地下鉄南北線「勾当台公園」駅から徒歩約1分。定禅寺通り沿 い、「一番町四丁目商店街」入口に建つビルの地下にある小 さなギャラリースペース「阿部敬四郎ギャラリー」。 階段を下りていくと、外の喧噪とは切り離されたかのような、 クラシック音楽が静かに流れる白い空間に辿り着く。代表の 阿部さんは約40年百貨店内のギャラリーに勤務したのち、 2013（平成25）年8月にこのギャラリーを夫婦でオープンし た。

2～3週間に一度の周期で展示や販売を企画。宮城県出身の 彫刻家佐藤忠良や、文化勲章受章者でもある中村晋也の「釈 迦十大弟子」など、日本を代表する作家の企画展を開催する こともある。本来美術館でしか見ることのできないような作品 を、至近距離から眺めることが出来るのが魅力だ。 「仙台七夕まつり」に合わせた「短冊展」では、普段書家が使 うような短冊に、各分野の作家に縦長の限られたスペースを 使って好きなように表現してもらい、今までにない世界観を創 りあげた。

ギャラリーに訪れる人は、どちらかというと市外や県外からの 来訪者が多く、旅行などで仙台の「まちあるき」を楽しむ人が ふらりと立ち寄る。定禅寺通りの雰囲気も合わさって「仙台っ ていいところね」と感想を残していくそう。
定禅寺通りには、文化活動の中心となる「せんだいメディアテーク」があり、遊歩道を歩くと、彫刻やケヤキ並木の緑が目 に飛び込む。阿部さんは「この定禅寺通りは仙台の文化が交 わり、変化する場所。知らず知らずのうちに立ち寄った小さな ギャラリーで、一生忘れられない作品に出合う。街にはそうい う場所が必要です。まちづくりにも繋がっているかもしれませ んね。」と、ギャラリーの役割を語る。

ギャラリーというと入りづらいイメージがある人もいるかもしれないが、阿部さんはそういった「芸術初心者」にも気軽に足 を運んでもらえるよう、全ての企画を「入場無料」で公開して いる。
金額や既成の評価に左右されることなく、本当の感動を味わって欲しいという阿部さん。「私たちは個展をする作家とお 客様をつなげる仲介役。正しい知識をお伝えすることも勿論 ですが、学問として作品の善し悪しを一方的に説明するので はなく、一歩下がって感動のお手伝いをすることが大事だと 思っています。」

丁寧に作品や作家の背景を教えてくれるため、何気なく入っ ても不安なく世界に浸ることができる。作家在廊日に訪れて、 あれこれと感じたことを共有し合うコミュニケーションも新鮮 で楽しいだろう。
「生活の＋αとして親しんでいただき、文化を楽しむ人たちの裾野が広がっていけば。」と穏やかに情熱を傾ける阿部さんとの会話も、ふと空いた時間を豊かにしてくれるはず。

展示以外にも、「阿部敬四郎ギャラリー」では仙台市を中心に 宮城県内の野外彫刻についてまとめたタブロイド誌『彫刻/ 街景』を無料で配布している。これは“彫刻のあるまちづくり” を推進する仙台市のまちづくりに賛同した阿部さんが「みや ぎ野外彫刻研究会」を立ち上げ、仙台市などから協力を得て 制作をしたもの。大判のパンフレットには作品名や作家名な ど、長年の住人ですら知らないような情報も満載だ。

企画内容はホームページでも確認できるが、何気なく覗いて 偶然の「出合い」を楽しむのも、ひとつの「まちあるき」の楽し み方かもしれない。企画展を見た後は、『彫刻/街景』を手に 再び「まちあるき」をすれば、これまでとは違った街の姿が見 えるだろう。

※2015（平成27）年12月実施の取材にもとづいた内容です。 記載している情報については、今後変わる場合がございます。

阿部敬四郎ギャラリー
所在地：宮城県仙台市青葉区一番町4-10-16 梅原ビルB1F
電話番号：022-796-1527
営業時間：10:30～18:30
定休日：水曜日
http://www.abe-keishiro.jp/