杉並区南荻窪は「荻窪」駅と「西荻窪」駅の間、JR中央線の線路の南側に広がるエリアだ。JR中央線と東京メトロ丸の内線を利用できるという交通アクセスの利便性に加え、買い物も便利な街として根強い人気を誇る。

文人に愛された荻窪

「荻窪」駅周辺にはかつて、文化人や政治家が多く暮らし、「西の鎌倉、東の荻窪」と称された邸宅街として知られていた。与謝野晶子や井伏鱒二なども荻窪ゆかりの文人だ。今も神田や飯田橋などの出版社が多く集まるエリアへのアクセスがよいことから、文学関係の職業に就く人が多く暮らしているという。こうした歴史を持つ荻窪は「本の街」として独自の文化が発展を遂げ、「岩森書店」など質の良い古書店が集まっている。

また、クラシック喫茶の「ミニヨン」があるなど「クラシック音楽の街」としても有名で、毎年2回「荻窪音楽祭」が開かれるなど、音楽関係のイベントも多い。「大田黒公園」は、日本における音楽評論の草分けとして知られる大田黒元雄の邸宅跡に造られた公園だ。

「荻窪」駅周辺は買い物の場としても魅力が多い。「ルミネ荻窪店」をはじめ商店街も多く、日常の買い物から休日のショッピングまで多彩な買い物を楽しめる。

アンティークの街、西荻窪

「西荻窪」駅は「荻窪」駅の1駅隣だが、「荻窪」駅周辺とは異なる文化が発展した。「西荻窪」駅周辺にはアンティークショップが集まるアンティークの街として知られる。とくに「西荻窪」駅から北西に伸びる「西荻窪アンティーク街」と呼ばれる通り沿いには、多くのアンティークショップが並び、店先を眺めて歩くだけでも楽しめるだろう。

「西荻窪」駅周辺も商店街が発達した街で、「西荻北銀座」や「西荻窪銀座会」、「西荻南口仲通り商店会」、「西荻伏見通り商店街」などその数はおよそ20ともいわれる。それぞれの商店街には個性豊かな店が集まり、散策がてらの買い物も楽しい。

多様なグルメを満喫できる街

荻窪、西荻窪はグルメの楽しみも多い。「荻窪」駅周辺はラーメン激戦区として全国的に有名だ。とくに、「春木屋」は1949（昭和24）年の創業の荻窪を代表するラーメン店で、醤油ベースのオーソドックスな東京ラーメンが訪れる人を魅了する。ほかにも「丸長」や「ねいろ屋」、「ビンキリ」など有名店が集まり、食べ歩きも楽しい。

近年は、カレーの街としても注目され、なかでも荻窪の3大カレーと呼ばれる「すぱいす」、「吉田カレー」、「トマト」など有名店には行列が絶えない。

「西荻窪」駅の南側に広がる「柳小路」は、レトロな佇まいの通り沿いに名物やきとり店の「戎」やエスニックの「ハンサム食堂」など話題の店が並ぶ。毎月第3日曜日の「柳小路昼市」では通り沿いの店が各国料理を手ごろな価格で提供しており、多くの人々が集まる。

西荻窪には長野県諏訪郡原村から移転してきた「かむかむhygge」やベーグル専門店「Pomme de terre（ポム ド テール）」などパンの有名店も増え、パンの街としても知られるようになった。

中央線沿線でも個性あふれる文化を持つ荻窪、西荻窪。杉並区南荻窪はこの2つの街の魅力を余すところなく享受できる街といえよう。