【朝霞市】老舗の味で江戸の歴史を感じられる膝折宿
朝霞市は、埼玉県の南部に位置する市で、人口は約14.1万人です。朝霞市の中心部はかつて膝折村と呼ばれていましたが、1932(昭和7)年に町制を施行する際、この地に移転してきた東京ゴルフ倶楽部の名誉総裁であり、皇族でもあった朝香宮鳩彦王にちなんで朝霞と名づけられました。また、膝折という地名は古く、室町時代の文書にも太田道灌が膝折に陣を構えたとの記録が残されています。
膝折は江戸時代には、川越街道の宿場町として栄えた街です。川越街道は、江戸から親藩川越藩を結ぶ道路として整備され、膝折宿は江戸から数えて4番目の宿場町でした。川越側から上宿、中宿、下宿に分けられ、現在の「膝折郵便局」付近に膝折宿の本陣があったといわれています。「膝折郵便局」近くの「旧脇本陣村田屋」は今も重厚な建物が残り、江戸の面影を感じることができます。
江戸時代の膝折宿では、銅や真鍮などを針金などに加工する伸銅が盛んに行われていたといいます。これは黒目川の流れを利用した水車を動力としたもので、やがて現在の新座市片山にも広まり、この付近一帯は埼玉県有数の伸銅生産地となりました。
また、膝折宿の北側では醤油造りも行われていました。これが、1865(慶応元)年に創業した「塩味醤油醸造」です。1887(明治20)年にはヤマヤナギという商標を取得、朝霞市周辺のほか富士見市方面まで出荷するようになり、地場醤油製造業者として、このエリアでは親しまれていた存在でした。昭和50年代になると、大手業者との競合が激しくなったため、規模を縮小。1985(昭和60)年ごろにいったん廃業してしまいます。その後、1992(平成4)年に醸造所を新たに建築、製造・販売を再開しました。
国内産の大豆と地元の武蔵野台地で採れた小麦を使い、良質の麹で発酵させるという伝統の技法で作られた醤油は、ふくよかな味で今もファンは多いといいます。
「塩味醤油醸造」には明治時代に建てられた倉庫を生かした「醤油資料館」があり、昔の醤油造りの道具や醤油造りの過程を説明したパネル展示などを見ることができるほか、毎年1回、特別公開が行われ、醸造所内を見学することができます。
かつての「膝折宿」の南側に店を構える和菓子店「喜楽屋」も江戸末期に創業した老舗です。近年は、朝霞で採れる新鮮な人参を使った「人参羊羹」や「人参どらやき」なども名物になり、「人参羊羹」は朝霞ブランドのひとつに認定されるなど人気を集めています。
交通アクセスに恵まれたベッドタウンとして発展し、多くのショッピング施設も集まる朝霞市ですが、市内には江戸時代からの歴史が息づいている場所も、まだたくさんあります。
朝霞市のアクセス情報
朝霞駅の中心部にある「朝霞」駅には東武東上線が乗り入れています。「朝霞」駅には各駅停車のほか準急も停車し、「池袋」駅からの所要時間は約16分です。また、東京メトロ有楽町線や東京メトロ副都心線に直通する電車もあり、「有楽町」駅からは有楽町線の東上線直通電車で約38分、「渋谷」駅からは約30分で移動できます。「朝霞」駅の隣の「朝霞台」駅はJR武蔵野線の「北朝霞」駅に隣接しており、「武蔵浦和」駅や「南浦和」駅などさいたま市方面への移動も便利です。
【朝霞市】老舗の味で江戸の歴史を感じられる膝折宿
所在地:埼玉県朝霞市