未就園児の保育環境を質と量の両輪で整備する柏市
ベッドタウンとして知られ、大学や産学連携施設などのある文教地区としての顔も持つ、千葉県柏市。子育てに関する支援や環境は、どうなっているのだろうか。柏市こども部の髙木部長と篠原さんに加え、まちづくりの総合計画を統括する企画調整課の松下さんにも同席いただき、柏市のまちづくりにおける子育て支援事業の位置づけ、力を入れている子育て支援策、新柏エリアの魅力などを聞いた。
子どもの幸せを目標に掲げたまちづくり
――柏市のまちづくり計画において、子育て支援事業はどんな位置づけでしょうか。
髙木さん:柏市はまちづくりにおいて3つの重点目標を掲げていて、そのトップは「子ども」です。「充実した教育が実感でき、子どもを安心して産み育てられるまち」を目指しています。3つの目標を達成するために設けられた7つの分野別計画でも、教育環境の充実などをうたった「子ども未来」が筆頭に挙げられています。柏市がいかに子育て支援を重視しているか、おわかりいただけると思います。
松下さん:日本の人口が減少していく中で、活力ある街を維持していくためには、若い世帯をどれだけ呼び込めるか。このことは、すべての市区町村において大きな課題です。 その中でも、子育て世代に選ばれるためには、子育て支援の拡充はとても重要な取り組みなんです。
――いま特に力を入れている子育ての取り組みは何ですか。
髙木さん:乳幼児の保育・教育環境を整えることです。ご家庭で子育てする場合と保育園等に預ける場合があるので、両方の支援を2本柱と考えてサービスの拡充に努めています。一つは家庭保育に欠かせない児童センターや地域子育て支援拠点の充実、もう一つは質の高い保育・教育を提供する認定こども園や保育園の増設です。
支援の輪を広げて前向きな子育てを応援
――ではまず、児童センターや子育て支援拠点について教えてください。
篠原さん:地域子育て支援拠点は、就学前の親子や妊娠中の方が気軽に利用できる屋内施設で、市内に20か所あります。親子同士の交流や、子育てに関する情報交換や相談、子育てに役立つ育児講座も実施しています。また、児童センターは、0~18歳のお子さんや保護者が自由に遊んだり交流したりすることができる施設で、市内に7か所あります。これらの施設では,定期的な交流イベントや季節に合わせたイベントを催し、皆さんに楽しく利用していただいています。
――次に、子育て支援者の育成やネットワークの拡大について教えてください。子育て中の方も活動されているそうですね。
篠原さん:子育て支援者の育成とネットワーク拡大のため、イベント開催や冊子の配布を実施しています。2017年から始めた「はぐはぐ☆子育て応援フォーラム」では、保護者の方々や子育て支援者の交流がより活発になるようにという狙いから、実行委員やワークショップの参加団体を市民から募っています。冊子作りにも子育て中の方々が活躍しています。昨年度は市民団体が中心になって、子育て応援情報誌「Touch(たっち)」を作りました。取材や編集を通じて公共のサービスだけでなく、子連れにやさしい店や、地域に身近な育児サービスについてより深く知ることができ、市民同士の交流にもつながります。
――ママたちや子育て支援者の交流を重視する理由は何ですか。
篠原さん:行政サービスだけでなく、市民が活躍するイベントや取材、そこから生まれるママ同士のつながりなど、まち全体が子育てを応援する地域づくりをすることによって、ママ・パパたちが外に出るきっかけになります。結果として、前向きな子育てや、虐待などの予防にもつながると考えています。
保育施設の拡充で4年連続待機児童ゼロ
――次に、認定こども園や保育園について教えてください。
髙木さん:国基準ではありますが、柏市は4年連続で待機児童ゼロを実現しています。認定こども園を増やし、保育園の新設に力を入れてきた結果と言えるでしょう。今年の6月時点で、柏市は幼保連携型認定こども園の整備数において千葉県トップです。今後も量的拡大と質の向上を両輪とし、幼稚園と保育所の良さを併せ持った認定こども園を増やしていくつもりです。
――素晴らしい取り組みですね!成果は実感されていますか。
松下さん:柏市では隔年でまちづくりの進み具合を測るための調査を実施しています。調査には「柏市に住もうと思った理由」との問いかけがあり、「子育て環境がいい」と回答した方が前回に比べて増えています。こども部の取り組みが、少しずつ浸透してきていると感じています。
――「かしわファミリー・サポート・センター」の概要を教えてください。
篠原さん:子育てを手助けしてほしい人と子育てを手伝いたい人をつなぎ、育児を地域で助け合う活動を支援するサービスです。これまでは、年会費や入会金を必要としていましたが、2015年度に年会費を廃止、今年度(2018年度)に入会金を廃止し、より気軽に利用会員として登録できるようになりました。これらを見直した効果として、直近3年間で約1.7倍となる会員数2,000人を超えることとなりました。利用した方の感想では、「しっかり面倒をみてもらえる」「優しく接してもらって子どもが喜ぶ」と好評です。通常は協力会員の自宅で預かりますが、「沼南社会福祉センター」で預かる「ぞうさんルーム」も実施しています。
――マッチングのポイントがあれば、お聞かせください。
篠原さん:マッチングは柏市社会福祉協議会に委託していますが、できるだけ住まいの近い人同士を選ぶよう心がけて行っています。送り迎えの負担を軽減すると同時に、ご近所付き合いの促進にもなります。会員が増えることで、子育てを応援する地域づくりにもつながると考えています。
多くの人の助けを借りながら 「子どもにとっての幸せ」を実現する
――子育て支援事業に関わるにあたり、特に意識していることはありますか。
髙木さん:2016(平成28)年の児童福祉法改正で、理念をうたう文章の主語が変わりました。「すべて国民は」から「すべて児童は」になったんです。私たち柏市こども部はこの変更を重く受け止め、常に意識しています。もちろん、働く親御さんにとっての利便性も大切です。ただ「最善の利益は子どもに」という基本理念を忘れないよう、肝に銘じています。
篠原さん:まちづくりは、行政だけでは担えない部分がたくさんあります。子育て支援事業も、民間企業や市民団体の協力が欠かせません。高島屋、イオン、ららぽーと、アリオ、モラージュといったショッピングモールには、イベントの開催スペースをお借りしたり、ポスターやチラシの掲示場所や冊子の置き場を提供していただいたりと、お世話になっています。また、柏レイソルの選手にも「子育て」に関するインタビューを受けていただいており、「子育て」に関する啓発にご協力いただいております。「柏は自分たちのまち」という意識を持って積極的に行動してくださるママさんたちの存在も、大きな力になっています。多くの人に支えられているということを、日々感じています。
保育施設が新設されて より子育てしやすくなる新柏
――今後の子育て支援について、展望をお聞かせください。
髙木さん:柏市内の年間出生数は3,300人くらいで横ばいですが、柏駅前には子育て世帯をターゲットとしたタワーマンションができましたし、柏の葉エリアも開発中です。子どもにとって安全・安心な環境を今後も継続して整えていくつもりです。
篠原さん:地域子育て支援拠点を増やしていきたい考えです。中央エリアには「子どもの遊び場が少ないのでは」という声もあるため、施設やイベントの情報発信に努めながら、他の地区とのバランスを図りつつ拡充できればと思います。
――最後に、新柏エリアの魅力をお聞かせください
篠原さん:新柏には現在、公立の保育園1つと認可保育園2つがあります。加えて2019(平成31)年4月には、私立認可保育園が新設される予定で、入園受付も始まっています。同じタイミングで認定こども園に移行予定の園もあり、新柏エリアの保育需要の受け皿になると考えています。また、近隣の「名戸ヶ谷病院」は、柏市内に3つある病児保育を行う施設の一つ。お子さんが風邪やケガで保育園や学校に行けないときに重宝するでしょう。
髙木さん:新柏は、住環境が整っている一方で豊かな自然も残っている、柏市内でも調和のとれたエリア。非常に暮らしやすい場所だと思います。三協フロンテア柏スタジアムも近いので、柏レイソルの応援にも行きやすいですよ。
柏市役所
こども部 部長 髙木絹代さん
こども部 子育て支援課 篠原安武さん
企画部 企画調整課 松下尚樹さん
所在地 :千葉県柏市柏五丁目10番1号
電話番号:04-7167-1111
URL:http://www.city.kashiwa.lg.jp/living/haguhagu/
※URLは柏市の子育てサイト「はぐはぐ柏」のトップページです。
※この情報は2018(平成30)年11月時点のものです。
未就園児の保育環境を質と量の両輪で整備する柏市
所在地:千葉県柏市柏5-10-1
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