思っています。

榎本さん:私もやはり、「住んで良かった」と思っていただくには、「仕事と家庭の両立ができる」という部分が大切だと思っていますので、保育施設や児童クラブなどの受け入れ枠を十分に確保する中で、並行して、「保育の質の確保」に努めていきたいと考えておりまして、それが車の両輪のように回っていく中で、どの方からも住みたいと言っていただける、「選ばれる街」になっていければ良いな、と思っております。

また自宅で子育てをされている方も沢山おられますので、そういった方々についても、「住んで良かった」と思っていただけるような施策を進めていきたいと思っておりますし、それが街の魅力になっていけば、と思っております。

馬場さん:私は、南区は相模原市の中でも都市化が進んでいる地域ですので、市内でも最も「円熟」している地域だと思っています。地域の方々からお話を聞いている中でも、南区の方々については特に、地元の方々が子育ての支援に熱心で、今後もいろいろな取り組みが、地域の力によってなされていくとだろうと期待しています。行政としても、地域の中の社会資源を活用しながら、行政と地域が一緒なって子育て支援を考えていくような体制を作っていきたいと考えております。

南区は特に若い世代の方が多く住まわれており、次世代を担う若者が集まる学校なども多い地区です。今後はそういった方が主役になって、街の方々と連携しながら、より良い、より住みやすい南区にしていただけたら良いなと、期待しています。

南区憩いの場の境川
南区憩いの場の境川
安心して遊べる鹿島台公園
安心して遊べる鹿島台公園

(※)保育所等利用待機児童とは、調査日時点において、利用申込書が提出されており、保育を必要とする要件に該当しているが、利用していない児童です。ただし、以下の児童については、厚生労働省の「保育所等利用待機児童の定義」に基づき待機児童数に含めていません。
(1) 市の単独保育施策において保育されている児童(相模原市認定保育室、一時預かり(特定保育型))、幼稚園の一時預かりを利用している児童
(2) 1園のみを希望又は他に利用可能な保育所等があるにもかかわらず、特定の保育所等を希望している場合
(3) 主に自宅で子どもを保育しながらインターネット等により求職活動を行っている場合

今回、話を伺った方

相模原市役所

相模原市健康福祉局こども育成部
参事(待機児童対策担当)榎本哲也さん(写真左)
相模原市健康福祉局こども育成部こども青少年課
参事兼課長 馬場博文さん(写真右)
相模原市健康福祉局こども育成部南こども家庭相談課
佐久間貴子さん(写真中央)

※この情報は2017(平成29)年3月時点のものです。

2年連続で「待機児童ゼロ」も実現した、相模原市が取り組む子育て支援政策/相模原市こども・若者未来局インタビュー
所在地:神奈川県相模原市南区 

相模原市南区のitot



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