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プレスツアーレポート

アートと自然環境が感性を刺激する、相模原市の魅力

2023(令和5)年10月25日、中山間地域を巡るプレスツアーが開催されました。主催するのは、“都市と自然がベストミックスしたまち”をかかげる相模原市です。1時間で都心まで行けるアクセスのよさに加え、川・山・湖が身近に感じられる環境が広がる一方で、近年ではリニア中央新幹線の「神奈川県駅」(仮称)の設置が予定される街として更なる発展も期待されている街です。自然とアートがテーマの今回のプレスツアーは、本村賢太郎相模原市長の挨拶からスタートしました。

集合場所での市長の挨拶

誰でも利用できる里山の資源

最初の訪問先は、圏央道相模原ICから車で5分の距離にある「つちざわの森」です。以前の「つちざわの森」は、人の手が入らないことから、暗く荒れ果てていたそうです。そのような現状を憂いた地元出身の守屋さんが購入し里山としての活用を進めていきました。

綺麗に整備された「ケヤキの森」の様子
綺麗に整備された「ケヤキの森」の様子

しかしせっかくの森林も、守屋さんの個人所有としての場としては、活用の永続性がありませんでした。そんなときに、森林保全の活動をしながら、子どもの遊び場として活用できる山を探していた青木さんや、MTB(マウンテンバイク)コースを作れる山を探していた渡辺さんと出会い、地域に残る自然と文化を次世代に受けわたす役割を担うための「合同会社ヘリテッジキーパー」設立へとつながりました。事業内容は多岐にわたり、主なものとしては森林の環境維持、MTBコースの運営、森林プログラムの提供、里山での教育事業、ロケ地の提供、農業体験などです。

森林浴プログラム体験の様子
森林浴プログラム体験の様子

今回は、森林浴プログラムをダイジェスト版で体験し、誰もが持っている“感じる”力を再確認することができました。土の香りを嗅いだり、遠近2本の樹木を見比べたり、普段はパソコン、スマートフォンから離れられない生活を送っている身としては心の安らぐ新鮮な経験です。

また、MTB体験、薪割りなど里山で過ごす心地よい時間を存分に楽しみました。個人的にはMTB体験が印象的でした。山を歩く、走るではなく、滑り落ちていく爽快感は体験するまでわかりませんでした。体験することで、山との心理的な距離感が格段に近くなった気がします。

合同会社ヘリテッジキーパーのメンバー
合同会社ヘリテッジキーパーのメンバー

アーティストが集う藤野の魅力

昼食は藤野の「カフェレストラン Shu」でとります。戦時中、芸術家たちの疎開先だった藤野。そのとき芸術家たちが「ここに芸術村をつくろう」と話をしていたことが、「藤野ふるさと芸術村構想」が提唱されるにいたった原点です。その2年後の1988(昭和63)年には「藤野ふるさと芸術村メッセージ事業」が開始。この事業により、数多くの創造的な活動が展開されることになります。

Shuのオーナー夫婦
Shuのオーナー夫婦

転機は、バブル崩壊の影響などにより、県からの予算が打ち切られたことでした。これを機に、藤野は施設ではなく、人に投資するためにイベントをしかけます。芸術家ならではの発想、イベントは人を呼び、その人がまたさらに人を呼び、そのなかから自然と多様性を受け入れる素地が育まれました。 2012(平成24)年には、「旧・相模原市立吉野小学校」の跡地で「学校法人シュタイナー学園高等部」が開校します。同校は、ルドルフ・シュタイナーの提唱したシュタイナー教育を実践している国内初の全日制シュタイナー学校で、これにより若い世代の移住がさらに進みました。

話を「カフェレストラン Shu」に戻しましょう。地元の食材を使った料理が味わえるだけでなく、ジャズ、クラシック、ロック、民族音楽などのコンサートや、作品の展示会場として、またワークショップなどでも使用されています。ミュージシャンやアーティストが地元の方と一緒に話をしたり、お茶を飲んだりすることも多く、交流の場にもなっています。

Shu店内の様子
Shu店内の様子
Shuの作品展示スペース
Shuの作品展示スペース

4時間以上も玉ねぎを炒め、ガラムマサラ、コリアンダー、野菜などをブレンドして2日間煮込み、そこからさらに熟成させるカレーソースは逸品でした。

Shuの自家製チキンカレー
Shuの自家製チキンカレー

その後、藤野在住のアーティストによるトークセッションが始まりました。グラフィックデザイナーの佐藤純さんは言います。「多くの芸術家には、こういう街、こんな感じの雰囲気のなかで作品をつくりたいだとか、アトリエを構えたいといった嗅覚があります。もともと都内で仕事をしていた私ですが、あの時代に戻りたいとはまったく思いません。今は、最高の場所に住み、最高の環境で仕事をしています」。トークセッションで話をしてくれたクラフト作家のさとうますよさん、木工作家・藤崎均さんも藤野で活動しています。

さとうさんが手がけた本の紹介
さとうさんが手がけた本の紹介
トークセッションの様子
トークセッションの様子

年間を通じて、数多くのイベントが開催される藤野。主催する側が全力で楽しんでいるのが印象的でした。都心ほどの利便性はありませんが、反対に、それ以外のことなら何でもあると言えるかもしれません。アーティストがそれぞれの感性でたどりついた街は、きっと私たちも、他にはない特別な時間を感じることができると思います。

地元出身のさとうさんが手がけた作品
地元出身のさとうさんが手がけた作品

野外で触れるアートとアートの体験型施設

藤野には約30点の彫刻、オブジェが野外で展示されている「芸術の道」があります。近くにあるものから、谷を隔てて鑑賞するものまで実に様々です。美しい山並みを借景とする芸術鑑賞は、なかなか体験できるものではありません。

芸術の道にある作品のひとつ
芸術の道にある作品のひとつ

その「芸術の道」を通って向かった先が「藤野芸術の家」です。豊かな自然のなかにあるこの施設は、“ふれあい、体験、創造”をテーマとする芸術体験施設です。陶芸、木工、ガラス工芸等の芸術体験ができる体験工房と、ファミリー・グループ・団体の宿泊に利用できる宿泊棟、さらにはスタジオ・ホールも併設しており、音楽、劇、ダンス等の練習や合宿でも使用できます。

今回のプレスツアーでは、砂を吹き付け、ガラスの表面に模様をつけるサンドブラストを体験しました。常時30種類以上のガラス製の器とグラスが用意されています。作業はとても簡単で、シールを貼って、あとは砂を吹き付けるだけ。子どもでも安心して作業に臨めます。全工程で30分程の作業ですが、自分の手で作品を仕上げるというのは特別なことです。実際に体験することでより鮮明に、記憶に刻まれることとなりました。

サンドブラスト体験の様子
サンドブラスト体験の様子
サンドブラスト作品の一例
サンドブラスト作品の一例

自然につつまれた温泉施設

プレスツアーで最後に訪れたのは「藤野やまなみ温泉」です。1997(平成9)年に、「旧・藤野町立牧野中学校」跡地に建てられました。その後、長期間の改修工事を経て2023(令和5)年8月から営業を再開。内風呂、露天風呂、サウナがあり、特に露天風呂は都心にあるようなスーパー銭湯とは比較にならないほどの絶景です。施設には大広間、特別室、売店、ボディケアコーナーも併設されていました。

藤野やまなみ温泉外観
藤野やまなみ温泉外観
藤野やまなみ温泉の露天風呂
藤野やまなみ温泉の露天風呂
藤野やまなみ温泉の内風呂
藤野やまなみ温泉の内風呂

入浴を終えて施設を出ると、空はすっかり夜になっていました。夜気にあたると、ここが相模原市であることを忘れてしまいそうになりますし、リニア中央新幹線の新駅の近くからスタートした朝のことが信じられなくなります。JR中央線に乗りこみ、東京方面に向かいながら徐々に混雑していく車内の様子も、豊かな自然と芸術に浸ったあとには、少し不思議に感じます。“都心と自然がベストミックスしたまち”を体験し、心から堪能した1日となりました。

 

ライター:飯田秀康

神奈川県出身。大学卒業後、出版社勤務を経て渡独。「Kleines Sinfonisches Orchester(Collegium Musicum Berlin)」に参加しながら、現地滞在中よりライターとして活動を開始。帰国後はライター・フォトグラファーとして活動し、現在は4歳から続けているバイオリンの指導者として教室も運営。趣味は旅行、食べ・飲み歩き、写真撮影、音楽鑑賞、古墳・史跡めぐり。
※この情報は2023(令和5)年11月時点のものです。

 

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