なんとも穏やかな空間だ。和と洋の調和の取れた内装。洒落た洋楽のBGM。置かれたハイセンスなインテリア。人でにぎわっているのにかかわらず、もの静かさがある。きっとこの穏やかな空間が人を魅了するのであろう。みんな口数が少なく、ここにいる時間を堪能しているようだ。

ここは「鞍馬口」駅近くにある「フランジパニ（Prangipani）」。大きなガラス窓と背の高い木製の扉という外観が印象的な古民家を改装したカフェだ。かつてこの場所には、薩摩藩の西郷隆盛と長州藩の桂小五郎が薩長同盟を締結した舞台として知られる「御花畑御屋敷」があった。まさに時代が動いた歴史的な場所なのである。そのような歴史的な場所に16年前にオープンしたのが同店なのだ。

店内はワンフロアだが、手前が洋風スペース、奥が座敷の和風スペースという趣きの違う空間が共存している。洋風スペースには1人〜2人用の席が用意され、少人数でゆったりできる空間となっている。和風スペースの奥には中庭があり、和の雰囲気をさらに堪能できる。床の間に配置された花も品格を演出しているのだ。

同店は、京都を舞台にした映画『マザーウォーター』のロケ地としても知られている。映画内ではウイスキーしか置かないバーという設定だが、もちろん同店にはウイスキーは置いていない。つまり、バーとしての雰囲気もある、まさに大人の空間という印象だ。

メニューはシンプルに2ページ。店主に「どれがおすすめですか？」と尋ねると「すべて心を込めて作っています。」と笑顔で返答。同店が多くの人に愛されていることに腑が落ちた。選んだのは、ミニサラダ付きのケーク・サレ（塩味のケーク）。ケークとはフランス生まれの甘くないおかずケーキのことだ。「玉ねぎとベーコンにグリエールチーズのケーク」と「チーズのキャベツ巻きとツナのケーク」の2種類の用意があり、前者をチョイス。外はサクサクで、中はしっとり。ドシっとしていて、ボリューム感がある。味わい深く、食が止まらなくなるほど美味しいのだ。

食後には「クリームあんみつ」をチョイス。品のある甘味で、身も心も癒やされる。ベイクドチーズケーキ又はガトーショコラを選べる手作りケーキも見逃せない。「ゆっくり好きなように、自分の時間に楽しんでいただきたい。」と店主。その言葉に甘んじて、自分の時間を堪能する。まさに癒やしの時間となるのだ。

当エリアには歴史的名所が点在しているので、歴史巡りをした後にぜひ立ち寄っていただきたい。

フランジパニ（Prangipani）
所在地：京都府京都市上京区室町通鞍馬口下ル森之木町462 
電話番号：075-411-2245
営業時間：10:00～18:00
定休日：木・日曜日、月1回不定休