地域に支えられ、子どもが育つ「市川市立福栄小学校」
1981(昭和56)年の「南行徳」駅の開業にともない開発が進んだ南行徳〜福栄地区。その中心にある「市川市立福栄小学校」は、地域の方々の協力を得ながら、地域と共に日々の教育活動に励んでいる。「子どもとの信頼関係を最優先に」との思いを語る杉本校長先生に、学校のこと・地域のことをお伺いした。
地域に支えられ、兄弟のように仲良く育つ子どもたち
――まず「市川市立福栄小学校」の概要についてお聞かせください。
この周辺は南行徳駅ができたことをきっかけに開発された街で、本校は先にできた「市川市立富美浜小学校」から分離独立し、1985(昭和60)年4月に開校しました。今年で33年目を迎える、比較的新しい学校です。
現在全学年2クラスずつ、全校生徒281人のこじんまりとした学校です。「活力ある心豊かな子どもの育成」という教育目標を掲げ、めざす児童像を「しっかり考える子ども」「思いやりのある子ども」「健康でたくましい子ども」と設定し日々の教育活動に励んでおります。
――特徴のある取り組みなどがありましたら、教えてください。
本校では1年生〜6年生の全学年が入る8〜9人の縦割りグループを、全校で36グループつくり、一緒に遠足に行ったり、お弁当をグランドで食べたりと交流する機会を多く設けています。10人未満の少人数グループなので、とても仲良くなることはもちろん、各自の個性を理解し合い尊重し合えるようになるようです。兄弟が少なくなり、学校以外で異学年同士の交流が取りにくくなっていますので、学校での縦割り交流は新鮮で学ぶところが大きいと思います。 また縦割りとは別に、交流仲間委員会の児童が企画をする「お楽しみ会」も、年に2〜3回開かれています。これは全校生徒が一同に参加してゲームなどをする催しなのですが、人数が少ないこともあって皆で盛り上がって本当に楽しそうです。
全校で一緒に何かしようと考えても、300人未満ですのでまとまりやすく、活動がしやすいので、全校生徒のまとまりがよく、実に仲がよくて羨ましいくらいです。
市民図書室と学校図書室、本に囲まれた恵まれた環境
――秋に行われている「読書発表会」とはどのような会なのですか?
これは毎年10月末に行われている行事で、学年ごとにテーマを決めて本を読み、調べて考えを発表をする会です。毎年6年生はそのテーマに沿った創作劇を自分たちで作り、披露します。学年40名ほどですので全員に大事な役がつき、非常に見応えがあります。昨年は全校で「海洋プロジェクト」に取り組んでおりましたので、読書発表会のテーマも「海」に設定し、各学年ごとに海に関する表現や歌、6年生は創作劇を披露しました。
また3年に1回の読書発表会は、1人の作家さんにテーマを絞り、その方の作品を読んで発表をする会にしており、作家さん本人にも学校に来ていただき、読書発表会を見ていただきます。自分の作品を子どもたちが解釈して発表を行うので、作家の方にとっては新鮮なようで、とても喜んでくださいました。 この読書発表会とは別に春と秋の読書旬間も設け、昨年は海洋プロジェクトにちなんで春は子どもたちが魚を手作りし、水族館のように模造紙にはりつけました。これは今でもピロティに飾ってあるので、学校を訪れた保護者の方々にも見ていただいています。秋の読書旬間には自分たちが住んでいる行徳の海について学び、その成り立ちや歴史などについても深く理解を進めました。
――学校全体として読書に力を入れていらっしゃるんですね。
学校内に市民図書室もあり、学校の図書室と同様に子どもたちも自由に利用できる環境です。市川市内には4つの小学校内に市民図書室が併設されており、地域の方々によって運営されています。それぞれの図書室には1万〜2万冊程度の蔵書があって、一般市民向けの書籍が多く書棚に並んでいます。隣の部屋には学校の図書室もあり、子どもたちは大人向けの本が読みたいときは市民図書室に、調べ物や子ども向けの本が必要なときは学校の図書室と使い分けているようです。本離れが嘆かれていますが、本校の子どもたちは多くの本に触れ合う機会が与えられており、恵まれている環境だと思います。
市民図書室は地域の方々により運営されていることもあり、多くの方々が自由に学校に出入りできるようになっていまして、まさに本校は地域に開かれた学校です。自然に地域の方々との交流が図れるという面でも、子どもには利点が多いと思います。また毎週水曜日の朝会では、地域の読み聞かせボランティアの方々が絵本の読み聞かせをしてくださいますので、子どもにとっては本や読書が身近な存在になっているのだと思います。
――福栄フェスティバルというお祭りも開催されているのですね。
これは午前中に「読書発表会」を終えて、午後から開かれる地域文化祭のようなものです。大規模なバザーが学校内で開かれ、保護者が企画するクレープやドーナッツ、おにぎりの露店が出たりして、子どもたちにとっては非常に楽しいイベントになっています。また父の会が主宰するゲームコーナーもあり、昨年はキャタピラーゲームを企画していたようですね。
子どもを真ん中に、地域と保護者と学校が協力し合う恵まれた環境
――コミュニティスクール(地域とともにある学校)として指定を受けていらっしゃいますが、実際の活動はどのようなものなのでしょうか?
コミュニティスクールに指定されると、地域の学術経験者や民生委員さん、自治会、保護者代表などで学校運営委員会というものが結成されます。そこでは学校運営に関してさまざまな意見交換がなされ、教育活動についてのアドバイスや意見などを述べる機会になっています。またこの運営委員会は教育委員会に対して教職員に関する要望を出すことができます。
――地域の方々が学校の教育活動にとても協力的だとお聞きしました。
はい、それが本校の大きな特徴にもなっています。本校は福栄1丁目と3丁目が学区になっているのですが、その自治会長さんもよく学校に来ていただいています。また、本校出身で元Jリーガーである方のお父さまで、子どもたちにサッカーを教えてくださるなど、多くの方にご協力いただいています。
また2ヶ月に1回は本校で防災訓練が行われ、いざというときにどうすべきか地域の方々とも一緒に考え、行動する練習が日頃から習慣づけられています。前回の訓練では体育館に集合して炊き出しをし、実際に避難所として使われた場合にどうするかも体験しました。地域の結束が強いことは、災害時に非常に有効といわれますので、この周辺はお互い助け合える安心な地域だと思います。
――コミュニティサポート委員会の活動はどのようなものなのでしょうか?
これは子どもを中心において、学校・家庭・地域の連携を推進し、力を合わせて活動するための連絡調整・意見交換の場です。学校やPTA、自治体、コミュニティクラブ、子ども会、学校施設を利用している社会体育のメンバーの方々などに参加していただいています。様々な活動をしていますが、一つは「コミサポ寺子屋」です。これはもともとマンションの一室を利用した寺子屋のような取り組みを、「学校の子どもたちにも広く教えてほしい」という声を受け、現在は学校でも地域の方々を講師としてお迎えし、低学年は毎週火曜日に、高学年は毎週水曜日に寺子屋を開いています。地域の方々の力をお借りして、学校活動をよりよいものにしようというこの取り組みが評価され、市川市が予算をつけてくれるまでになりました。
――日々の教育活動で気をつけていらっしゃることはありますか?
まず子どもたちが「わかった!」と思えるような授業を行うことです。実際に学んだことを定着させるには時間がかかりますが、授業を聞いた段階で「わかった」と思えることが非常に大切です。先生方も授業のみならず子どもの指導、行事対応など本当に大変なのですが、学習指導には特に力を入れてほしいと伝えています。
また先生方には子どもとの「調整役」になってほしいとお願いしています。これは授業でも友達関係でも同じなのですが、子どもの話をよく聞き、子どもの気持ちを大切にしながら、間に入って調整をするのはとても大事な役割。これは先生でなければできない仕事です。例えば友達との関係がギクシャクしているなど、ちょっとしたボタンのかけ違いで辛く悲しい思いをしてしまっているケースは多いものです。そんな時、子どもたちが感じていること、考えていることに耳を傾け、じっくりと話を聞くだけでからまった糸がほどけることはよくあります。普段からしっかりと話を聞いて信頼関係を築いておけば、いざという時にも子どもは心を開いてくれます。先生は教える人、生徒は教わる人。この上下関係だけでも子どもたちは傷つくことがある。それをよく心に刻んで教育活動にあたってほしいと思っています。
――最後にこの地域の魅力はどんな部分だと思いますか?
この辺りは東京にもアクセスがよいにも関わらず、街全体が落ち着いていて静かで暮らしやすい環境ですね。ご両親共々お仕事をされている家庭が多いようですが、学校の教育活動にも協力的なご家庭が多いと感じます。また子どもたちは気持ちのやさしい子が多く、他学年同士も非常に仲よく過ごしています。地域が学校に協力的だというお話はしましたが、地域全体で子どもを育てようという気運がありますので子育てはしやすい街だと思いますよ。
市川市立福栄小学校
校長 杉本和隆先生
住所:千葉県市川市南行徳2-2-1
TEL :047-397-8115
※この情報は2018(平成30)年1月時点のものです。
地域に支えられ、子どもが育つ「市川市立福栄小学校」
所在地:千葉県市川市南行徳2-2-1
電話番号:047-397-8115
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