2025(令和7)年1月24日に「相模原の未来に触れ、体験するプレスツアー」が実施されました。リニア中央新幹線の停車駅ができることで注目されている相模原。

着々と工事が進んでいる現場を見れば、未来はそう遠い話ではなく、すぐ近くまで訪れているという実感を抱かずにはいられません。そして今回は、“リニア中央新幹線以外の相模原の未来”についても触れてきました。

橋本駅周辺のまちづくり、リニア中央新幹線「神奈川県駅(仮称)」工事現場視察

リニア中央新幹線神奈川県駅(仮称)の建設現場
リニア中央新幹線神奈川県駅(仮称)の建設現場

JR横浜線・相模線・京王相模原線を利用できる「橋本」駅は、1日あたりの乗降客数が20万人を超えるターミナル駅です。駅北口の再開発により街並みが整い、現在では市内における中心市街地のひとつに数えられるようになりました。

一方の南口は、北口とは違った表情を持ちます。数年前まで駅近くに「神奈川県立相原高等学校」があり、周囲は低層階の住宅が広がっているなど最適な土地利用の観点では課題がありました。しかし、同校の移転をきっかけにリニア中央新幹線駅の設置が決定。畜産科学科のある特殊性から広い敷地が確保されていたため、駅前には規模の大きな空地ができました。

リニア中央新幹線神奈川県駅(仮称)の建設現場
リニア中央新幹線神奈川県駅(仮称)の建設現場

また南口は、リニア中央新幹線駅ができるだけでなく、一帯の整備が検討されています。“リニアでつながる一歩先の未来を叶える橋本”をコンセプトに掲げた「相模原市リニア駅周辺まちづくりガイドライン」によると、駅まち一帯牽引ゾーン・広域交流ゾーン・複合都市機能ゾーン・ものづくり産業交流ゾーンの設置が検討されています。

工事の進捗等を丁寧に説明していただいた
工事の進捗等を丁寧に説明していただいた

毎日の食事から学ぶ、相模原市のSDGs給食

2025(令和7)年1月を食品ロスゼロ達成月間と位置づけている相模原。今年度は給食残渣の飼料化事業を実施している市内9つの小学校で、食品ロスの専門家を招いての出前授業や、リキッド発酵飼料「エコフィード」で育った豚「優とん」を給食で提供するなどし、SDGsへの理解を促しています。

市長と一緒に食事をする子どもたち
市長と一緒に食事をする子どもたち

今回のプレスツアーでは、「相模原市立中央小学校」にて、前述の「優とん」が使われた給食をいただきました。「優とん」を育んだ「エコフィード」とは、調理過程で発生した野菜くずや児童の食べ残しを回収し、処理施設で破砕・殺菌・発酵処理された糊状の飼料のことです。

 SDGs給食の提供準備
SDGs給食の提供準備
SDGs給食(「優とん」を使った肉うどんや春菊とチーズの蒸しパンなど)
SDGs給食(「優とん」を使った肉うどんや春菊とチーズの蒸しパンなど)

飼料化に向いていない食品もありますが、日々何気なく口にしている食材に意識が向かうよい機会になると思います。牛乳についてもパックの再利用だけでなく、ストローレスパックへの変更も実施しています。ストローは、ついつい慣習的に使用してしまいますが、飲むために欠かせないものではありません。これまで意識していなかったことに意識が向くことで新鮮な気づきが生まれます。

ストローを使わずに飲める牛乳
ストローを使わずに飲める牛乳

「相模原」駅周辺のまちづくりと、地域交通の充実に向けた次世代モビリティ

当日は「相模原 SDGs EXPO」のメディア公開デーということで、「相模総合補給廠一部返還地」にて次世代モビリティ体験のイベントも開催されました。

空飛ぶクルマ
空飛ぶクルマ

市制施行70周年を迎えた相模原ですが、少子高齢化により、主にドライバーやインバウンド需要に対応する人材の不足が予想され、将来的な人口減少についても対応していく必要があります。相模原は「橋本」駅、「相模原」駅周辺の開発や、中山間地域の自然環境を生かした観光振興など大きな可能性を秘めています。30年後には、市制施行100周年を迎えますが、その時、街と社会がどのようになっているかを考える必要があり、圏央道や中央新幹線といった広域交通ネットワークを基盤に、次世代モビリティの活用による地域交通の充実に向けた検討を進めています。

会場で、最も多くのメディア関係者が集まっていたのは“空飛ぶクルマ”を展示公開している株式会社AirXのブースでした。垂直離着陸ができるため、少し広めの庭があれば一般住宅に置いておくことも可能です。価格は高級自動車よりも高く、セスナ機よりは安いようなイメージでしょうか。

EVジェネシス株式会社のブース
EVジェネシス株式会社のブース
曲がる太陽電池を搭載した三輪EV「3 RUOTA(スリールオータ)」
曲がる太陽電池を搭載した三輪EV「3 RUOTA(スリールオータ)」

他には、ペダルを漕ぐことなく走行できる電動サイクル「glafit(グラフィット)」、歩行領域モビリティ「COMOVE(コモビ)」のOpenStreet株式会社、燃料電池自動車とバッテリー式電気自動車を展示している神奈川トヨタ自動車株式会社、電気自動車の株式会社ホンダカーズ神奈川西、そして電配用バッテリー1台で600台ものスマートフォンをフル充電できるなど、災害時に活躍する「リン酸鉄リチウムイオンバッテリー」と小型EV三輪車「スリールオータ」のEVジェネシス株式会社のブースもありました。

「FUN+TECH LABO(ファンタステックラボ)」が取り組む、“未来のよりよい暮らし”の実現

ツアーの最後に訪れたのは、リニア中央新幹線「神奈川県駅(仮称)」の工事現場すぐ近くに拠点を構える「FUN+TECH LABO(ファンタステックラボ)」です。2024(令和7)年3月25日に開所した同施設では、“中央新幹線沿線都市の価値向上”を目指すJR東海が、イノベーション創出促進に取り組んでいます。

FUN+TECH LABOの施設外観
FUN+TECH LABOの施設外観

テクノロジーではなく、ファンタスティックの“FUN”が加えられていますが、これは「東京大学」副学長の渡辺俊也教授のアドバイスにより、技術が先行し独り歩きしてしまうことなく、市民にとって“よりよい暮らしにつながるかどうか”を大切に取り組むべきとの言葉から付けられたものです。

FUN+TECH LABOの取り組みを説明するスタッフの方
FUN+TECH LABOの取り組みを説明するスタッフの方

ここでは、オフィスを利用する団体を中心に、市民をはじめ多くの方がイノベーションと感じられる実証実験や社会実装に向けた取り組み、また誰もが参加できる体験型のイベントなども開かれています。

輝かしいだけの未来を思い描くことは誰でもできますが、現実的な未来を見据え、社会課題に取り組み、乗り越えていくためのさまざまなアプローチを今回のツアーを通して知ることができました。

ライター:飯田秀康

神奈川県出身。大学卒業後、出版社勤務を経て渡独。「Kleines Sinfonisches Orchester(Collegium Musicum Berlin)」に参加しながら、現地滞在中よりライターとして活動を開始。帰国後はライター・フォトグラファーとして活動し、現在は4歳から続けているバイオリンの指導者として教室も運営。趣味は旅行、食べ・飲み歩き、写真撮影、音楽鑑賞、古墳・史跡めぐり。
※この情報は2024(令和6)年1月時点のものです。