こまちカフェ インタビュー
こまちぷらす
代表 森 祐美子 さん
子育てしやすい街・戸塚で
親子と地域をつなぐコミュニティカフェを運営
「戸塚」駅西口から徒歩7分の場所に2014(平成26)年にオープンした「こまちカフェ」。小さな子どもを遊ばせながらママたちがリフレッシュできるカフェとして人気を集めているばかりでなく、子育て親子同士、あるいは親子と地域がつながるコミュニティとしても注目のスポットだ。「こまちカフェ」の運営や情報誌の発行などを通して、子育てママに「居場所」と「情報」を提供している特定非営利活動法人 こまちぷらす代表の森 祐美子さんに、戸塚エリアの子育て環境や魅力などを聞いた。
こまちカフェを運営するこまちぷらす発足の経緯を教えてください
私自身、7年前に初めて子どもを出産した時に、「居場所がない」「地域に情報がない」と実感したことがきっかけです。地域で孤立していると感じて、「もっと社会と関りたい」「子どもと過ごす時間を楽しみたい」と思うようになりました。
出産後、いったんは復職しましたが、居場所がないなら自分たちで作ってみようと思い立ち、2012(平成22)年2月にこまちぷらすを発足させました。
戸塚は私が生まれ育った故郷ですので、まずは地元からそういう場所を作って、ひとりでも多くの方が子育てを楽しめるようになるといいなと思っています。現在、戸塚在住で20~70代のスタッフ約50名がおり、ホームページや冊子などの媒体を通した情報発信も行っています。
こまちカフェの内容や役割についてお聞かせください
ベースとなるのが見守りつきのランチの提供です。地域スタッフが子どもたちを見守っている間、お母さんたちがゆっくりとごはんを食べられる場所になっています。メニューは乳製品・卵・小麦粉を使わず、旬のお野菜を生かしている点が特徴です。お母さんたちのニーズを聞きながら、栄養士や料理が得意なスタッフたちが開発しました。
カフェ機能に加えて、イベントスペースやレンタルキッチンの提供も行っています。ヨガやベビーマッサージ、手作り小物などのワークショップ、薬膳や天然酵母パンなどの料理教室を開催していまして、主催するお母さんたちが将来、起業や復職などご自分の夢の実現に向けて一歩が踏み出せるような場所にもなっています。
このほか、自主企画として「学び」をテーマにした朝活イベントやワークショップなども開いています。
こまちカフェは地域にとって、ひとつの“交差点”でありたいと考えています。お母さんが地域の人、情報、あるいはお母さん同士と出会い、いろいろな人が交わってそこから何かが生まれる、そんな場所を目指しています。
ウッディな内装もとても素敵ですね
カフェスペースはスタッフでもある地域のお母さんにプロデュースしてもらい、床も天然のメープルの木を使っています。テーブルは戸塚の職人さんに手づくりしていただきました。子どもたちの遊び場であり、お母さんたちが会食する場所で、戸塚のものづくりや木のぬくもりといったメッセージを伝えられたらと思っています。
カフェスペースの運営で気をつけていらっしゃることはありますか?
お客様に笑顔で帰っていただけるように、ちょっとしたお声やニーズを拾えるようにしています。例えば、“キャスト”というスタッフがおりまして、ひとりで勇気を出していらしてくださったお客様にはキャストからお声掛けをして、少しでもリラックスしていただけるような工夫をしています。
店内は靴を脱いで上がっていただき、カウンター席を除いて基本的に床に直に座るスタイルになっています。靴を履くような場所では、赤ちゃんたちがはいはいできません。お母さんたちはもちろん、小さなお子さんたちにも気持ちよく過ごしてもらえるように、あえてこのような形にしています。
お客様はどんな方が多いですか?
約7割が戸塚の方、3割が区外の方です。東京や海老名など遠くからもいらっしゃるので、それだけお母さんたちの居場所がないのだと思います。0~3歳のお子さんをお持ちのお母さんが一番多いですが、40~60代の子育てが一段落された方、あるいはパパ講座に参加するパパたちが来てくださることもあります。最近はほかの地域で同じような居場所を作りたいと、視察に見える方たちが増えてきました。
ここは「戸塚」駅からアクセスしやすく、「戸塚」駅は横浜市の中でも利用者数が多いので、いろいろな地域の方に来ていただけるメリットがあると思います。
「こまちカフェ」にはファンやサポーターもたくさんいらっしゃいますが、地域の方々の印象はいかがでしょうか?
いろいろな形で「こまちカフェ」に関わっていただける仕組みを作っているので、地域の方が「自分も関われる場所」と思ってくださっているのではないでしょうか。例えば、地域のパパ達やおじいちゃんが寄ってロールカーテンを取り付けてくださったり、椅子を組み立ててくださったり。働いたり、ボランティアとして関わるのは難しいけれど、インターネット経由で活動を支援できる“777スマイルプロジェクト”も実施しています。
これは、一枠3,000円のご寄付をいただくとPC上の絵で一つの枠が反転して、777人のご寄付が集まると1枚の絵が完成するというプロジェクトで、自分がカフェの運営に関わっているということをわくわく感とともに楽しんでいただいているのかなと思っております。
よりよい子育て環境に必要なものは何だと感じますか?
私たちの事業そのものかもしれませんが、やはり、ひとつめはお母さんたちの「居場所」ですね。歩いて行ける範囲に子どもを連れていける場所がある。しかもただスペースとおもちゃがあるだけでなく、つなげてくれる人がいたり、「自分の居場所がある」と感じられるように工夫されている場所であることがとても大事です。行政の施設だけでなく、企業やお店、誰かの家かもしれませんが、そういった場所が増えるほど、よりよい子育て環境の街になるといえると思います。
ふたつめは「情報」です。お母さんたちは初めて出産した時、離乳食の作り方や授乳の回数など、不安でいっぱいです。「うちの子は夜泣きをしすぎるのではないか」とか、どうしてもよそのお子さんと比べて不安になってしまうことも多いと思います。昔なら隣の人に聞けたことが、今はなかなかそうもいきません。そこで、情報が自分のすぐに手の届く場所、直に相談できて生の声が聞けるような身近な場所にあるということがとても大事だと思います。
行政の子育て支援を含めて、戸塚エリアの子育て環境はいかがでしょうか?
私が初めて出産した7年前と比べて、すごく子育てがしやすくなったと感じています。横浜市には各区にひとつの「地域子育て支援拠点」や「親と子のつどいの広場」などの子育て支援施設があり、戸塚にはそうした居場所が合わせて4つもあるので、すごく恵まれた環境にあると思います。
地区センターやケアプラザなど、子育て専用施設ではなかったところでも子育て層向けのイベントや体操などの事業を始めていますので、子どもを連れたお母さんが行ける居場所が増えて子育てがしやすくなってきたなと実感しています。
“コヂカラこまちカフェ”というプロジェクトが進行中だそうですね
NPO法人コヂカラニッポンと始めた、「大人が子どもの力を信じ、子どもが自分の力を信じる」というプロジェクトです。具体的には、5年後に子どもたちが土日にこの場所を使ってカフェを運営することを目指しています。
いづれはそのためにこども株式会社的な組織もつくり、小学校高学年から大学生までの子どもたちの中で社長や部長、マネジメント、経理といった役割を決めていきます。また、自分たちで実際に商品を売ることで、販促やPRの知識、自分たちが努力すべき部分がわかってきます。そうすることで、国語や数学といった学校の勉強をもっと知りたい、という気持ちになり、「なぜ今学んでいるのか」がわかってくる。今学校で学んでいることが社会人になった時に役立つんだという実感を持てる場にすることで、勉強がさらに身につき、実際に大人になった時に社会に貢献できるような人材に育っていったらいいなと思います。
それには、子どもたちの力を信じるような大人が地域にたくさんいることが必要です。そこで、“コヂカラMBA”という子どもたちが経営の勉強ができる場所を提供するなど、大人が関われる仕掛けを作っています。“コヂカラこまちカフェ”に一番関わってくださっているのは、お父さんたちですね。平日仕事をしているお父さん方がこうしたコミュニティに関わるのはとても難しいことです。
でも、“コヂカラMBA”など、ふだん自分が仕事でしていることを生かせる場所があれば、子どもたちや地域のためになるということで、お父さんたちも積極的に関わってくださります。また、出店にあたっては商店会の方のご理解が必要なので、商店会の方々にも関わっていただきたいと思っています。
「こまちカフェ」の今後の展望についてお聞かせください
“コヂカラこまちカフェ”の延長で「こまちカフェ」が放課後の居場所となるようなプロジェクトを考えています。小学校高学年以上の子どもたちに関われるような場所、現在営業していない土日・夜間に子どもたちや地域の方々に関わっていただけるような場所にしていきたいと思っています。子どもたちのチカラをまちでプラスに、そんなうねりを生み出していきたいと思います。
長期的には、こまちカフェのような場所を全国どこにでも、地域の方が作りたいと思った時に作れるようにするというのが夢です。日々の運営に行政の支援がなくても、自分たちで財源を生み出していけるように、成功や失敗をすべて落とし込んでいき、だれもが真似したいと思った時に真似できる場所にしていきたいと思います。
最後に、戸塚エリアの魅力とお気に入りのスポットを教えてください
「戸塚」駅や「東戸塚」駅周辺はビルやお店がたくさんあってにぎわっていますが、ちょっと足を延ばすだけで梨園や田んぼ、公園があって、大きな自然がそのまま残っています。東京にもJR一本でいけるので、都内でお仕事をされている方にとっても、適度に都会で適度に自然と触れ合える場所があるという点ですごく魅力的な場所だなと思います。私自身、戸塚で生まれて子育てをしてきて、利便性と自然の豊かさの両方があることが子育てにすごく良かったなと思います。
人についても、昔から住んでいる方もいれば、転勤族など新しく来た方もいるので、いろいろな人を受け入れる風土のようなものがあるのかなと感じています。私も子育て中にとにかくいろいろな世代のお母さんたちにアドバイスをもらえたことはすごくありがたかったですし、恵まれていたなと思います。
お気に入りは「東戸塚」駅から少し足をのばした梨園から見た富士山の景色です。戸塚はあちこちからきれいな富士山が見えるので、お散歩も楽しいですよ。
今回、話を聞いた人
こまちぷらす
代表 森 祐美子 さん
住所:戸塚町145-6奈良ビル2階
電話番号:070-5562-9555
http://comachiplus.org/wp/
こまちカフェ インタビュー
所在地:神奈川県横浜市戸塚区戸塚町145-6 奈良ビル2F
電話番号:070-5562-9555(予約専用)
営業時間:10:00~17:00
定休日:日曜日、祝日、第2月曜日
https://comachicafe.com/