神田まつや
創業は1884(明治17)年。実に130年を超える長い時の間、江戸っ子に愛されてきた老舗蕎麦店「神田 まつや」。食通で知られる小説家 池波正太郎がひいきにしたお店としても知られている。そばはもちろん、歴史を感じさせる佇まいも魅力的。この須田町界隈は奇跡的に戦火を逃れた場所として知られ、大正時代の商屋造りとされるまつやの建物は東京都の歴史的建造物にも選定されている。
「神田まつや」は東京を代表する老舗でありながら、価格は一般的なそば屋と変わらない。また、居酒屋のような情緒もあり、蕎麦だけでなく丼ものや焼き鳥など品揃えが豊富なところも魅力のひとつ。そのため、客層は一人客から子ども連れのファミリーまでと幅広いという。
現在六代目のご店主がおすすめするのは「もりそば(650円税込) 」。「神田まつや」のベースを支える一品で、関東風の濃いめのつけ汁と、風味の良いそばの相性は抜群だ。蕎麦のおいしさの秘密は、厳選素材にあるという。北海道 雨竜・摩周産の「キタクセ」や、茨城県 境町産の「常陸秋そば」など、全国各地の生産者から届けられる選りすぐりの玄糧を石臼で挽いた「挽きぐるみ」のそば粉を使用している。秋の新そばの時期にいただくとまた一味違った味をたのしむことができる。
また、そばは“手打ち”にこだわり、「打ちたて・ゆでたて」でしか実現できない味を提供すべく、日々の鍛錬も欠かさない。店内では職人が蕎麦打ちしている様子を間近に見ることができるのも特徴。この店ならではの麺のコシは厳しい修行の賜物なのだ。
さらに、池波正太郎が「蕎麦前なくして蕎麦屋なし」という名言を残しているように、まつやの蕎麦前は素晴らしい。そばがきやかまぼこ、焼き鳥など、日本酒をしっとりいただきながら最後の蕎麦を楽しむ。特に焼き鳥は、肉の旨みが凝縮された常連客に人気の逸品。また、お酒は「菊正宗」の一品のみという潔さ。料理の味を引き立てる名脇役となっている。
現代では多くの蕎麦店がそれぞれの良さを醸し出しているが、いろんなお店を巡った後に、「やっぱりまつやの蕎麦がいい」と思わせる。誠実なこの味はずっとこの場所に居続けてくれる。その安心感は老舗ならではの魅力だろう。
神田まつや
所在地:東京都千代田区神田須田町1-13
電話番号:03-3251-1556
営業時間:月~金曜日 11:00~20:00 (19:45L.O.)、土曜日・祝日 11:00~19:00 (18:45L.O.)
定休日:日曜日
http://www.kanda-matsuya.jp/