新座鞍馬

新座鞍馬
新座鞍馬

志木街道沿いには「松鶴庵」、「夢笑」といった実力派の有名店をはじめ、多くの蕎麦屋が点在している。今回訪れた「新座鞍馬」は、それら蕎麦屋とは一線を画し、「手づくり」の本格蕎麦に徹底的にこだわる名店である。新座から歩いて約20分、あたごグリーンゴルフというゴルフの打ちっぱなしを過ぎると木造の日本家屋でいい塩梅にわびた風情のにじむ外観が出迎えてくれる。

玄関に入ると、まず木の温かみが感じられ、ガラスばりの蕎麦打ち場が目に入る。客間は旅館の雰囲気が漂う広々とした座敷になっている。貼り替えたばかりなのか、日本人なら誰しもが好きな畳のい草の匂いが心地よい。営業時間は午前10時からラストオーダーの2時半までとあって、お昼にのんびり蕎麦を堪能するにはうってつけの空間といえる。

新座鞍馬
新座鞍馬

店主・佐藤正弘氏はその道20年にわたるプロの蕎麦料理人。地元であるこの土地で店を構えて12年目を迎え、自らの畑で蕎麦の自家栽培を実践している。今は収穫量が限られ、1日の提供できる蕎麦は限られているが、今後は二期作にし、すべてをまかなえるようにしていくという。

毎朝5時から開店時間まで製粉作業と蕎麦打ちをこなすだけでなく、週に2回、蕎麦の実から脱穀する作業をこなす。この脱穀作業は、蕎麦の実の大きさで蕎麦の味、香り、食感、色合いのバランスが左右されるため、数ミリ単位の誤差も許されないふるいわけに時間と神経を使う作業で、佐藤氏の蕎麦に対して一切の妥協もしない姿勢があらわれている。また、季節や気温によって常に変化する蕎麦を取り巻く状況に応じて、製粉、打ち方など、その作業内容を繊細緻密に変えている。それは、佐藤氏自らが思い描く理想的なそばを、より厳密に生みだすための営為といえる。

主な蕎麦のメニューは「玄挽き地そば」と「荒挽き地そば」。玄挽き地そばは、玄蕎麦を使用した素朴な風味が特徴で、荒挽き地そばは丸ヌキ蕎麦を使用した粗めの粉でつくられた豊かな風味が特徴である。どちらも有機自家栽培の蕎麦を使用している十割そば。ところで丸ヌキそばとは蕎麦殻を除去した蕎麦の実のことで、先ほど挙げた佐藤氏の作業の賜物である。

新座鞍馬
新座鞍馬

まず前菜として「かけ汁の旬野菜浸し」をいただいた。これは、その名のとおりその時その時で最も旬な野菜を使っている。今回はパプリカ、じゃがいも、カブ、フキ、トマトというラインナップであった。旬の味覚をあっさりしたかけ汁で食すことで、口の中がさっぱりし、次に口にするものを鮮烈に味わうことができるという効果がある。そういうわけで、蕎麦を食べる準備が整ったわけである。

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