多摩地区最大規模のコンベンション施設計画などが進む、八王子駅北口エリア

2017年8月17日

JR「八王子」駅JR「八王子」駅

JR「八王子」駅北口を出て右手側に歩いて100メートルほど、「京王八王子」駅から見て南側に広がる広い敷地は、2017(平成29)年夏現在更地となっており、次の開発を待っている。この場所でこれから行われようとしているのは、東京都が進める「(仮称)産業交流拠点施設(コンベンション施設)」の整備と、その周辺地域を含み、賑わい・交流・憩いをコンセプトとする「旭町・明神町周辺まちづくり構想」で掲げるまちづくり。このなかでは都市型広場も計画され、ビジネスマンも一般市民も広く活用しやすい、新しい「賑わい拠点」の誕生が期待されている。
今回は八王子市側でこの開発に携わっている、八王子市市役所拠点整備部中心市街地政策課と中心市街地整備推進課のご担当者にお会いし、開発の概要と、周辺の市街地活性化政策についてお話を伺った。


宿場町、織物のまちとして栄え、ショッピングタウンや学園都市など多彩な面をもつ街

ご担当者:八王子市は面積が186.38平方キロメートル、都内で2番目となる大きな都市です。人口は2016(平成28)年の12月末時点で56万3228人、こちらは都内で6番目の規模の都市です。また、都内唯一の「中核市」で、都内で市に移行した自治体のうちでは、東京市に次いで2番目に市になった都市です。市としての歴史も長く、今年がちょうど市制施行100周年となります。

街の特徴としましては、江戸時代に甲州街道の宿場町として発展したことが基礎になっており、それ以前にも北条氏の城下町として栄えていました。かつては甲州街道沿いの、横山・八日市・八幡といった地区が賑わいの中心でした。明治時代以降は織物の街として発展し、特に明治から昭和の初期にかけては、海外に絹織物を輸出するための中継地点となりました。桐生や山梨などの絹織物が一旦八王子に集荷され、横浜の港から海外に輸出されたため、商業も栄え、花街もできて、それらに関わるいろいろな都市機能が集積して、大きな街になってきました。

高尾山観光客でにぎわう高尾山
八王子駅前商業施設が立ち並ぶ JR「八王子」駅前

より広く、八王子市全体という視点から見れば、年間300万人以上が訪れる高尾山があり、21の大学・短期大学・高等専門学校がある学園都市という一面もあり、近年の産業としては、先端産業と繊維産業については多摩地区でも随一の集積エリアとなっています。特に電子デバイスなどの工場や研究所が集積しています。
こうした産業が発展した要因には、ここが「交通の要衝」だったことが大きく影響していると思います。鉄道ではJR中央線、JR横浜線、JR八高線が交差する地で、京王線も通っています。道路も中央道と圏央道が交差していますし、国道も20号と16号が交差しているという、あらゆる方面からの交通の便が良い都市でもあります。

多摩地区最大規模の展示ホールを備える「(仮称)産業交流拠点」

ご担当者:中心市街地の範囲は、甲州街道沿道からJR「八王子」駅の南北を含む115ヘクタールの地域で、この活性化のために市が基本計画を作り、さまざまな事業を実施しています。
その中のひとつに、現在進められている「旭町・明神町地区周辺まちづくり」というものがあります。この地域にはもともと、東京都の「産業技術研究センター 八王子支所」があり、その跡地に整備される「(仮称)産業交流拠点」を核とし、JR「八王子」駅と「京王八王子」駅間という立地特性を活かして、八王子の新しい賑わいの核となるよう、まちづくりを進めています。

資料(左)「旭町・明神町地区周辺まちづくり構想」出典:八王子市HP
資料(右)「旭町・明神町地区周辺まちづくりイメージ 」出典:八王子市HP

中心市街地で行われている主な事業中心市街地で行われている主な事業

もともと東京都の研究センターがあった場所ですので、今も土地の所有権は東京都にあります。そのため、東京都が主体となって、都の施設である「(仮称)産業交流拠点」の整備が進められており、現在はその実施設計(基本設計をもとに金額や工期の見積り、工事用の図面等を作成する作業)を東京都が行っているという段階です。現在は「(仮称)産業交流拠点」と言っておりますが、いずれは別の名称が付けられる予定です。

 

 

未定の部分もまだ多い状況ですが、施設概要としては、約2500平方メートル級の多摩地区最大規模の展示ホールを1階に、3階に会議室などを配置する予定です。主に企業や法人向けの展示会や商談会に加え、学会やレセプションパーティー等多目的に活用可能な機能を有することになります。

八王子市市役所拠点整備部中心市街地政策課と中心市街地整備推進課のみなさん中心市街地整備推進課のみなさん

この施設の入口となる北西側、現在は「八王子市保健所」がある地域(旭町地区)と、反対側の「東京都八王子合同庁舎」がある地域(明神町地区)を一体として、「(仮称)産業交流拠点」を核としたまちづくりが進められる予定です。「(仮称)産業交流拠点」については、来年から着工し、2021(平成33)年度の竣工を予定しております。

 

 

 

新しい賑わいの機能を担う場所へ

ご担当者:この地区の中心に「(仮称)産業交流拠点」の整備が進められておりますが、それ以外の部分については現在検討を行っている段階です。ただ、この地区はJR「八王子」駅と「京王八王子」駅の間という、立地条件が非常に良い場所ですので、「商業、業務拠点ゾーン」という位置づけのもと、中心市街地の活性化に寄与する都市機能を備えた商業・業務機能の導入や、多様な交流や連携を促進する機能等を導入することが整備方針となっています。ですからこの方針に沿った、賑わいを創出するような施設が入っていくことになるかと思います。また、広く市民の方にも使っていただくことを想定して、「(仮称)産業交流拠点」のメインの入口部分(旭町地区内)に広場を整備することも検討しています。

広場の運用形態についてはまだ検討の段階です。どういう形がいちばん良いのかという点も含めて、これから検討を重ねて決めてまいります。ただ、賑わいの創出という部分を大切に考えておりますので、いろいろな制約がかかり、活用の幅も狭くなってしまういわゆる「公園」ではなく、「都市型広場」として、より柔軟性の高いものとしていく予定です。

「産業技術研究センター 八王子支所」の跡地「産業技術研究所 八王子庁舎」の跡地
JR「八王子」駅と「京王八王子」駅をつなぐアイロードJR「八王子」駅と「京王八王子」駅をつなぐアイロード

JR「八王子」駅前の「マルベリーブリッジ」は歩道橋という扱いで、イベントの開催はできませんから、この広場ができれば、駅からもっとも近い、イベントのできる広場として今までとは違う、新しい人の流れができますので、街の雰囲気も変わっていくのかな、と期待しています。
今の段階では、中心市街地内でこの地区以外の新しい開発等の予定はまだありませんが、今後それぞれの地域にお住いの方々の気運が高まってくれば、新しい動きもあるかと思います。現在具体的に動いているのは、先ほどお話ししました東京都の「(仮称)産業交流拠点」ということになります。

ハード面、ソフト面ともに整備が進む駅前

西放射線ユーロード西放射線ユーロード

ご担当者:この地区以外だと、新しい開発等の予定として、駅前にある「マルベリーブリッジ」という歩道橋の延伸計画があります。こちらは現在、「八王子東急スクエア」の前をとおりユーロードに向かう部分の延伸を進めています。反対側にあたる旭町・明神町側についても、まだ決定事項とは申し上げられませんが、地区開発の検討を進める中で延伸方法を考えていく予定です。
そのほかとしては、ユーロードの樹木を新しく植え替えたり、「中町公園」と「横山町公園」の改修を行ったりと、来街者がより安全に中心市街地を回遊しやすいよう環境づくりを行っています。

 

また、ソフト面では、昨年度「Hachioji Free Wi-Fi」の整備ということで、駅前とユーロード沿いの合計6か所に設備を設置し、来街者へのサービス向上を図っております。
ユーロードについては、毎週のようにイベントが行われている「八王子の顔」とも言える通りですので、市としても積極的に支援しながら、賑わいを創出し、周辺の商業の活性化につなげていきたいと考えております。

次の100年に向けて、八王子の未来への想い

中心市街地政策課と中心市街地整備推進課のみなさん中心市街地整備推進課長 和田さんと中心市街地整備推進課 石渡さん

和田さん:今回は中心市街地における一体的な大型地区開発ということで、街の雰囲気が変わる可能性をもった大きな開発だと認識しています。ですので、この「(仮称)産業交流拠点」を中心に、新しい人の流れが生まれて、賑わい、交流、憩いといったものにつながっていけば、良いなと思っています。八王子市は今年で市制施行100周年となりましたので、これを節目に、今後の100年に続いていくような開発にしていきたいですね。

 

 

 

石渡さん:この拠点施設を中心にして、八王子の中心市街地がより魅力的になってくれたら、と思っています。この開発以外にも、市街地を回遊しやすいように、ハードとソフトの両面から、いろいろな工夫を凝らしていきたいと考えていますので、新しい住民の皆さんにも、ぜひ中心市街地生活の基点として、街に賑わいを与えていただきたい、と願っているところです。