「中目黒」駅から目黒川沿いを歩き、駒沢通りの歩道橋を渡った先の右岸側、山手通りに近い方の川沿いに、「NARITA YUTAKA」というレストランがある。桜並木で有名な目黒川も、シーズンを外せば静寂に包まれた、緑とせせらぎを感じる大人向きのロケーションに変わる。この雰囲気の中で、腕利きのシェフが出す美しくも美味なる料理を、ブルゴーニュ産のワインとともに楽しめる、というのがこの店の魅力のひとつだ。

オーナーシェフは成田寛（ゆたか）氏。北海道に生まれ育ち、札幌でフランス料理の道に入門、その後さらなる高みを目指して渡仏し、星付きのレストランなどでも腕を磨いた。帰国後は東京に移り住み、代官山のレストランで料理長を務めたのち、中目黒に自身の店を構えた。「モダンフレンチ」を標榜して従来のフレンチの枠から脱却し、インテリアもコンセプトもサービスも、もちろん料理も、すべてが「NARITAカラー」で彩られた、個性的な店となっている。

「堅苦しい、高級といったフレンチのイメージから脱した、肩肘張らずに来られる店にしたかった」と話す成田シェフ。木曜日と金曜日の昼に限っての話になるが、2千円のコースから用意している点は、そうした思いからだ。ディナータイムに関しては、ワインを合わせて1.5～2万円が平均的な予算。ぐっと高級さを増すが、それでもこの界隈の相場を考えれば決して高くはない。ただ、この店を価格で判断するのはもったいない。是非一度足を運んで、その価格と価値の「嬉しいミスマッチ」を感じてみてほしい。

この店にはメニュー表は存在しない。木金の昼は、メインが2品か1品の気軽なコースと、シェフ渾身のフルコースの3本立て。土日のランチはさらにワンランクアップする。夜はフルコースが基本で、7700円、1万円、1万2千円の3コース。内容は月替りとなるが、一番高いコースの肉料理は和牛を使ったものになるそうだ。「決して安くはないですけれど、“ちょっと頑張れば手が届く”というところに収めたかったんです」とのことだ。なお、コースを提供しているのは21時まで。以降はバータイムとなり、ワインだけのオーダーも可能なので、カジュアルに楽しむことができる。

店内の雰囲気も特徴的だ。店内入ってすぐの一等地には、オープンキッチンに対面するカウンター席。奥には個室のテーブル席があり、中2階部分には、キッチンを見下ろせるロフト席がある。全体の半分以上がカウンター席なので、必然的にカップルのお客さんが多いそうで、年齢層も同クラスのレストランと比べたら若め。シェフもスタッフもお喋り好きな人々なので、カウンター越しに交わす何気ない会話もまた、料理の美味しさに華を添えてくれることだろう。

今回撮影した品は、取材時のディナーコースからの一品。肉は松阪牛のイチボのロースト、魚は穴子のポシェだった。内容は日々変わるので、予約時に尋ねるか、SNS等をチェックしてみるのが良い。なお、シェフの得意分野はロースト、好んで使う食材は松阪牛や宮古牛などの和牛と、北海道の食材と、鎌倉野菜。「ここは日本で、僕も日本人だから、できるだけ日本の食材を使うように意識しています」とのことだ。

ワインの揃え方にも定評がある。シェフもワインに精通しているが、専属のソムリエがいるので、ワインに迷ったら気兼ねなく尋ねてみたい。料理とのマリアージュを考慮したセレクトをしてくれるはずだ。常時30種類以上のグラスワインを用意しているので、色々な銘柄を楽しめるのもポイント。主にブルゴーニュ産のワインで揃えているそうだ。

料理、雰囲気、サービス、どれも都会的で洗練され、いかにも「中目黒らしい」レストランである「NARITA YUTAKA」。それにプラスして、意外なほどにフレンドリーなシェフと、スタッフ達との会話がまた、店の魅力を増しているように思える。まずはディナーで訪れて真骨頂を楽しみ、そのうえで、次回は気軽なランチタイムやバータイムにも訪れれば、また違った面も知ることもできることだろう。

NARITA YUTAKA
所在地：東京都目黒区中目黒1-10-23 リバーサイドテラス103
電話番号：03-5734-1214
営業時間：11:30～15:00（L.O.13:30）、18:00～23:00（コースL.O.21:00）
※昼営業は木～日曜日のみ
※21:00以降はバータイム
※サービス料10％有
定休日：月曜日
http://narita-yutaka.com/
https://www.facebook.com/CuisineFrancais..