「ESSENCE」とは英語だとエッセンス。フランス語で真髄、本質、ガソリン、アロマやバニラエッセンスなどの精製油という意味。料理は食材ありきなので、食材の本質を見極め、エッセンスを引き出す料理をするという思いから名付けた。

メニューはコースのみ。その日の仕入れた食材によって、コースの内容が決まる。寒い日であれば身体が温まる料理にしたり、常連さんは好みを把握しているので、それによっても変えるなど、心づくしのメニューになっている。（ホームページにメニューが載っているが、それは一例なので参考までに。）

「福島産メープルサーモン瞬間燻製」は数少ないレギュラーメニュー。福島県の林養魚場で養魚しているメープルサーモンを使用し、提供する直前に燻製にする。脂や旨味を逃がさずに燻製の香りを楽しめる一品だ。

ユニークな料理もある。「長崎産天然たい焼」は長崎産天然真鯛の切り身とムースを、たい焼きの生地の中に入れ、たい焼きの型で焼いたもの。見た目はよく目にする餡がつまったものと同じだが、いつもの味を想像しながら食べると、閉じ込められた鯛の旨味に驚くことだろう。

「ESSENCE」はデザートも面白い。通常は食後の1品という位置づけだが、コースで前菜などがあるように、デザートも同じようにコースの流れで提供している。まずは前菜にあたる小さなデザート、そしてメインのデザート、最後に季節のデザートという流れだ。季節のデザートは、イチゴのワタアメや、夏はアイスキャンディーなど、趣向を凝らしている。

提供の流れだけでなく、味や演出にもこだわりを見せる。マイナス196度の液体窒素にメレンゲを浸すと、無数にある気泡に一気に液体窒素が流れ込む。その状態のメレンゲを口に入れると、熱で一気に気化し、700倍に膨張した窒素が白い冷気が鼻と口から飛び出してくる。繊細に創られた料理の味もさることながら、記憶に残る演出にも手間ひまを惜しまず、アイディアも凝らす。

料理やデザートに酒粕をよく使うのも「ESSENCE」の特長だろう。“酒粕フレンチ”の第一人者として様々なアイディア料理を生み出している。使用するのは福島県の大七酒造の酒粕。縁があって大七酒造の酒をお店で提供したり、料理にも使っている。ある時、酒粕を頂戴し使ってみると、何にでも合い、使い道が無限に広がった。コースには酒粕を使った料理が入るようになった。特にデザートにはバッチリで、前述の液体窒素のデザートは、酒粕のアイスクリームと酒粕のムースと液体窒素のメレンゲという組み合わせ。

店では出さないけれども、定期的に行っている料理教室のランチでは、酒粕を使ったカルボナーラを提供する。卵とチーズを入れずに、酒粕とベーコン、生クリーム、牛乳で作るカルボナーラだ。一般的なカルボナーラは味が濃いので食べるにつれ飽きていくことがある。酒粕カルボナーラは、酒粕の旨味が強く味が濃いけれども、卵やチーズが無く生クリームも通常の半分なので、後味がさっぱりしている上に、油脂やコレステロールも少ないヘルシーな一品だ。

「ESSENCE」で使用する野菜は、すべて所沢の陽子ファームから仕入れている。陽子ファームでは農薬も化学肥料も使わない、野菜作りを30年以上続けている。落ち葉を2年かけて堆肥にして、畑にまく循環型農業だ。落ち葉を集めるために山を2ヶ所借りていて、それを集める作業を30人くらいでやる。内藤さんもよく手伝いにいくそうだ。参加者を募って収穫体験に行くこともある。「陽子ファームは行くと元気になる自分のパワースポットなんです。都会ではなく、何もないけど、それを料理という形でお客さまに共有したい」。

最後に内藤さんは料理への思いをこう語った。 「食事を通してお客さんに楽しい気分になってほしいなと思います。食事を通して幸せになれたらいいというのは、言い過ぎですけど、これに尽きます」。

ESSENCE（エサンス）
所在地：東京都三鷹市下連雀2-12-29 2F
電話番号：0422-26-9164
営業時間：11:30～14:00、18:00～22:00
定休日：月曜日
http://www.essence-naito.com/