さいたま市立常盤小学校
校長 山下成明先生
文教地区の伝統校の、
誇りある学校を目指した取り組み
「北浦和」駅西側の文教地区にあり、学業優秀な公立小学校として県内外にその名を知られている「さいたま市立 常盤小学校」。この学校に通わせるために、北浦和の地を選んで移住するファミリー層も多いという。公立という制限の多い環境の中で、いかにして常盤小が“学業優秀”の伝統を守り続けてきたのか。その背景にあるさまざまな理由を、平成24年度から校長に就任した山下成明先生にお尋ねした。
常盤小はたいへん歴史と伝統のある学校とお聞きしました。
学校としての創立は昭和2(1927)年、「埼玉県北足立郡浦和町立浦和尋常高等小学校分校」として始まりました。その後昭和5(1930)年に「浦和尋常小学校」、戦後には「浦和市立常盤小学校」となり、人口増にともなう仲町小、常盤北小への分離を経て現在に至っています。かつては浦和市立小学校でしたが、平成13(2001)年のさいたま市誕生後は、さいたま市立小学校となっています。
たいへん人気が高い学校ということで、やはり遠方から通う児童もいるのでしょうか?
子どもを本校に通わせるために北浦和に引っ越してきた、という保護者の方のお話はしばしば聞きますし、海外赴任をされている日本人の方から、「日本に戻ったら北浦和に住みたい。体験入学はできるか?」という問い合わせをいただくことも多いです。但し、あくまでも「さいたま市の市立小学校」ですので、学区外からの児童は受け入れておりません。特例として、就学途中に他の場所に引っ越された場合などは他学区からの受け入れもしておりますが、引越し先の小学校ではなく、遠くても常盤小まで通ってくれるお子さんが多いというのは、本校の人気を裏付けているのかもしれません。
常盤小学校と言えば高い学力に定評がありますが、
その秘密がどこにあると思われますか?
実は最近の「全国学力テスト」において、さいたま市の小学校の平均点は全国の都道府県・政令指定都市の中で上から3番目くらいの成績でした。埼玉県全体としては全国平均以下でしたので、さいたま市の小学校は突出して学力が高いエリアと言えるでしょう。詳しい数字などは公表していませんが、常盤小学校はさいたま市の小学校を牽引してきた小学校ですので、学力レベルが非常に高いのは確かです。
本校が高い学力を維持している理由のひとつは、まずひとつに、北浦和にお住まいの人々の「地域性」にあると思います。さいたま市内でも、特にここ北浦和の周辺は昔から大企業の社宅などが多くありまして、教育熱心なご家庭が多かったんですね。今は時代の流れで社宅などは減っていますが、都心の大企業に勤める方がこの辺りにマンションを購入されることが多いようでして、地域ぐるみで教育熱心な風土は引き継がれています。
こういった教育熱心な家庭はしつけも良くできていまして、子ども達の水準も年々上がっています。私は10年前にもここで教頭をやっていたのですが、その頃と比べても、子ども達の“しつけ”の向上は明確ですね。新築の高層マンションが増え、転入される方も増えましたから、その影響なのでしょう。
もともと教育熱心な人が集まる環境、立地だったということですね。
その他、学校側の要因もあるのでしょうか?
教員側の意識の高さ、指導スキルの高さではないでしょうか。昔からこの浦和地区に指導力のある先生方が集中していたのですが、さいたま市として合併した今では、さいたま市全体の教育水準が上がってきています。これは浦和の先生方が及ぼした影響でしょう。さいたま市では先生方同士で指導スキルを磨くための授業研究を非常に頻繁に行っておりますし、学校の枠を超えた教諭同士の交流もさかんです。常盤小はそういった授業研究の対象校となることが多く、教諭の意識も特に高いですから、全国的にも最先端の教育を体験できるかと思います。先生方に対するきめ細かい指導があり、先生方同士でも切磋琢磨し、フォローをしあう風土が築かれている。これが高い教育水準に繋がっているのかと思います。先生がいい授業をすれば児童はついてきますし、学力も自然と上がっていくのです。
授業内容や指導方法で、
他校にはない特徴的な点などはありますか?
日本の子ども達は合意形成すること、つまり議論をすることが苦手ですよね。それは今まで、日本の学校では「議論すること」についてほとんど扱っていなかったからなんです。常盤小の授業の中ではディベートの要素もかなり取り入れており、子供同士で意見を言い合い、合意を形成し、解決へ導くよう意識的に指導しています。他校では静まり返ってしまう学級会の時間も、常盤小ではさかんに意見が飛び交います。子ども達の意見をまとめるには臨機応変に対応する高い指導スキルが必要ですが、先生方がとても頑張ってくださっているんですね。
数年前からはさいたま市教育委員会の小・中一貫「英会話研究指定校」となり、先進的な英会話教育に取り組んできましたし、昨年度には国語・算数・体育の3教科について「研究推進校」となりました。その他にも図工や音楽など、芸術系の教科にも熱心な先生方がいらっしゃって、児童ののびのびとした作品にはいつも驚かされています。今後の新たな方針としては、学校内を無線LANで結び、ストリーミング動画を用いた授業を行うなど、ネットワークを活用した授業にも取り組んでいきたいと思っています。
その他珍しい特徴としては、本校は独自の取り組みとして「健康教育」にとても力を入れていまして、特に歯の健康に関しては、児童の虫歯保有率が0.12、つまり10人に1本という数字を誇っており、国でもトップクラスです。歯の健康教育は常盤小の伝統でして、ほぼ毎年「学校保健優良学校」として表彰されています。また、ここ数年、吹奏楽部の活躍もめざましく、西関東大会、東日本大会などに出場し、優秀な成績を収めています。
子どもの様子について相談する窓口や、
保護者との連携体制などはあるのでしょうか。
全国的にもそうだと思いますが、特に浦和のお父さん方は企業でバリバリ働いていらっしゃる方が多いですから、お母さん方の負担が重くなりがちで、悩みをひとりで抱え込んでしまう方も多いようです。
さいたま市にはスクールカウンセラーが巡回する「さわやか相談員」という制度がありまして、常盤小には週に1回の頻度で訪問してもらっています。ここでは児童の相談だけではなく、保護者からの相談にも対応していますので、利用していただければと思います。
それ以外にも、学校生活の中で「少し問題が見えたな」と担任や教科担任が感じた時点で、保護者と先生方でプロジェクトチームを作ります。普通ですと、問題が大きくなるまでは保護者だけ、または担任の先生だけで抱え込んでしまいがちですが、本校では問題が小さなうちからチームで対応するようにしています。そのほうが解決も早いし、保護者や担任の負担も小さく済むためです。本校は転校してくる子ども達がとても多く、環境の違いで戸惑ってしまうケースも多いですから、子どもの「心のケア」は特に大切にしています。
最後に、山下先生がお考えの“北浦和の魅力”について教えてください。
私も長く教育に関わってきまして、「孟母三遷」(子どもの教育には環境が大事)という言葉は間違いないと実感しています。北浦和は伝統的に教育に対して非常に意識が高く、逆に犯罪率は非常に低い地域ですので、お子さんを健やかに育てるには理想的な環境だと思います。常盤小の卒業生には、母校を自慢に、誇りに思ってくれている方が多いと聞きます。ぜひこの地で、豊かな子育てをしていただければと思います。
今回、話を聞いた人さいたま市立常盤小学校
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さいたま市立常盤小学校
所在地:埼玉県さいたま市浦和区常盤9-30-9
電話番号:048-831-2349
http://tokiwa-e.saitama-city.ed.jp/