市民一体の“宝塚文化”を創造するコミュニティFM「FM宝塚」の取り組み/FM宝塚 制作統括プロデューサー 亀井竜輔さん


現在では数多く存在しているローカルコミュニティFM局。それぞれの局がローカル色を豊かに、地域に密着したブロードキャストを行っている。“宝塚”という土地のブランドイメージの強い宝塚において「FM宝塚」はどんな取り組みを行い、情報発信を行っているのか。今回は制作統括プロデューサーの亀井さんに話をうかがった。

「FM宝塚」スタジオ
「FM宝塚」スタジオ

――まず、「FM宝塚」の開局の経緯から、お話をうかがわせてください

亀井さん:FM宝塚は「阪神・淡路大震災」がきっかけになっています。阪神大震災の時、当時はまだ携帯が普及しておらず、いろんな情報が錯綜するなかで、ラジオ放送からの情報が非常に重要な役割を果たしたということがあり、それがFM宝塚の開局につながりました。現在では携帯電話やインターネットも普及していますが、情報インフラとしての安定性や情報発信の信頼性において、ラジオ放送の重要性は、その後の震災や台風などの自然災害が発生する度に再認識されています。FM宝塚の開局経緯は、そんな災害をきっかけとして開局したコミュニティFMなのです。

――なるほど、“宝塚”という地名のブランド感が強いので、もっと別のきっかけがあったのかと思いましたが、本当に意外です

亀井さん:もちろん、現在の番組ではそういう宝塚を意識した番組作りも行っています。ですが、震災がきっかけで開局したという経緯もあって、開局から現在に至るまで、各番組の骨子には、地域ごとに密着した有益な生活情報を提供する、という考えから、宝塚の街の歴史や文化に基づいた番組作りが行われています。またそれがFM宝塚のコミュニティFM局としての役割だと考えています。

「宝塚防災&ウォーク」
「宝塚防災&ウォーク」

――そういったFM宝塚ならではの番組やイベントを紹介していただけませんか

亀井さん:今年1月に放送した「宝塚防災&ウォーク」という特別番組があります。宝塚は歴史にも溢れた土地で、古くからの寺社仏閣や宿場跡も多いのです。そんな宝塚の街を「防災・減災」を考えながら歩く楽しい企画として行っている番組です。ウォークナビゲーターとしてのFM宝塚のパーソナリティでもある笑福亭瓶吾さんと、宝塚市の危機管理監の方をお招きしたゲストパーソナリティとの、お二人の案内のもとで、「大本山中山寺」から「小濱宿」、防災公園としての指定されている「末広中央公園」の5.3キロの道のりの街歩きを、リアルタイムの中継で放送しました。これには参加募集した一般リスナーの方が参加費無料で大勢参加され、たいへん好評でした。

歌劇の街、宝塚ですから歌をテーマにしたエンターテイメントのイベントも行っています。「宝塚歌謡選手権」では予選から、すべての大会をノーカットで放送します。今年から新たな部門に「アニメソング」が加わり、「歌謡曲」「シャンソン」「一般」「アニメソング」と4部門からのエントリーになります。

日本で初めてシャンソンが歌われた街が、ここ宝塚ですから、しっかりと部門にも組み込まれています。「宝塚シャンソン化計画」を主宰され、当局でも「宝塚とシャンソンの熱~い関係」(毎週木曜日10:15~10:30)のパーソナリティを務める、須山公美子さんも審査員のひとりです。

“宝塚”ならではという番組作りも、もちろん行っていて、タカラジェンヌさんをゲストパーソナリティにお招きした番組も人気があります。

「宝塚歌謡選手権」
「宝塚歌謡選手権」

――そういう部分でしっかりと“宝塚”を打ち出しているのですね

亀井さん:そうですね。でも、宝塚のステレオタイプなイメージにとらわれた番組ばかりでもないんですよ。FM宝塚の番組の編成方針のひとつにもなっていることなのですが、多くの人に聴いてもらうため、自分好みの番組がひとつは見つかるように、バラエティにあふれた番組作りを行っています。

――何かひとつ紹介してもらえますか

亀井さん:毎週水曜日の19:10から放送している「ラジ・ドキッ」です。毎週、中学生のクラブ活道を取材したり、中学生・高校生に人気のあるエンタメ情報の紹介などを行っています。将来の仕事を語る、「ゆめ★ナビ」など週替りのコーナーで構成されていて、中学生・高校生からはたくさんの便りが集まります。

年齢層、シングルや家族などの生活形態等、どんな人でも番組のなかには必ず興味を持ってもらえるものがある、それがFM宝塚、という意識で番組作りをしています。

――番組のことで、もうひとつ、「治虫くらぶ」について、教えていただけませんか

亀井さん:治虫というのは、もちろん手塚治虫さんのことです。幼少の多感な時期を宝塚で過ごしたことでも知られる手塚治虫さんの情報や、「宝塚市立手塚治虫記念館」の情報も伝えている番組です。また、手塚治虫さんの作品のなかには、あまり知られていない短編作品も多くあるのです。「治虫くらぶ」では、そんな手塚治虫さんの短編作品のさわりを紹介して、興味を持ってもらえたら、ぜひご自身で手にとって作品に触れてみてほしい。そんなスタイルの番組でもあります。

――わたし、むかしに手塚さんの短編をいくつか読んだことがあります。メジャーな作品とはイメージの違う、少しダークな社会風刺的なものがあったと記憶してます

亀井さん:ぜひ、番組でも触れてみてください!

「FM宝塚」は阪急逆瀬川駅にほど近い
「FM宝塚」は阪急逆瀬川駅にほど近い

――FM宝塚として、今後どんな放送局を目指していくか。どのように地域と関わっていくかをお聞かせください

亀井さん:やはり地域と密着して、地域の活性にも繋がる、情報の発信と受け手が密にコミュニケーションを取れるような番組作りを進めていきたいと考えています。そういう番組作りの一環として西谷地域を1年半にわたり、いろんな角度から紹介する番組も継続していました。西谷地域の自然、地域のお祭り、田植え体験など、様々な切り口で紹介して、FM宝塚の全ての番組のなかで取り上げる、という企画です。「来て!見て!知って!西谷の里」という番組企画で、2012(平成24)年「近畿コミュニティ放送賞」の「放送活動部門」で賞をいただきました。
これからも市民が主役、市民が発信者となって、「FM宝塚」の放送を通じていろいろな方が繋がっていく、そんな放送局を目指していきます。

――では、最後に亀井さんから見た、宝塚の街の魅力を教えていただけませんか

亀井さん:都会すぎず、田舎過ぎず、絶妙な雰囲気のバランスがあって、暮らしやすいです。古くからの歴史を感じる場所もあり、日本でいち早く西洋風の街づくりを取り入れた「宝塚」駅周辺の街作りであったり、西谷地区の自然など。自然と文化的環境の豊富な宝塚は住んでいて「宝塚以外に離れたくない」と思える場所ですね。

FM宝塚が入居する「アピア2」
FM宝塚が入居する「アピア2」

亀井竜輔さん
亀井竜輔さん

FM宝塚

制作統括プロデューサー 亀井竜輔さん
取締役局長 温井甚祐さん
所在地 :宝塚市逆瀬川1-11-1 アピア2 2F
TEL:0797-76-5432
URL:http://835.jp/
※この情報は2016(平成28)年8月時点のものです。

市民一体の“宝塚文化”を創造するコミュニティFM「FM宝塚」の取り組み/FM宝塚 制作統括プロデューサー 亀井竜輔さん
所在地:兵庫県宝塚市逆瀬川1-11-1 アピア2 2F
電話番号:0797-76-5432
http://835.jp/