受け継がれる伊達の心意気
市民が創る、市民の祭り「仙台・青葉まつり」
「仙台・青葉まつり」は、仙台市の中心部を舞台とし、2015(平成27)年に第31回を迎えた。初夏の仙台を活気づけるのは、弾けるような仙台すずめ踊りと煌びやかな山鉾巡行、勇壮な武者行列。「市民総参加の祭り」へと成長していく「仙台・青葉まつり」について、同祭の副実行委員長・髙橋清博さんに話を伺った。
―まずは「仙台・青葉まつり」について、歴史と概要のご紹介をお願いします。
現在の「仙台・青葉まつり」は、伊達政宗が没後350年を迎えた1985(昭和60)年に、もともと仙台にあった「仙台祭」と「青葉祭り」の名称を引き継ぎ、復活させようとしたのが始まりです。
―1985(昭和60)年の復活当時から現在までの祭りの様子は変わって来ましたか?
第1回は中心部から西寄りにある、今の「仙台国際センター」で開催しましたが、第2回以降から中心部で開催するようになりました。私は第3回から実行委員として「仙台すずめ踊り復活」の担当として関わり始めたのですが、今に続く祭りの形が出来始めたのはその頃からだと思います。
今では「仙台・青葉まつり」の代名詞となっている仙台すずめ踊りですが、当時はごくごく限られた演者しか踊れませんでした。
当初5基から始めた山鉾巡行も徐々に増え、今では11基が練り歩くようになりました。平成に入って、「伊達時代絵巻行列」や藩政時代の町家を再現した「伊達縁」が始まり、子どもやお年寄りなど色々な市民が参加できるようにもなりましたね。「勾当台公園」で開催する「伊達縁」では寄席や縁日屋台がならび、お化け屋敷や殺陣などは学生が中心となって運営してくれています。
―仙台すずめ踊りについてもご紹介いただけますか?
仙台すずめ踊りの起源は、青葉城(仙台城)新築移転の祝いの席に家臣や棟梁たちが招かれた際に、石工という職人たちが踊った舞が元になっていると言い伝えられています。
その後戦乱の中その踊りも一度途絶えてしまうのですが、石工の子孫たちの記憶を辿りながら再現したのが、伝統の形となっています。
第3回の時に、誰もが踊れる仙台すずめ踊りを普及させようと、優雅な「舞すずめ」、アップテンポの「ハネすずめ」という2つの振りのサンプルを作ったのですが、現在踊られているのは「ハネすずめ」を各祭連(まづら。仙台すずめ踊りを踊る団体のこと)でアレンジしたものです。
―仙台青葉まつりの規模を教えてください。
第3回の開催時は参加祭連も20弱しかなく、約600名が仙台すずめ踊りを披露しました。動員数は2日間で42万人です。この年はちょうど「独眼竜政宗ブーム」の年にあたり、前年の3倍以上の動員数となりました。31回目となる昨年は131の祭連、人数にして約4,000名もの踊り手が仙台すずめ踊りの大パレードに参加し、動員数も96万人と賑わいを見せました。
今では、会社や学生、地域団体など131の祭連があるわけですが、そのうち約70の祭連が「仙臺すずめ踊り連盟」に加入しています。「仙台・青葉まつり」以外にも1年を通して演舞できるよう連携しながら、どうやって市民の踊りとして普及していくか、考えています。
―仙台四大祭りとも称される青葉まつりですが、近隣住民、ひいては仙台市民にとってどのような位置づけなのでしょうか?
やはり「市民が創る、市民のまつり」なのではないでしょうか。伊達政宗が作ったこのまちの歴史を継承し、新しい世代を繋いでいく、そういうまつりでありたいと思っています。また衣装や活動費などを各自で出資したり、アイデアを共有したりするなど、自分たちで祭りをいかに盛り上げられるか、市民が自主的に動く祭りというのも、ひとつの特徴です。伊達の心意気が受け継がれているんだと思います。
地域の学校やPTAなどの活動で、親が囃子を担当し、子どもが踊るという形の活動も多くなりました。子どもに踊りを教えるつもりが、逆にお父さんたちがはまってしまったというエピソードもよく聞きますね。小学生の踊り手を育てる「すずめっ子クラブ」の修了生が、今は指導者になっていたり、自分の祭連を作っていたり、また自分の子どもに踊らせたり。確実に次の世代に受け継がれているようです。小さい子どもたちが踊っていると、おばあちゃんたちも手を叩いて喜んでくれますし、本当に老若男女が皆で楽しめる祭りになっていると感じます。
―まつりの見どころ、髙橋さんのオススメを教えてください。
「仙台・青葉まつり」はケヤキ並木の若葉が最も美しい毎年5月に開催します。若葉を通した柔らかい陽光の下を、豪華絢爛な山鉾が存在感を放ちながら、仙台すずめ踊りの踊り手が躍動的に跳ね回るところをぜひ見ていただきたいですね。
―勾当台公園周辺、仙台市中心部の魅力について教えて下さい。
青葉通りや定禅寺通りはケヤキ並木になっていて、鮮やかな緑が街を縁取っています。ケヤキ並木は他の都市にもありますが、特に定禅寺通りは全国的に珍しく、並木が4列に植えられていて中央が遊歩道になっています。西側には西公園、広瀬川が流れ、東側には「榴岡公園」があります。水と緑、実に自然に囲まれたまちなんですね。その真ん中にあるのが「勾当台公園」や市民広場。市民が集まる場所がまちの真ん中にあるということが、このまちの特徴であり、魅力であると思います。
この場所を、まちの財産として市民がそれを活かしながらいいかたちで利用していくことで、暮らしがより楽しくなればいいですね。
―最後に今後の展望についてお聞かせ下さい。
やはり子どもたちに繋いでいくことですね。杜の市や伊達縁、武者行列など市民が参加出来る機会は色々ありますが、やはり気軽に入れるのは仙台すずめ踊りでしょう。3年前から「すずめっ子1000人祭連」という試みを始め、初めて踊る子や飛び入りの子どもたちが当日参加出来るようにしました。そうやって子どもの頃から慣れ親しみ、いずれは一生の楽しみとなっていくといいなと。
仙台すずめ踊り普及を進めていくなかで「5つの《じば》」というのを作りました。地元にある宝を発見し認める「地場」、その良さを伝えることで人を集める「磁場」、 その中で自分の役割や居場所が出来る「自場」、子どものように愛情を持つ「慈場」、そしてそれを持続していく「持場」。この5つを大事にしながら続けていこうと思っています。
祭りがあるということは、ふるさとがあるということだと思うんです。自分の祭りを持っているというのは幸せなことです。子どもたちがいつか学校を出て他県に就職した時、会社を休んででも祭りに参加したいと思ってくれたら最高ですね。そういう祭りを、ここに住む一員として作って行きたいですし、皆で継承していって欲しいと思います。
今回お話を聞いた人
「仙台・青葉まつり」協賛会 副実行委員長 髙橋清博 さん
※2015(平成27)年12月実施の取材にもとづいた内容です。 記載している情報については、今後変わる場合がございます。
受け継がれる伊達の心意気
市民が創る、市民の祭り「仙台・青葉まつり」
所在地:宮城県仙台市青葉区本町2-16-12 (事務局:仙台商工会議所)
電話番号:022-265-8185
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