神戸市立相楽園
北野の街並みからほんの数分歩いた閑静な住宅街の中に佇む庭園「相楽園」。もとは三田藩の財政改革に参画し輸入商社である「志摩三商会」を設立し成功を納めたひとり、小寺泰次郎氏の邸宅。不動産・金融業でも成功を納め大富豪となり、明治末期に作り上げたものだ。当時は「小寺邸」とか、たくさんの蘇鉄(ソテツ)が植えられていることから「蘇鉄園」と呼ばれていたが、1941(昭和16)年に神戸市に譲渡された際に「相楽園」と名付けられた。この名は、中国の古書「易経」の一節にあたる「和悦相楽(わしてよろこびあいたのしむ)」に由来している。
園内は、歴史ある建物と植物が競演しているかのよう。重要文化財に指定されている建物たちが、多種多彩な植物の中で、季節の移り変わりとともに表情を変えているのだ。
「相楽園」にある重要文化財は、「旧小寺家厩舎」「船屋形」「旧ハッサム住宅」の3つ。「旧小寺家厩舎」は、小寺謙吉氏が河合浩蔵氏に設計を依頼して1910(明治43)年頃に建築した厩舎。戦争・震災を免れて当時の姿をそのままに残している。
「船屋形」は、江戸時代に姫路藩主が河川での遊覧に使っていた「川御座船」の屋形部分を陸上げしたもの。建造年代は1682(天和2)年~1704(宝永元)年の間と推定されていて、春慶塗や黒漆塗、金箔を施した飾り金具など、とても華麗で繊細な造りとなっている。
「旧ハッサム住宅」は英国人貿易商のハッサム氏が1902(明治35)年頃に建てたもので、木造2階建、寄棟造棧瓦葺の和洋折衷建築物。異人館街にあったものを、1963(昭和38)年にここ「相楽園」に移築した。
一方、明治期の欧米化の影響を受けて併設された広場は、日本式庭園がベースとなっている。大きな池が中心に配され、その周囲に順路が巡らされている。100株を超える蘇鉄は1907(明治40)年に鹿児島から移植されたと言われているもので、中でも樹齢約300年の蘇鉄は神戸市の「名木」にも指定されている。また、庭園中央にある大きなクスノキも樹齢500年を超えている。
8月の終わり頃には、夏の風物詩として庭園内にろうそくの灯をともす「にわのあかり」が行われる。10月の中旬あたりから一か月間ほどは「神戸菊花展」が、1月上旬から中旬にかけては「冬ぼたん展」が開催される。花を楽しむだけでなく音楽ライブを行ったり、中庭に七輪を置いて肉を焼いたりと、時代にあったイベントも庭園にあった工夫を凝らして実施している。
開国した当時の欧米化と和が折衷したような雰囲気を感じさせ、荘厳でもあり、神戸らしさも感じられる「相楽園」。是非、長い歴史を感じながら過ごすゆっくりとした時間を楽しみに、訪れてみて欲しい。
神戸市立相楽園
所在地:兵庫県神戸市中央区中山手通5-3-1
電話番号:078-351-5155
開園時間:9:00~17:00(入園は16:30まで)
休園日:木曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始(12/29~1/3)
http://www.sorakuen.com/