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相模原市立新磯小学校 青木正利校長先生 インタビュー

校庭の中心にそびえ立つ、巨大なくすの木がシンボル。伝統的な凧作りを通して地域とつながる相模原市立新磯小学校

JR相模線「下溝」駅と「相武台下」駅の間にあり、相模原でも最も長い歴史をもつ小学校の一つ、「相模原市立新磯(あらいそ)小学校」。校庭の真ん中には堂々と立つ大きな楠(くす)の木があり、訪れる人々の目を引いている。この大樹は100年以上も前、この学校と時期を同じくして創立された市内の小学校6校に植えられたものの一つで、校庭の中央にあるのはもちろんこの学校だけ。子どもたちの成長を見守る、新磯小学校の“シンボルツリー”となっている。

このくすの木の下で、子どもたちはどんな思いを抱いて学んでいるのか。相模原市で30年以上にわたって学校教育に携わり、2017(平成29)年度から同校校長として赴任された青木正利先生に、学校の特色や地域の魅力についてお話を伺った。

校長 青木正利先生――まず、「相模原市立新磯小学校」の歴史と、地域の概要についてお聞かせください。

本校は1892(明治25)年に新戸(しんど)学校と磯部(いそべ)学校を合併して、「新磯尋常小学校」とした学校でして、2017(平成29)年で125年目を迎えました。1学年が平均4クラスで、全校児童は806名(2017年4月現在)です。市内では72校中8番目の規模ということで、比較的大規模な学校と言えるかと思います。

周囲の環境としては、西側に相模川が流れ、東側は河岸段丘の斜面緑地に面した立地で、磯部・新戸周辺には水田地帯が広がるなど、緑豊かな環境に恵まれた地域にあります。また、学区内には「勝坂式土器」の名で全国的に知られる「勝坂遺跡」や、国の登録文化財「中村家住宅」などもあり、古くから住みやすい場所として利用されてきたという歴史を持った地域です。

近年は「相模の大凧まつり」や「相模川芝ざくらまつり」など、文化・観光行事も多く行われており、県内外から多くの見学者が訪れています。

大きなくすの木がシンボル

校長 青木正利先生

――続いて、学校の教育目標についてお聞かせください。

学校目標としては「じょうぶな体をもった子」「よく考えてやりぬく子」「力をあわせてはたらく子」「あたたかい心をもった子」という4つの柱を掲げております。

これは教育基本法や学校教育法の精神に準じながら、相模原市の市立学校教育目標や本校の児童の実態、社会情勢等を踏まえ、これからの世の中を心豊かにたくましく生きる児童の育成をめざし、設定されたものです。

ただし、これだと非常に覚えにくいものですから、本校では「つよく・かしこく・しなやかに」という言葉を合言葉にしています。

教室
教室

――学校施設の特徴についてお聞かせください。

校舎は、西棟・中央棟・東棟がコの字型に配置されており、どの教室からも校庭が見られるという構造になっております。普通教室以外では図工室、図書室、家庭科室、理科室、PC室、音楽室があり、その他にも、相談室、学習室、PTA室なども備えられています。相模原の市立校の中でも、比較的充実した学校施設と言えるかと思います。また、屋上には太陽光発電が設置されていて、正面玄関には発電状況を示すモニターが設置されています。

校庭の中心にある大きなくすの木がシンボル
校庭の中心にある大きなくすの木がシンボル

――なぜ、くすの木が校庭の中心に植えられたのでしょうか?

本校を訪れるほとんどの方から同じ質問を受けるのですが、もちろん私も着任時には同じことを思ったわけですけれども、そもそも、校庭の真ん中に木を植るはずはないですよね。だから、最初はここが校庭の中心ではなかったんです。

もともとこのくすの木は、開校から間もなくの1904年から1905年にかけて、台湾から取り寄せた苗を市内の小学校7校と役場に植えたものだそうでして、最初に植えられた場所は、正門の横だったということです。それが1959(昭和34)年に校地の拡張工事がありまして、その時に正門が南側に移動したのですが、くすの木はすでに大きく育っていたという事情もあり、そのまま残されたということです。

よくお客様から「邪魔ではないのか」などとも聞かれますが、子どもたちは誰も、くすの木が邪魔だなんて思っていないようです。真夏の太陽を遮ってくれますし、体育の授業中も、先生の話は木陰で聞くことができますし、メリットも多いですよ。もちろん、やわらかな緑は、心を和ませてくれる効果もあります。これからも、新磯小学校のシンボルとして子どもたちを見守り続け、成長してくれることと思います。

くすの木は正門からもよく見える
くすの木は正門からもよく見える

――校長先生が目指しておられる「楽校」という考え方について、詳しくお聞かせください。

そもそも、学校は子どものためのものであり、子どもの「学び合い」と「成長の場」です。ですから子どもにとって、学校というのは、「常に楽しいところ」でなければいけないと思うんですね。

本校では教育活動の基本的な部分は国の学習指導要領に添いつつも、目の前の子どもたちとじっくりと向き合い、地域や保護者の声にも耳を傾け、「明るく、元気で、楽しい」雰囲気づくりを大切にしながら、『楽校』を目指して取り組んでいきたいと考えています。

具体的には、子どもが主役になれる「心に残る授業」を行うこと、地域のことを教材に、地域の方々を先生にしながら、地域を活動の場とした教育活動を大切する、といった取り組みを行っているところです。

こういった取り組みを通して、子どもたちにも、教職員にも、「自分の学校を誇れる」ようになってほしいと思っていますし、それに見合う、魅力ある学校づくりを目指していきたいと考えています。

「学校は子どもにとって常に楽しいところであるべき」
「学校は子どもにとって常に楽しいところであるべき」

――先生方の雰囲気や、共有しているポリシーなどがあればお聞かせください。

本校の職員は若手、中堅、ベテランのバランスがとれた年齢構成となっており、子どもたちとしっかりと向き合う姿勢を持った先生方ばかりです。共通認識としては、「チーム新磯丸」という言葉を合言葉にしておりまして、もし何かの問題が生じた場合にも、担任が一人で問題を抱え込むのではなく、全職員で一丸となって問題解決を図るという体制を作っています。

生活目標の掲示
生活目標の掲示

――学習面で特に力を入れている事柄はあるのでしょうか?

今年度については、校内研究のテーマを「地域に学び、親しみ、ふるさと『新磯』のよさを語れる子の育成」としておりまして、「生活科」と「総合的な学習の時間」のより一層の充実に向けて取り組んでおります。

具体的には「授業づくり」「くすの木プログラムの作成」「学び方の習得」という三本柱を掲げて、今も試行錯誤を行っているところですが、特に「くすの木プログラム」については、各学年ごとに習う教科の領域と、地域にある素材や人材を有機的に結びつけ、より効果的で充実した内容にできるよう、取り組んでいるところです。

くすの木集会30周年を記念した大凧
くすの木集会30周年を記念した大凧

――1985(昭和60)年から続いている「くすの木集会」があるそうですね。これはどのような活動なのでしょうか?

これは、「相模の大凧まつり」が行われる地元の小学校として、地域の伝統と文化を尊重してもらおうという目的で、凧作りに取り組んでいるものでして、凧を揚げるイベントが「くすの木集会」です。今年度で33回目を迎えました。

これに向けて、本校では4月早々から凧作りが始まりまして、1年生から3年生までは市販のカイトを組み立てて、絵を描くという簡単な内容になりますが、4年生からは伝統的な和凧作りに取り組むようになり、地域の「凧名人」の指導のもとで、一人一つの「剣凧」というものを作っていきます。5、6年生について、凧名人に教わりながら、1間(いっけん)凧と呼ばれる大凧をクラス毎に作っていきます。

子どもたちも凧作りに取り組む
子どもたちも凧作りに取り組む

――凧作りに取り組む子どもたちの様子はいかがでしたか?

みんな非常に真剣でしたね。特に5、6年生の大凧は伝統的な大凧と同じ構造なので、クラス全員の力を結集しなければ完成できない、とても繊細なものなんですね。こういった制作を通して、子どもたちも、「やりきる、助け合う、学び合う」という姿勢を存分に学んだかと思います。

カイトも、剣凧も、1間凧も、どれも子どもたちの思いがたくさん詰まった凧ですから、凧揚げは、「子どもたちの思いを揚げる」ことでもあるんですね。

高学年になるとクラスごとに凧を作る
高学年になるとクラスごとに凧を作る

――凧揚げ当日の様子について教えてください。

今年の「くすの木集会」は4月22日の土曜日に行われまして、沢山の保護者の方にも見守っていただきました。当日は、大凧文化保存会の凧名人が50名ほども集まりまして、凧揚げの指導をして下さいまして、午前中は1年生から4年生の凧揚げということで、凧作りを手伝った5、6年生が低学年の子の凧揚げを手伝う姿も見られましたし、保護者の方も、思わず子どもと一緒になって凧揚げを楽しんだりと、とても微笑ましい光景でした。

午後は5、6年生の大凧揚げでしたが、1間凧が8枚、スポーツ広場に広がるさまは圧巻でしたね。今年はほとんど無風だったので、大凧を揚げるためにクラスが一丸となって走って、凧名人の方々も何とか大凧を揚げさせようと、子どもたちと一緒になって頑張ってくださっていました。会場全体の雰囲気が一体感に包まれた、素晴らしい時間でしたね。私もその光景に感動がこみ上げてきました。

小学校教育において、伝統と文化を尊重する教育を推進するということは、指導要領でも触れられているほどに、とても重要なことなんです。そういった観点からも、本校の「くすの木集会」は、子どもたち、保護者、地域が協力して行っている、誇るべき、素晴らしい学校行事かと思います。

凧作りは新聞でも紹介された
凧作りは新聞でも紹介された

――そのほか、保護者や地域との関りがある活動・行事には、どのようなものがありますか?

本校は体験活動が盛んな学校でして、中でも、地域の方から水田をお借りして行っている、5年生の稲作体験は大きなものかと思っています。田植えと稲刈りについて、5年生が地域の農家の方に指導をしていただきながら、毎年実施しているものです。

代かきの作業については、5年生だけではなく全校で取り組んでおりまして、ちょうどこの時期、「どろんこ遊び」ということで、全校児童が日替わりで田んぼに出かけています。実は今日もその日だったので、校庭がどろんこを洗った水で濡れているんですよ。ほかには、2年生がさつまいもの苗植えと収穫体験をしていたりもします。

文化的な行事としては、11月の「くすの木音楽会」が大きなものでしょうか。これは各学年が合奏や合唱など披露するもので、今年から学年を分けて2日間の日程で行う予定です。保護者の方にも公開するので、ぜひ多くの方にご来校いただければと思っています。

稲作体験などの活動も盛ん
稲作体験などの活動も盛ん

――保護者や地域との連携について教えてください

本校は保護者、PTA、地域とのつながりが比較的強い学校といえるかと思います。PTAについては、アルミ缶の回収、木工教室、夏休みの校庭整備など、さまざまな活動を行っていただいているほか、有志で結成された「PTAバレー部」がありまして、こちらもかなり本格的に活動しています。父親で作る「おやじの会」もありまして、こちらは、主に公民館が主催する事業のお手伝をしていただいています。

PTA役員になっていない保護者の方もいらっしゃいますが、落ち葉掃きのボランティアなど、年間を通して1回以上、何かの活動に参加していただけるよう呼びかけておりまして、ほとんどの方にご賛同いただいており、保護者間の関係も非常に良好です。

昨今は何かとPTAの悪い評判も立っていますが、本校のPTAは学校行事のお手伝いや登下校の見守りなど、学校教育を支えるとても大切な活動になっておりますし、皆さんも積極的に、楽しく参加いただいている様子です。私も、PTAは「P(ぱっと)T(楽しく)A(集まろう)」なんてことを言いながら、楽しい活動を目指してもらえるよう、見守っております。

地域の方の連携という部分では、先ほどから申し上げていますように、大凧作りの指導や、稲作や畑作の土地の提供や指導などが大きなものでしょうか。その他、校内の樹木の剪定を地元の造園業者さんが「仕事始め」として、無料奉仕していただいているという伝統もあります。本当に、地域の方が学校をとても大切に思ってくださっているということだと思います。

廊下の光景
廊下の光景

――教育と子育てという視点から、学校周辺の環境についてどう思われますか?

学校周辺ということですと、JR線沿いには桜並木がありますし、学校の北東側には「勝坂遺跡」もありますし、西側には水田が広がっています。大凧のほか、シバサクラでも有名な相模川もすぐ近くですし、学校から西を眺めれば、丹沢大山の雄大な姿を見られます。このような自然豊かな環境にあって、昔ながらの地域のつながりがしっかり残っているという、とても温かな街だと思っています。こういった地域で子育てをできることは素晴らしいことだと思いますね。

昨今は新しい住宅も増えてきておりますが、昔からのご家庭と、新しいご家庭もうまく融合している印象で、本校にも、落ち着いた家庭環境で育った、礼儀正しい子どもたちが多いですね。これは学校の努力だけではなく、保護者にもしっかり愛され、育てられているという証拠かと思います。

もう一つ言えば、相模原市は待機児童が3年連続ゼロという自治体ですから、ご両親とも働かれているご家庭にとっては、特に子育てをしやすい環境があると思います。

相武台下エリアは自然環境に恵まれている
相武台下エリアは自然環境に恵まれている

――相武台下エリアの住み心地の良さや魅力はどんなところだと思いますか?

「相武台下」駅はJR横浜線や京王線に乗り継ぎやすい駅ですので、横浜にも東京にも出やすいですし、車での移動についても、圏央道のインターが近くにできまして、利便性はぐっと高まりました。スーパーには車ですぐに出られますし、「相模大野」駅や「海老名」駅の市街地にもスムーズに出られます。これほど自然環境に恵まれていながらも、利便性は十分に高いエリアだと感じています。。

くすの木に見守られて子どもたちが育っていく
くすの木に見守られて子どもたちが育っていく

――最後に、校長先生の考える「新磯小学校」のおすすめポイントを教えてください。

やはり、校庭にくすの木の大樹があるという点と、伝統的な凧作りがあるという点でしょう。それに加えて、学校と保護者と地域が一つになって、子どもたちを温かく見守っていることと、教職員が労力を惜しまず、子どもの視線に立って支援しているということです。

手前味噌ながら、本校は非常に素晴らしい小学校だと思いますので、ぜひ多くの方に、本校の学区内にお住まいいただければと思っております。

相模原市立新磯小学校 校長 青木正利先生

相模原市立新磯小学校

校長 青木正利先生
所在地:神奈川県相模原市南区磯部1028-5
URL:http://www.sagamihara-araiso-e.ed.jp/
※この情報は2017(平成29)年5月時点のものです。

校庭の中心にそびえ立つ、巨大なくすの木がシンボル。伝統的な凧作りを通して地域とつながる相模原市立新磯小学校
所在地:神奈川県相模原市南区磯部1028-5 
電話番号:046-251-0214
http://www.sagamihara-araiso-e.ed.jp/




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